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死に戻り勇者、軌跡を辿る
魔王との対峙……
しおりを挟む正面に見えるのは、魔王城。巨大な城だ……ファルマー王国の王城と同じか、それより大きいかもしれない。
ただ、外観は……一言で言うなら、不気味。昼間だというのになぜか周辺は暗く、城自体も廃墟のようだ。
「あれが……」
「なあ、間違いないんだろうな?」
「えぇ。精霊たちも、あそこから邪悪な気配を感じると」
ここへ来るまでの道のりは、精霊の案内により迷わず来ることが出来た。精霊にとっても、魔族の気配は邪悪に感じるらしい。
前世でも、精霊の案内のおかげで迷わずにここまで来れた。変わることもあれば、変わらないこともあるってことか。
「よし、なら慎重に行こう」
「うん」
俺たちは気配を殺し、魔王城に潜入。警備はおらず、簡単に中に入ることが出来た。
警備がないのは、わざわざ魔王城に入ってくる者はいない、と考えてのことだろうか。
「はぁ、暇だぜ」
「あんまりぼやくなよ」
「けど、そうじゃねえか。はぁあ、いっそのこと大事件でも起き……!」
「お、おい、どうし……!?」
城の仲間では精霊も案内ができないようで、俺たちは静かに移動する。
途中、魔族を発見する。警戒もしていない……仲間が俺たちにやられていると知っていても、まさか俺たちがこんなに早く城に侵入しているなんて、思っていないのだろう。
なるべく騒ぎにならないように、魔族を倒していく。
「やっぱ、こういう時に二人の力は頼りになるよ」
「ど、どうも」
「ふんっ」
ゲルドの【鑑定眼】、そしてミランシェの【百発百中】。これらの組み合わせのおかげで、魔族に気付かれる前に、奴らを倒すことが出来ている。
潜入において、二人の力は必須だ。それでも、どうしても魔族に見つかる場合もある。
「な、なんだ貴様ら!」
「人間!? 敵襲だ!」
「ゲルド!」
「おうよ!」
だが、突然現れた敵に、冷静に対処できる者はいない。すぐさま、倒していく。
そして、複雑な城の内部を進んでいき……幸運にも、大きな騒ぎになる前に、巨大な壁の前にたどり着く。
「……ここに、魔王が?」
「あぁ、間違いない」
「? どうして間違いないとわかる?」
「え……あ、はは、なんとなく?」
「けっ、偉い奴ってのはどうしてこうも、バカみてえにでかい扉作るのかね」
見上げるほどの巨大な扉、それを数人がかりで押し開いていく。
中からいきなり、敵襲が来ないか注意を払いながら……そして、部屋の中には……
「……来たな、人間」
「魔王……」
巨大な、邪悪な存在が、待ち構えていた……
……はずだった。
「……あ、れ?」
思わず、間の抜けた声が出た。部屋の中の光景を見て、唖然としてしまった……
だが、それは俺だけではない。他のみんなも、一同に唖然としていた。
なぜなら、そこには……
「……ねえ、あれ、魔王、だよね?」
「あぁ、そのはず……だ」
リリーが指さすその先に、魔王はいた……だが、そこにいた魔王は、俺の知っている魔王ではなかった。
偉そうに、己の巨体を支える大きな椅子に、座って……不敵な笑みを、浮かべて俺たちを待っていた。はずだったのだ。
だが、そこにいた魔王は……死んでいた。
「え……嘘、そんな……どういう、こと……?」
その光景に、唖然とした感情から困惑へといち早く変わったのが、シャリーディアだ。彼女の慌てようも、わかる。
なんせ、目の前にいる魔王は……椅子に座ってこそいるが、胸に大穴が開き、大量の血を流していたからだ。座っているというより、もはや座らせられていると言った方が近い。
さらに、魔族の体は基本的に青白く、人間と比べると血色が悪いが……あの魔王は、今まで会ったどの魔族よりも、血色が悪い。
「死んだふり……じゃねえよな、さすがに」
「あぁ……そんな意味も、ないしな」
誰が見ても、死んでいる……そうわかるほどに、魔王の有様は明らかだった。
いったい、なぜ……そう思うと同時、一つ気にかかることがあった。
「誰が、こんなことを……」
これが自然死でないことくらい、誰だってわかる。となると……
誰が、この惨劇を引き起こしたのか。誰か、別の存在の介入があったとしか、思えない。
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