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死に戻り勇者、軌跡を辿る

ディアとの出会い

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 さて、俺が死に戻り……いや、生まれてから二年の月日が経った。日々遊びつつも、体を鍛えていた。

 この村には、度々隣村から遊びに来る男の子がいた。正確には、隣村から交流をするために何人かの大人がやって来るのだが、それに着いてくる子供だ。

 前世の俺は、村以外での同年代の子供が珍しくて、積極的に話しかけに行ったものだ。そして……


「キミ、名前は?」

「あ、えっと………………ディア……」


 今回も、もちろん同じ道をたどる。このイベントは、幼いながら色濃く残っているため、忘れようもない。……それとも、死に戻りして当時の体になったことで、当時の記憶が呼び覚まされているのか。

 俺とは同い年の男の子、名をディアという。男の子ではあるが人見知りな性格で、どこか守ってあげたくなる感じ。大抵は村の大人の後ろに隠れている。

 クリーム色の髪は、食べてみたら美味しそうだなと思ったことはなくもない。食べないけど。この村には俺のような茶髪や、赤毛といった髪色を持つ人は多いが、彼の髪は珍しい色だった。

 どうやら、彼のいる隣村では、ディア以外にあまり子供がいないらしい。遊び相手がおらず、退屈そうにしているのを見かねた両親が、他の大人に着いていくようにと背中を押したらしい。


「このむらは、遊ぶあいてが、いっぱいだぁ……!」


 村に来た当初、そんなことを言ってディアは目を輝かせていた。遊び相手に飢えている、というやつだろう。

 人見知りではあったが、一度仲良くなってしまえば徐々に明るい笑顔も見せてくれた。村の子供たちに混じって遊ぶ姿は、見ていて微笑ましかった。

 中でもディアは、俺になついていた。俺が一番最初に話しかけたからだろうか、よく俺の後ろをちょこちょこ着いてくるのだ。同い年なのに、弟ができた気分。ディアの俺に対する好感度は今後影響するかわからないが、なるべく忠実に、前世の展開を辿ろう。

 ……基本的に、村同士の交流は月に一度。だが、ディアはそんな期間は待てないのか、よく遊びに来ていた。もちろん、大人の付き添いはあったが。


「あはははは!」


 そう……隣村との交流、ディアの訪問、これらも前世と同じ流れだ。そして、順調に過ごせば……ある事件が、起こる。避けようと思えば避けられる問題だ、だがそうもいかない。

 ディアと出会って、二年後……俺たちにとって、恐怖を味わうことになる日が、訪れる。


「い、いいのかな……」

「へいきへいき!」


 俺とディアは、二人だけで森に入った。普段、子供だけでは入ってはいけないと言われていた森だ。モンスターが生息しているから、子供だけでは危険だと。

 しかしその忠告を破り、愚かにも子供二人は森に入った。正確には俺からディアを誘ったんだったか……多分、モンスターといっても大人たちが簡単に倒しているのを見て、自分なら大丈夫だと思ったのだ。なんの根拠もない。

 そして、森に入って……モンスターに、襲われるのだ。


「グルルル……ウォオオオオ!」

「うわぁあああああん!」


 目の前に現れたのは、四足歩行の獣だ。当時はモンスターの種類などわからなかったが、今ならわかる。あれは、コアウルフと呼ばれる凶暴なモンスターだ。

 ディアは怯えて、その場から動けなくなり……無謀にも俺は、落ちていた棒きれ一本で彼を守ろうとモンスターに立ち向かう。この時ディアを置いて逃げなかったのは、評価してやりたい。結局ディアを怖がらせてしまったんだがな。

 勇敢な子供……だが、それだけで勝てるほど、現実は甘くはない。戦闘経験のない子供が、そんなもので凶暴なモンスターに敵うはずもなく。

 叩きつけようとした棒きれは簡単に払われ、木に叩きつけられ、初めての強烈な痛みに己の愚かしさを後悔した。


「お、りゃあ!」


 ……それが、前世での行動。しかし、今回俺は、少し前世とは違った動きを取ることにした。あの時はただ震えるだけだったが、今回は違う。体も鍛え、自分の力を試すように、モンスターへと向かっていった。

 ただがむしゃらに棒きれを振り回すだけでなく、この体格成りの構えを取る。軽く深呼吸をして、いざ……!


「ぐ、はぁ!」


 結果は、もちろん完敗。簡単に吹っ飛ばされてしまった。死なないために、なんとか受け身は取ったが。

 小さなこの体では、前世の戦いになれた俺にとっては扱いにくいことこの上ない。小回りが利くことだけは利点だが、せっかく相手の懐に潜り込めても、力がなければダメージなんて与えられない。

 そんな俺の分析を無視し、モンスターは迫る。凶悪な牙を、見せつけて笑っている。

 殺される……そんな場面で、俺の心は穏やかだった。なぜなら……
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