目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第五章 海に行こう

第162話 試着してみよう!

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「それにほら、こういうのは現役JKである、ピチピチなギャルの意見もあった方がいいと思いますよ?」

「ピチピチとかギャルとか、ホントどこでそんな言葉覚えてくるの……」

「確かに、一理あるかも」

「さよなちゃん!?」

 それっぽいことを言ってさよなを納得させるつもりか。そんなもの、現役デザイナーであるさよなには通用しまい……
 そんな考えは、あっさり覆された。

 ダメだ。なにを言っても、由香が水着審査を逃れる未来は見えない。
 というか、いつから審査なんて仰々しいものになったのか。

「さ、いつまでも話していても時間の無駄だし、ほら入った入った!」

「ですです! 早く水着姿見たいです!」

「ちょっ、二人ともぉ!」

 抗うことは出来ず、一人から二人に増えた審査員に押され……そして水着を手渡され、由香は試着室への中へと押しやられてしまった。

 ……如月 由香は現在、窮地に立たされていた。
 彼女は今、水着売り場の試着室の中にいる。その目的は当然、水着を着用するためであるのだが……

「ここ、これを着るの……?」

 幼なじみであるさよなに選んでもらった水着を見て、その顔を赤く染める。
 広げたそれは、由香にとって……自分には似合わない、絶対似合わないと思えるものだったからだ。

「でも、選んでくれたんだし……せっかくだし……」

 水着とにらめっこし、そうすること十分。ようやく決心がつき、水着を着ることを決める。
 その間外からは、「待ってるよ」とか「早くー」とか待ち望んでいる声が聞こえていた。

 着ていた服を脱ぎ、水着を着用していく。水着を着るのは、久しぶりだ……最近の水着は、かわいいものが多い。
 これも、一般に見ればかわいいのだろう。だが、自分が着ることでそのかわいさを台無しにしてしまうだろう。

 心の中で水着に謝罪を告げつつ、水着の着用を完了する。それから、軽く深呼吸。
 吸って、吐いて……いざ!

「お、お待たせー……」

「もー、遅いよ由香ちゃふおぉおおおお……!」

「ユカ先生、水着着るのにどれだけかかってふぁああああ……!」

 試着室のカーテンを開け、待っている二人(と一匹)に声をかける。
 着るのを渋っていた由香がようやく出てきたことにより、ようやくか……と言わんばかりに二人が振り向くが、由香の姿を見た瞬間変な叫びを上げる。

 奇声にも似たそれは、由香をビビらせるには充分だ。
 いったい、なぜいきなりそんな奇声を発したのか。

「ど、どうしたの二人とも……?」

 単純な疑問、それを二人に投げ掛ける。当の二人はというと、なにが起こったのか石像のように固まっている。
 だが、数秒の後ふと我に帰った。

「ごめんごめん、、ちょっとトんでた……いや、これまずいよ。選んでおいてなんだけど」

「ですね。サキュバスである私が、ユカ先生にサキュバられそうになりましたからね」

「トんでた? サキュバられるってなに?」

 我に帰ったはずだが、なにやら訳のわからない言葉を吐く二人に、由香は首をかしげる他にない。
だが、二人の様子がおかしいのには理由がある。

 なぜなら……由香の格好が、あまりにも衝撃的すぎたからだ。一言で言えば……とても、エロい。

「……?」

 白いビキニは、当然肌面積が多い。これだけであれば、そう衝撃的なものでもないのだが……問題は、その大きさだ。
 ビキニの布面積は思いの外小さく、由香の胸全てを包み込むに至らない。

 いや、この場合は布面積が小さいというより、由香の胸が大きいのだ。

「でっ……こほん」

 由香の白い肌に白いビキニは、まるで汚れを知らない、清楚の塊を思わせる組み合わせだ。
 シンプルゆえにベスト。シンプルは時に、最強となる。今回がまさに、それだ。

 しかしそれはあまりに、最強すぎた。
 白いビキニに、由香の豊満な胸は収まりきらず、下手をすればこぼれ落ちてしまいそうだ。

 これはあまりに危険……達志どころか、浜辺の男全てを誘惑してしまう。というかエロい気分にさせてしまう。

「……」

 組み合わせは悪くないはずだが、サイズを見謝った……胸の。胸の、サイズを。
 だって破壊力がすごいのだ。今試着室の前を通っている人たちだって、チラチラ見ている。同じ女性なのに。

「あのー、さよなちゃん? すごい顔してるけど大丈夫?」

「え? うんうん大丈夫大丈夫」

 由香の水着姿……それを目の当たりにしたさよなは、気づいていなかった。
 自分がどれほど憎悪やら悔しさやらに満ちた表情を浮かべているか。

「ひっ!?」

 隣にいたルーアが軽い悲鳴をあげるのも、気にならない。
 なぜ由香のは、あんなにも大きいのか……なぜこんなにも自分と差があるのか。もはやあれは犯罪ではないのか。

 そんな感情がぐるぐると渦巻いており、由香に……正確には由香の胸に、言葉にならないほどの憎々しい視線を浴びせていく。

「あのー、さよなちゃん? なんだか視線が怖いよ?」

 当の由香は、自分がどれほど凶悪な武器をぶら下げているのか気づいていない。
 肌の露出以上に、気を付けることがそこにあるだろう。

 もしもこの格好で、白い砂浜に駆り出せば……欲望にまみれた男どもからはたちまち視姦され、(さよなと立場を同じくする)女性にだって嫉妬の対象として見られるだろう。
 現にさよなも、今一言で片付けるなら嫉妬の感情を、由香に向けているのだ。

 さよなが選んできたとはいえ……これは、ボツだ。これでは達志を誘惑するどころの話ではない。猛だって、その対象となってしまうだろう。
 由香め、なんてわがままボディを手にいれたんだまったく。
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