170 / 184
第五章 海に行こう
第169話 水着お披露目!
しおりを挟むナンパをされた。
「いや、ナンパが嬉しいなんて……そ、そんなことないって。……困ってたし、助かったんだってホント」
「ふーん、どうだか……」
水着を誉められたことを素直に喜べばいいのに、すっかりタイミングを逃してしまったさよな。
この日のために、猛に見せるために選んだというのに。
……だけど、これでよかったのかもしれない。もし正面切って水着似合ってるなんて言われたら、悶えて動けなかったかもしれないし。
もっとも、こんな状況でなければ水着のことを言及なんてしてくれなかったかもしれないが。
「タツシ様もナンパされてたみたいですね?」
「いや、俺の場合は……どうだろ」
次にナンパについて、達志に標的を向けたのはリミだ。さよなの隣に立ち、ジトッと半目になり達志を見つめる。
こちらもさよなと同じくビキニタイプだが、違うのがワンショルダータイプということ。
これは肩を大きく露出しているスタイルになっており、高校生でありながらリミにはどこか大人の色気を漂わせる。
桃色を基調としたそれは、ただでさえ校内二代美少女に選ばれるリミの魅力を何倍、何十倍にも引き上げている。
「お、リミ似合ってるじゃん。かわいいよ」
と、怒っているはずのリミに達志は感想を告げる。
するとリミの顔はみるみる赤くなっていき、その場に屈んでしまったではないか。
さっきまで不機嫌だった気持ちが、吹き飛んでしまった。達志のその、打算のない台詞に、純粋な子供であるリミはノックアウトされてしまったわけだ。
「あぁ、私もこれだけ純粋だったらなぁ」
と、一人ぼやくさよなの言葉を聞いた者はいなかった。
さて。
水着に着替えている女性陣を待つ間、人生初の(少なくとも達志にとっては)ナンパをされた達志と猛であったが、戻ってきた女性陣には厳しい目を向けられてしまっていた。
さよなとリミは、どこか不機嫌そうなご様子。リミは、達志の褒め言葉により陥落してしまったが。
もちろん、ナンパをしたならともかくとして、ナンパされただけの、それも断ろうとしていた達志と猛に罪はない。
だが、それで割りきれるほど乙女心は単純ではない。
「いいではないですか。ナンパをされるということは、それだけお二人が魅力的ということでしょう? 男性として誇っていいのでは?」
ここで、ナンパされたことに怒るでなく、むしろ誉めるような言葉をかけるのはセニリアだ。
さよなやリミと違い、彼女の言葉には特に焦りとか怒りとかそういったものはない。本当に、喜ばしいものだと思っているのだ。
「せ、セニリアさんがそんなこと言っちゃうと、ますます私の立場が……」
自分はぷりぷり怒っていたのに、セニリアは真逆の反応。それはさよなにとって、なんというか……器の大きさを見せつけられたような気がした。
さよなの隣に立つセニリアの水着は、一見するとワンピースタイプ。
しかし、リミによってその場で回転させられると、背中が大きく空いたデザインになっていることがわかる。
前はワンピース風、後ろ姿はビキニ風……それは、いわゆるモノキニという種類の水着。
前面部分は露出の見られないものだが、背中部分は大胆にカットされた部分が目立ち、セクシーな水着となっている。
水色を基調とした水着は、セニリアのスタイルを引き立てている。普段堅い人物の、見ようによっては大胆にも見える姿……
それはこれまでのセニリアとは、また違った一面を見せていた。
「おぉ、セニリアさん似合ってんじゃん。背中とか大胆だなー」
「……どうも、ありがとうございます」
その水着姿を見て褒めるのは、誰であろう猛だ。その褒め言葉を受け、表情を変えずにお礼を返すセニリアだが……気のせいか、その頬は少し赤い。
そのやり取りを見たさよなは……
「わ、私は……私は……うぐぐ……」
と、誰にも聞こえない声で泣いていた。もっとも、水着を褒めらえたのに素直に受け取れなかったのは自分であるのだが。
それにしてもこの男たち、褒め言葉のレパートリーが少なすぎである。
「ささ、最後はユカさんですよ~♪」
「わっ、ちょっ……」
そんなさよなの落ち込みや、照れているであろうセニリアの姿に気づかないまま、リミは後ろに隠れていた人物を引っ張ってくる。
それは誰であろう、残った由香である。
「ゆ、由香、お前……」
その姿を見て、達志が一言。
「……なんで、パーカー羽織ってんの?」
この一言だ。
達志が言うように、由香はパーカーを羽織っている。前をジッパーで閉めるタイプのもので、チャックを上まで上げてから水着姿を見せないように完全防御している。
それでも、すらりと伸びた白い脚を隠すことはできていないが。
「だ、だって……はずか、しいよ……」
隠している理由は、ただこれだけの理由だ。
恥ずかしい……真っ赤な顔になっている由香からは、妙な説得力がある。
だが、せっかく選んださよなとしては、こうやって隠されたのでは意味がない。
「観念しろ由香ちゃんー! 脱げー!」
「さ、さよなちゃん!? 目が怖いよ!」
やけくそになったさよなが、由香のパーカーを脱がしにかかる。リミも面白がってそれに参加し、二対一に。二人相手に、自らを守りながら戦い抜くのは至難の技だ。
故に、パーカーは脱がされていく。美女たちがキャッキャ言いながら絡み合っている姿……悪くない。
「あら、なにしてるの、楽しそうね」
ここへ、忘れ物を取りに行っていたみなえも合流。状況がわからないが、とりあえず楽しそうに笑っている。
涙目になる由香の様子に特になにを言うでもなく、のんきに椅子に座る。そんな状況でも、さよなとリミの手が止まることはない。
そしてついに、由香が羽織っていたパーカーが完全に脱がされてしまい……
「う、うぅ……」
その白い肌が、さよなの選んだ水着が、青空の下にさらされる。それを見た、三人の反応は……
0
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)
IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。
世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。
不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。
そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。
諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる……
人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。
夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ?
絶望に、立ち向かえ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキルガチャで異世界を冒険しよう
つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。
それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。
しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。
お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。
そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。
少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家の猫がポーションとってきた。
熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。
ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。
瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。
始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる