死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

文字の大きさ
上 下
24 / 263
死に戻り勇者、軌跡を辿る

みんなで訓練

しおりを挟む


「はっ、はっ……」


 まずは、体を作り込むことから始まる。さすがに、【勇者】のおかげで身体能力が上昇しているとはいえ、今までただの平民だった男がいきなり戦闘に参加するのは無理だからだ。

 前世では、体を鍛えるのはここが初めて……村でも、村の手伝いなんかをして力はついていっただろうが、自発的に鍛えようと思ったことはない。

 なので、走り込みだけでもすぐに疲れてしまった。しかし、今は同じことをやっていても、息切れすら起こさない。


「ほぉ……田舎暮らしのもやしっ子かと思ってたが、意外に体力あるじゃねぇか。訓練場の周りを三周してもその程度か」

「あはは、どうも」

「うむ……ロアよ、この国に来るより前から、体を鍛えていたのか? じっくり見ては悪いと思っていたので昨日は気にしていなかったが、こうして見るとなかなかに筋肉がついている」


 今俺は、ゲルドとドーマスさんの指導の下、走り込みを行っていた。それから筋力トレーニングと続き、まずは基礎体力を上げる手筈だ。

 だが、俺が思った以上に動けるので、訓練メニューを変えることも考えているようだ。

 二人は、俺が想像よりも動けないと思っていたのだろう。現に、前世では俺は全然だったしな。今回は鍛えていて正解だった。

 とはいえ、まさか「【勇者】の『スキル』を授かって王都に来ることがわかっていたので、事前に鍛えてたんですよ」なんて言えるはずもない。


「む、村で畑仕事とか手伝ったり……あと、走るのとか好きだったので」

「ほぉ、感心感心」


 嘘ではない……が、まったくの真実でもないだけに、素直に信じているドーマスさんを見ていると心が痛い。

 とはいえ、この分だと俺の訓練メニューも大幅に短縮されそうだ。前世じゃ基礎体力上昇に一週間以上かけていたが、今回はすんなりと次のステップに進めそう。


「ま、仲間のレベル上昇率が高いってのは、悪くねぇ。なんなら、魔族退治はお前に任せて、俺は後ろであの二人と優雅にお話してるってのもアリだな!」

「アリなわけないだろう」


 相変わらずゲルドは、軽い雰囲気だ。これで戦闘になると一切の容赦もなくなるのだから、恐ろしい。

 さて、そのゲルドが話す、女性陣はというと……


「二人とも、なかなか筋がいい……特にリリーは、その年でそこまで動けるとは」

「えへへ、前から兵士さんにいろいろ教えてもらってたから」

「シャリーディアも……正直、神官なんてろくに動けもしない人たちだと思っていたんだけれど」

「まあ、間違ってもないですね。私は、昔友人とよく体を動かして遊んでいただけですよ」

「へぇー、意外」


 女性陣は女性陣で、互いに教えあっているようだ。

 別に男性陣と女性陣にわかれよう、と提案したわけではない。だが、うまい具合に男性陣前衛、女性陣後衛と別れている。

 その関係で、それぞれ動きを、教えられる人が教える感じだ。俺には、ゲルドとドーマスさんが近接の戦い方を。シャリーディアとリリーには、ミランシェが自分の身の守り方を。

 後衛は、援護系であるために狙われやすい。時には前衛が間に合わないこともある。そのために、自分の身くらいは自分の身で守れるよう、訓練するのだ。


「かぁー、あっちはいいねぇ和気あいあいと」

「こっちだって似たようなものだろう?」

「ぜんっぜん違うね! 女っ気のねぇむさ苦しい野郎どもと、向こうを比べてみろ! 天と地の差だろ!」


 ……ゲルドの言わんとすることはわかる。ただ、これは遊びでなく訓練であって……別に、華やかさとかは求められていない。

 とはいえ、別にずっと男性陣女性陣に別れているわけじゃないんだ。ある程度になったら、今度はチームプレーを育むため合同の訓練に挑む。

 この中で、それぞれ相性のいい戦い方や、コンビネーションを見つけていく。ゲルドの【鑑定眼】とミランシェの【百発百中】のような、それだ。

 
「どうにもならんことを言っても仕方ないだろう。ロア、少し休憩したら、次のメニューだ」

「はいっ」


 不服そうなゲルドを尻目に、俺の訓練は続いていく。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...