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死に戻り勇者、軌跡を辿る

お休みの日

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 日々、訓練をして力を蓄えていく……それが、今の俺たちに課せられた使命である。きたる三年後まで、どれだけの力をつけられるかが勝負だ。

 前世の通りに事が進めば、俺たちは無事魔王を倒せる。だが、それは確実な未来であるとは言えない。今でも、少しずつ違う展開は流れていたりするのだから。

 なにより、どうせ勝てるからって油断していたら、その油断のせいで殺されてしまうかもしれない。一度通った道とはいえ、魔族は強敵……うん、油断大敵だ。

 油断をしないために、緊張感を張り巡らせ、力を蓄える……さて、今日の訓練は……


「や、休み?」

「そうだ。たまには、ゆっくりして体を休めることも必要だからな」


 毎日毎日訓練訓練では、体が悲鳴を上げてしまう。だから、時にはこうしめ休息日を作ることも必要なのだ。前世でも度々あったが、さすがにどんな内容で過ごしたかまでは覚えてないな。

 ドーマスさんの言葉を聞いた瞬間、目を輝かせたのは……リリーだった。


「あ、じゃあ、遊んでも、いいの!?」

「あぁ、構わないとも」

「やったー!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ね、全身で嬉しさを表現しているリリー。リリーは、城の外に一人で出たことがない……王族であり、常にお付きの人が、一緒だ。

 だから、自由に王都を見て回るなんてことは、できなかったのだ。立場を考えれば、確かに自由にうろつかせるのは不安がある。それに、まだ子供だ。

 今日は、俺たちと同行するということなら、リリーも王都を見て回っていいとお許しが出たようだ。


「ロアさんも、まだ王都をじっくり見ていないでしょう? リリーちゃんも、私が案内してあげる」

「ほんと? わーい!」

「お、俺も? まあ、いいけど……」


 一人で王都を見て回るのもつまらないし、かといって他にやることもない。休みと言われても、部屋にこもるのもなんだか味気ないし……ここは、シャリーディアのご好意に甘えるとしよう。


「じゃあ、みんなで……」

「悪いが、俺はパスだ。お前らはお前らで楽しんでこいや」


 イチ抜け、と、ヒラヒラと手を上げたゲルドが逆方向に歩いていく。その背中を見て、彼がなにをするつもりなのか、予想がついてしまった自分が嫌だ。


「えー、ゲルド兄ちゃん、どっか行くの?」

「あぁ。せっかくの休みだ、やりたいことやりに行くんだよ」

「やりたいこと? なにするの?」

「なにって、そりゃお前、ナニに決まってんだろうが」

「ナ……?」

「はいはい、リリーちゃんは気にしなくていいからね! あんな人のことは放っておこうね!」


 ゲルドはそのまま、人混みの中に消えていった。なんというか、お盛んなことで……

 そんな中、ドーマスさんが気まずそうにしていた。


「わ、悪い。私も、抜けされてもらう」

「えー」

「どうかしたんですか?」

「うむ……久しぶりに、妻や娘に、家族サービスをしたいなと思ってな」


 恥ずかしそうに、ドーマスさんは話す。しかし、その理由を恥ずかしがる理由なんてどこにもないだろう。

 ドーマスさんは、家で奥さん、子供と暮らしている。だが、いつも俺の訓練や自分の訓練、要は旅の準備に家を空けているため、たまの休日くらいには家族サービスをしたいのだと。


「わぁ、素敵じゃないですか」

「えぇ。というか、別に休日だからって俺たちが一緒に回る必要はありませんし」

「むぅ、そういうことなら……」


 リリーは、ドーマスさんになついている。同じくらいの娘がいるからだろうか、ドーマスさんの扱いも丁寧なのだ。

 ということで、ドーマスさんも離脱。残るは、ミランシェだが……


「私も……ちょっと、別行動で」

「わかりました」


 そそくさと、ミランシェもいなくなった。なんというか、ミランシェは最初の頃は人見知り……いや、一匹狼って感じだったからな。

 訓練の中で、絆を深めていくしかないだろう。本当はこういう休日の時間こそ、仲を深められそうなのだが……まあ、ミランシェにも用事があるんだ。仕方ない。

 と、いうことで、王都を見て回ることになったのは……


「あれ?」

「……?」

「じゃあ、しゅっぱーつ!」


 俺とシャリーディア、そしてリリーという……組み合わせになった。
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