目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第五章 海に行こう

第180話 人捜しの魔法

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「おーい! リミー!」

 いなくなったリミを探し、達志は走り回しながら大声を張り上げる。
 だがそれも、賑やかな浜辺では意味なく消えていく。海では開放的な人々が多く、それによって周りの声も大きくなるのだ。
 なにより、こんな開けた場所で大声を上げたところで、たかが知れている。

 だから、残念なことに達志の声は、彼方に消えていく。

「くっそー、これじゃあ見つけようがないな……」

 今は夏休み中で、親子連れやカップルなどたくさんの人が歩き回っている。
 そこから、ただ一人の人間を見つけるなど困難な話だ。

 連絡手段も今持っていないし、これはちょっと困った事態になった。

「いくらなんでも、一人でほいほい知らないとこに行かないと思うが……いやでもなぁ……」

 達志と由香の、確実に誤解を招く状況。
 見られた状況が状況だけに、いくら普段冷静なリミでもどんな行動をとるのか予測不能だ。普段なら、みんなの所に戻っているんだろうが……

 それとも、その可能性に賭けて一旦みんなの所に戻るか……
 考えて、やめる。

「ん……」

 だってリミが戻ってなかった場合、なんて説明する。
 まさか由香と誤解されたので誤解を解くために探している、なんて言えないだろう。からかわれるのがオチだ。

 とはいえ四の五の言っている場合でもない。もしも見つからない時間が長くなる可能性があれば、それはみんなで捜索するしかないわけだが……
 だがやはり、一人くらいは散策人数を増やさないと。いくらなんでも達志一人では。

「由香を置いてきたのは失敗だったか? ったく、どこ行ったんだか……」

「誰がです? 捜し人なら手伝いますよ?」

「え、いいんですか? 実は一緒に海に来た女の子が迷子になったみたいで…………って!?」

 一人でも多く人手が欲しい時に、嬉しい申し出だ。
 こんなご時世だがいい人もいるもんだなと。その申し出をありがたく受けようと、声の主を確認すると……そこにいたのは、先ほど別れたはずのシェルリアとはーちゃんだった。

 なんと、この広い砂浜でまた会うとは。この運を、是非ともリミと会うために使わせてほしいものだ。

「どもどもー、セーンパイ! アタシら縁があるねぇ」

「あははー、そうだな」

 どうにもこのギャルは苦手だ。驚くくらいにぐいぐい来る。
 なぜこんな派手な子と、(一部を除いて)大人しめのシェルリアが仲良しなのだろう。

 それとも、正反対だからこそ波長が合うというやつだろうか。

「それで先輩、誰が迷子になったんですか? もしかしてリミ先輩ですか?」

 それでもって、疑うことを知らないシェルリアが再度問いかけてくる。
 先ほどリミと一緒にいるところを見られたのだ、いくら海に来た時には一緒じゃなかったと話したとはいえ、捜し人がリミであると思うのは当然だろう。

 迷子というには正確には違うが……いや、やはり迷子か?
 なんにせよ、さっき自分から言ったことだし訂正するのも面倒なので、そのままにしておいた。

「まあ、そうだな」

「大変じゃないですか、こんな広い海ではぐれただなんて! 捜すの手伝いますよ、ね、はーちゃん!」

「へ? あぁ、まあ面白そうだし手伝うよ」

 完全善意なシェルリアと、面白半分なはーちゃん。本当に任せて大丈夫だろうか、特にはーちゃん。

「じゃあさー。センパイ、リミセンパイの体の一部とか持ってない? もしくは身に付けてたものでもいいんだけど」

「持ってるか!」

「えー、マジで? 髪の毛一本でも全然いいんだけど」

「持っててたまるか!」

 今からリミを探そうという時に、いったいなにを言っているのだこのギャルは。
 真剣な顔してなにを言っているのだ。いやマジで。

「なぁんだ使えないセンパイだなあ」

「なにぃ?」

「はーちゃん! えっと、すみません先輩。でも、ふざけてるわけじゃないんです。
 はーちゃんは、体の一部でも身につけていたものでも、その人のものだとわかるものがあれば……その人のことを捜すことができるんです!」

 つい怒りそうな達志を止めるために、シェルリアが間に入る。
 どうやら、達志をからかっていたわけではないらしいというのは、彼女の真剣な瞳からわかるが……

 それにしても、その人とわかるものがあればって……犬か?

「ちょっとセンパイ-、今失礼なこと考えたっしょ。犬とか」

「心を読まないでください」

「しっつれいだねえ。でも、センパイの犬にならなってもいいかもわん!」

 ……しばしの、沈黙。

「………………で、リミを捜すことができるっていうのは?」

「あー、無視しないでよもう!」

 プンプン、と頬を膨らませるはーちゃんを、達志は華麗にスルー。この子のあしらい方は、だんだんわかってきた気がするのであった。

「ふふん、けどこれを聞いたら驚くこと間違いなしだよ?」

「ほぉ」

「私はねえ、魔法がつかえるんだけど、その内容はなんと! 人捜し!」

「ほぉ?」

「つまり、誰か捜している人がいるとする。そんな時、その人の体の一部、身につけていたもの……それらがあれば、私に掛かれば捜し人の居場所が一発でわかるってわけ! 人呼んで、捜索魔法!」

「おぉ!」

 はーちゃんの使える魔法、それは達志の初めて聞くものであった。
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