目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第四章 激動の体育祭!

第151話 芸術対決の行方

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 『芸術審査選手権』と言う、謎の種目。
 それに出場しているのは、緑チームのリミとルーアだ。一番手に、二人が挑戦する。

 これが魔法による合戦であれば、間違いなくこの二人の勝利だろうという確信があるほど、魔法特化の二人だ。
 そんな二人が出場している、この種目の内容とは。

「我が身に宿りし力よ……今こそその力を解放する」

 ルーアは、ゆっくりと眼帯を外しつつ……なにやらぶつぶつと話し出す。それには、聞き覚えがある。
 まるで、ルーアが魔法を放つ際に告げるザ、中二詠唱のようで……

「って、まさか……」

「我が力、とくとその目に焼き付けよ!」

「おいおいなにやってんのあいつ……ここ一帯、消し飛ばす気か!?」

 間違いない、ルーアは魔法を放つつもりだ。
 ルーアは眼帯により魔力を封印しており、その眼帯を外すことで恐るべき力を発揮する……という、まるでフィクションみたいなそのっを持っている。

 初めて見たときは、病気かそうでないのなら中二病のファッション的なあれだと思っていたが……どうやら、そうではないのだ。

「熱くたぎる炎よ現れよ! 弾けろ、"ファイヤーフラワー"!!」

 まあ本人は中二病みたいなものだが……今、そんなことはどうでもいい。
 問題は、ルーアがその強大な力をこの場で解放したということ。

 ルーアの強大な力なら、学校含んだ一帯が消し炭になるだろう。
 よりにもよって、たくさんの人が集まったこの空間でだ。

「やりやがったあいつぅ! 早く逃げ……!」

「"ブリザードカプセル"!!」

 ルーアの左目から放たれた小さな火の玉が、上空に打ち上がる。……そう、上空に。

 強力な力が凝縮しているであろう火の玉は、一瞬カッと光り輝き、一気に爆破する……
 その直前。別の声が割り込み、同時に辺りを猛吹雪が吹き荒れる。

 それは、爆発中の火の玉を中心に、吹き荒れる。絶対零度とは、アレを言うのだろう。
 ……あっという間に、火花を氷漬けにしてしまう。巨大な氷の像……その中には、爆発真っ最中の火がある。

「……これ、は」

 ……"ファイヤーフラワー"。その名の通り、弾けた瞬間の花火。それが、氷の像の中に固められている。
 巨大な氷の像の中にある、花火……炎と氷が織りなすそれは、なんとも幻想的な光景を、生み出していた。

『これは素晴らしい! 百点満点中百点! 文句なし!』

「さすが、魔法においては優等生ペア、だね。敵ながら、見事としか言いようがないよね」

「あぁずっと保存しておきてぇなぁ」

 盛り上がる司会、観客……それに、あっけにとられる達志。

 つまり……こういうことなのだ、この『芸術審査選手権』は。
 自分たちのチームが、どれだけ芸術的なものを生み出すことができるのか。その対決。文字通りだ。

 そして、これは……リミ、ルーアペアの芸術作品は、かなりの出来だ。
 蘭花の言う通り、敵チームだとはいえ、あっぱれだ。これは、敗けを認めてしまうくらいの、光景だ。

 この相手に、ウチの……いや、他のどのチームも、太刀打ちすら出来るとは思えない。

「……圧倒的だなぁ」

 その後も、他のチームも同じく芸術作品を披露していくが……
 予想通りというもか、どれも、リミたちのものには敵わない。もの自体悪くはないのだが、相手が悪い。

 二人の魔法は、ただでさえ強力なものだ。それが合わさり、芸術品を作り出している。
 もはや、敵う者などいないだろう。

 そしてついに最後、赤チーム……達志所属のチーム。
 出場ペアはトサカゴリラと、筋肉ナルシストの組み合わせ。とても目に優しくないペアが、登場した。

 正直、勝たなくていいから早く帰ってほしい。

「ふっ……この勝負、俺たちの勝ちだぜ」

「あぁ、見せつけてやろうじゃないか!」

「は?」

 登場早々、やたら余裕満々な二人がそこにはいた。
 以前学校にプチテロを起こしたトサカと、リミに告白(柔道部への勧誘)をしてきた筋肉だ。

 リミとルーアの共同芸術を目にしておきながら、その自信はどこから来るのか、聞きたくなる。
 だが今は、同じチームの仲間を信用するしかない。

 ……そして……

「俺の水触手で……!」

「ぼくの美体を、縛り付ける!」

 トサカゴリラは水の触手を生み出す。隣では、服をはだけさせた筋肉ナルシスト。
 もはや、この段階で嫌な予感しかしない。

 そして現れたのは、筋肉ナルシストの体を水の触で縛り付けるという、吐き気を催す最悪な芸術(?)が誕生した。

「…………」

「おぉ、タツが気絶してる……」

 会場は、しばらく沈黙に包まれた。誰もが、それを目にして言葉を失っている。
 たっぷり一分を待ってから、ようやく司会がマイクを通して声を上げた。

『出ました! 赤チーム……おぉーっと、得点は百点満点だ!』

「なにぃ!?」

『マイナスの方向で!』

「マイナス!?」

 百点満点の一番下は、ゼロではなかったのか。
 マイナスがあるとは、思いもしなかった。……それも、満点の方向でぶっちぎってしまった。

 最初に最高の芸術を生み出し、最後に汚物を生み出したこの種目は、後味最悪な形で終了した。
 優勝は、当然リミ&ルーアの緑チームだった。
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