目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第四章 激動の体育祭!

第156話 閉会の儀

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 激動の体育祭が終わる。
 一同が集まり、教師から生徒たちに労いの言葉がかけられる中。達志は一人、ボーッと全チームの結果一覧を見つめていた。


 一位:緑チーム

 二位:青チーム

 三位:赤チーム

 四位:黄チーム

 五位:桃チーム


 これが各チームの順位結果である。
 達志所属の赤チームは可もなく不可もなく、真ん中の位置にある。

 最後に達志がやらかしたし、芸術部門でバカ二人がやらかしたりしたが……
 なんとかこの順位に抑えられたのは、ひとえに他のメンバーのおかげだろう。

 大方の予想通り、一位はリミやルーアが所属する緑チーム。順位としては一位ながら、二位以下のチームとは大きな差がある。
 出来レースを疑いたくなるほどだ。

 マルクスやシェルリアのいる青チームが二位、このチームは比較的安定していた。
 二人三脚では大きな遅れがあったものの、それを補っても二位に立てている。

 ヘラクレスのいる黄チームが四位。少し意外な気もした。
 いかにヘラクレス個人が未知数な相手とはいえ、それだけで上に行けるほど団体戦は甘くないということだ。

「はぁ……なんか気が重たい」

 先ほどトサカゴリラに嫌味を言われたのだが……達志の転倒でリレーに大きな遅れがなければ、赤チームは二位になれていたかもしれない。
嫌味というより、正論とも言えるが。

 他のみんなはフォローしてくれたりしたのだが、なにぶん達志自身が自分を許せていない。

「それに、チラチラ視線を感じる……」

 グラウンドに整列し、教師の長ったらしい話を聞いているこの間にも、周りからは視線を感じたりひそひそ話が聞こえるのだ。

 当然だ。達志の痴態は同チームどころか全校生徒、果ては教師や見学に来ていた人たちにも見られていたのだ。
 正直、恥ずかしいどころの話ではない。

 この気持ちを払拭するためにはどうすればいいのだろうか。穴に入ればいいのだろうか。死ねばいいのだろうか。


『気にすることないって、誰だってミスはするよ』

『最後までよく走ってくれて感激したよ』

『転けたってことはそれだけ一生懸命ってことだろ、恥じるなって』


 ……と、リレーが終わったあとに達志にかけられた声の数々。
 それは達志をフォローするもので、とてもありがたいと同時にとてもいたたまれなかった。


『ったく偉そうにしといてだらしねぇ。最後の最後でヘマしやがって』


 とはトサカゴリラの言葉だが、むしろこのときばかりはトサカゴリラの言葉の方がありがたかった。
 フォローされても惨めになるだけだし。

 同じチームにマルクスがいれば、それはもう激しくけなしてくれるのだろう。その方が、逆に居心地がいいのかもしれない。
 Mではないが。

「はぁ…………」

 閉会式の最中、一人後悔に押し潰されていた達志であったが……それに構わず、時間は過ぎていく。
 教員たちの長くありがたい話も終わり、そのうちに会も終わりを迎える。

 今日は、体育祭が終われば下校だ。しかし達志にとっては、この後の帰り道が憂鬱な時間でもある。
 きっと猛や猛や猛などにいじられるんだろうな、と不安を感じてしまうのでいっぱいだ。

「みんなお疲れ様~! かっこよかったよ~!」

 体育祭が終了し、ここは教室。
 教卓に立つのは副担任である由香であり、こういった『笑顔』が苦手なムヴェルに代わり生徒たちを労っている。

 勝ったチーム負けたチーム。各々いるがひとまずは、それぞれの功労を労おう。
 それでも一人、浮かない顔をしている人物はいて……

「ほ、ほらたっ……勇界くん元気だして!」

「わざわざ名指ししないでくれない!?」

 体育祭後のホームルームが静かに終わるのを待っていたというのに、デリカシーの欠片もない言葉が達志への視線を集める。
 由香は、やっちまった……という顔をしているが、もう遅い。

 本人としては励ますつもりだったのだろう。
 それは達志もわかってはいるが……名指しして指摘されると、余計に恥ずかしい。

「そうだよ! 俺があの時転けなきゃ勝ててたかもしれないんだよ! 大いに反省してますよー!」

 と、達志は教室の中で叫ぶのだった。
 この時の達志の声は、夕焼けの差していた空にこだました。


 ―――そして、時は下校時へ。

「だっははは! しかし面白かったよなぁ、あの転けっぷり!」

「ちょっ、猛くん!」

 ここにも、達志のガラスのハートを釘で打ち付ける男が一人。

 現在共に下校している、幼なじみである猛は、達志のリレー転倒がよほどツボに入ったらしい。
 ゲラゲラ笑っている。

 彼の肩を、同じく幼なじみであるさよながパシパシ叩いているのだが、効果なしだ。

「いやいいさ、俺なんか笑い者にされたって……」

「ったく元気出せっての! なんだ、リレーで転んだくらい! 俺なんかバスケの試合でスリーゴール決めようとしたら先輩の頭にボールぶつけたんだぜ?」

 落ち込む達志の背中を、猛の大きな手がバシバシ叩く。痛い。

 背中を叩きながら、おそらく達志を励まそうとしてくれているのだろう。
 しかしその話があまりに突拍子なさすぎて反応に困る。

 おそらく達志が眠ってから起こった出来事なのだろうが……どうすればゴールへのシュートがヘディングへのシュートに変わるのか。
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