目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

文字の大きさ
上 下
169 / 184
第五章 海に行こう

第168話 ナンパをされまして

しおりを挟む


 海での準備は完了。
 自然と、気分は高まる。なんせ、由香、さよな、リミ、セニリアと、みな美女揃いのラインナップ。男に生まれてきたことを感謝したいくらいだ。

 幼なじみという点を引いたとしても、美人の部類には違いない由香とさよな。校内二大美少女の一人に選ばれているリミ。そして、かわいいよりもかっこいいが似合うできる女系のセニリア。
 心配があるとすれば、美人揃いなだけにナンパとかされてしまわないかだ。

 心配なら着いていけばよかったのだが、今ふと思ったのだから仕方ない。

「四人とも大丈夫かな……」

 考えて……大丈夫だろうと、結論が出る。由香やさよなだってもう子供じゃないのだ、きっぱり断ることはできるだろう。それに、リミがいる。
 彼女の魔法の前では、ナンパ男など氷付けにされてしまうだろう。

「なあ達志、先に泳いでちゃダメかな」

「いやダメだろ。子供じゃないんだから」

「ふふ、猛くんは元気ねぇ」

 そんな会話をしながら、女性陣が戻ってくるまで……のんびり、待つことにする。
 浜辺に場所取りをして、着替えをしている女性陣を待つ、達志と猛、それにみなえ。

 達志と猛はすでに水着状態だが、泳ぐつもりのないみなえは動きやすい軽装といった形だ。
 こうやって、のんびりと海を眺めている時間も……悪くは、ない。なにも会話はないが、これはこれでいい。

「平和だなぁ」

「平和だねぇ」

 吹き付ける風が、冷たくも気持ちいい。その時、「あっ」と声を漏らすみなえが急いで立ち上がる。

「車の中に忘れ物してきちゃった。ちょっと行ってくるわね」

「忘れ物? 俺行こうか」

「いいって。ここで猛くんと待ってなさい」

 言って、この場から去っていく。着いていくか、もしくは代わりに行こうとしたのだが……幼なじみとの時間を潰したくないからと、気を利かせてくれたのだろうか。
 とはいえ、なにか話すことがあるというわけでもなし。こうしてのんびりしているだけなのだが。

「ねえ、おにーさん暇~?」

 すると、誰かから声をかけられる。由香たちか、とも思ったが、声が違うしわざわざおにーさんなんて呼び方はしないだろう。
 よって他人であると確信しつつ、声の主に視線を向けると……

「私たちと遊ばなーい?」

 ……三人組の女性が、いた。もちろん水着姿だ。
 三人ともビキニで、驚くことに全員スタイルがいい。モデルをやってると言われても信じてしまうだろう。

 ここまでくれば、彼女たちの目的はなにかと想像がつく。そう……いわゆる、ナンパだ。
 まさかの、人生初のナンパである。

「なあ猛……」

「あぁ、間違いないな」

 猛に確認をとっても、どうやら彼も同じことを考えているようだ。
 ナンパ……それもナイスバディの女性からだ。男として、悪い気はしない。

 もしも人を待ってなければ、着いていったかもしれない。

「えぇと、悪いけど……」

「あ、そっちの子弟? やだかーわいい。キミも一緒に遊ばない?」

「ぷっ……!」

 角がたたないよう、柔らかく断ろうとしたところへ……女性の一人が、達志を指して話す。
 その台詞に、思わず猛は吹き出してしまった。

 どうやら、彼女らがナンパのターゲットとして選んだのは猛だけだったようだ。
 そこは、いい。達志から見ても猛はいい男だと思うし、ナンパされても不思議じゃない。

 問題は……達志が、猛の弟であると思われてしまったこと。それは、仕方ないことだとは思う。
 なにせ、外見では兄弟の年の差があると思われても不思議ではない。本来同い年には見えないのだから。

 だが、だとしても……達志にとってはショックで、猛にとっては笑いのツボだ。
 親子だと思われなかっただけ良しとしよう……フォローにならないフォローを自分に言い聞かせる。

「もしかして誰かと待ち合わせ~?」

「あ、あぁ。だからキミたちとは……」

 しかし、それで諦めるナンパではない。

「じゃあ、その待ち合わせの人が来るまででいいからさ。いいでしょ?」

「えぇと……」

「悪いけど、私たちがその待ち合わせなので。遠慮してもらえますか」

 思いの外食い下がるナンパに、なんと答えればいいのか……言い詰まっていたところに、ナンパ女性の背後から声が。
 自然と、みんなの注目は声の主に。

 そこにいたのは……

「さ、さよな……」

「お待たせ、た、け、る、くん」

 さよなを先頭にした、女性陣。付け加えるなら、笑顔のさよなを先頭にした、だ。
 ただし、その笑顔は……笑顔であって、笑顔でない。

 その迫力に、達志や猛だけでなく、ナンパ女性も圧されている。

「い、行こっか」

「そ、そうね」

「うん。お邪魔しましたー……」

 さよなの迫力に圧され、女性たちは去っていく。
 ナンパから解放された男二人ではあるが、一難去ってまた一難。さよなが怖い。

「よ、よおさよな。えっと……み、水着似合ってる、な?」

 さすがにまずいと感じた猛は、すかさずフォロー。
 だがこれは、苦し紛れに出た言葉などではなく本心だ。

 女性たちが案外すんなり引き下がったのは……さよなの迫力プラス彼女たちの水着姿が原因だ。
 なぜならそれは、モデルのような彼女たちをしてなお……勝てないと、そう思わせるほどの存在がいたからだ。

 だから、似合ってるというのは嘘ではない。嘘ではないが、タイミングが悪く……さよなも、素直に喜べない。

「そんなこと言って猛くん、ナンパが嬉しかったみたいだけど?」

 仁王立ちで腕を組むさよなが怒っている原因は、やはりナンパにある。潔く断ってくれなかったことが、彼女には不服だったらしい。

 さよなが着ている水着は、フリルの付いた白いビキニの上下。さらに、花柄のパンツの上にはスカートを着用したタイプのものだ。
 スレンダーなさよなの体型を引き立てる素材となっている。

 ちなみに……この水着、『盛れる水着』と謳い文句があったのは、さよなだけの秘密だ。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。 それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。 しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。 お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。 そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。 少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

処理中です...