目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

文字の大きさ
上 下
151 / 184
第四章 激動の体育祭!

第150話 芸術審査選手権

しおりを挟む


「いやぁ、なんか楽しかったよ」

「それならよかった」

 部活対抗リレーが終わり、選手はそれぞれのテントへと帰還する。
 みな、いい顔をしている。各々楽しんだようだ。

 グラウンドでは、片付けが行われている。結構大掛かりな準備がされていたが、片づけるのも魔法であっという間だ。
 本当に、魔法とは便利なものだ。

「お疲れー、みんな」

「おう」

 自分のクラスのテントに戻った達志たちを迎えたのは、蘭花だ。
 彼女はちょこんと座り、元気よくぶんぶんと手を振っていた。

 ずっと思っていたことだが、昔の由香に似てるかもな……と、達志は思っていた。

「いやぁ、勇界くん、いい走りっぷりだったよぉ」

「はは、そりゃどうも」

 それぞれ、声をかけていた蘭花が、達志の側へと寄ってくる。
 ボールをラケットから落とさないよう走っていたので、正直、ちゃんと走れていたかはわからないが。

 それも、周囲の顔を見るに、問題はなかったらしい。

「ま、楽しめたならそれが一番だよ!」

「そうだな」

「蘭花ー」

「あ、呼ばれてる。じゃ、あとでね」

 忙しなく動く蘭花の姿に、達志は苦笑い。
 小さな体で、元気に動いているものだ。

 よっと腰を下ろし、達志はプログラムを確認する。達志が出るのは残すところ、『騎馬戦』のみだ。
 あとはのんびりと、見学させてもらおう。

 さて、次の種目の名前は……

「『芸術審査選手権』……?」

 今までに見たことのない単語が、書いてあった。
 何度見返しても、書いてある文字が変わることはない。なんだこれ。

 ……事前の種目決めの時間のときも思っていたのだが、あえて触れなかった。なんなのだろうこれは。どう見ても、体育系とは関係ない気がする。

「なあ、これって……」

「え? あぁ……達志くんは知らないんだっけ。『芸術審査選手権』……その名の通り、自分たちがいかに素晴らしい芸術品を作ったかを、競う種目だよ!」

「名前の通りだしマジで体育関係ねぇ!」

 なぜそんな種目が加わっているのか疑問になったが、「体動かしてばかりだしちょっとした休憩的なあれ」らしい。休憩的なあれってなんだ。
 休憩的なあれなら、部活対抗リレーがそうじゃなかったのか。得点には関係ないとはいえ、体を動かしたから休憩ではないのか。

「まー、そりゃ見てればわかるって。結構評判いいんだよ?」

 まあまあ、と宥めるクラスメイトを信じて、ここはおとなしく見学しておこう。
 いちいち変な種目を思い付いたり面白いことを考えやがる……程度に、前向きに考えよう。
 これを考えたのは、いったい誰だろうとは思うが。

 ちなみにメンバーは、すでにグラウンドに集まっている。その中には……

「リミ!? それにルーアまで!?」

 リミ、そしてルーアという、おそらく緑チーム最大火力を持つ二人がいた。
 こんな種目で、どうして? そんな気持ちしか浮かんでこない。

 それはそれとして、絵になる二人だ。ルーアも、黙っていればかわいいのだ。
 心なしか、野郎どもの黄色い声が湧き上がったように感じる。

「そりゃこの種目、一般的な種目に比べて貰える点数が多いからね。そりゃ気合いも入るでしょそりゃ」

「なおさら体育要素どこいった!?」

 体育要素とはまったく関係のない種目で、より多くの点数が入るとは。
 やはりよくわからない、基準が。これを考えた奴は愉快犯に違いない。

 相手チームにはリミとルーア……他チームもそれなりに、なんだか『やりそう』な人たちが出場している。これはこっちも、気合いを入れていることだろう。

 その赤チームの、出場選手は……

「っぺ、なんでこんなしょっぱい種目に出なきゃいけねえんだ……」

「あぁ、感じる……注目している、みんなが! この! ワタシに! 素晴らしい」

「…………」

 トサカゴリラと、柔道の筋肉ナルシストだった。

「なんでゴテゴテの体育会系がこぞって出てんだよ!!」

 もう、突っ込まずには……いや、叫ばずにはいられなかった。体育祭の競技には出場回数に制限があるというのに。
 よりによってなぜあの体育会系二人が、全く体育関係無さそうな種目に出ているのか。

 ……いや、なにか勝算があってのことかもしれない。そうかもしれないきっとそうだ。
 とりあえず、落ち着くことにしよう。

「なんでもいいから頼むぞ……!」

 とりあえず勝つためには、やたらと獲得点数の高いこの種目で、上位に入ることが必須だ。一位が理想的ではあるが。
 そうこう願っているうちに、一組目の披露が始まる。

 とりあえずこれがどんな種目か確認するためにも、一組目の動きをよく観察する。評判も高い種目だし、単純に気にもなる。

「リミ、ルーア……」

 早速最強ペアの登場だ。この二人が出ている理由も謎だが、それも見ていればわかるということだろうか。
 気のせいか、辺りの緊張感が増した気がする。二人の準備が済み、開始の合図が鳴る。

 すると、早速行動を開始した者がいた……ルーアだ。なにをするつもりなのか、おもむろに自らが付けている眼帯に、手をかける。

 ここからが、二人の共同作業の始まりだ。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。 それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。 しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。 お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。 そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。 少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

処理中です...