目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

文字の大きさ
上 下
143 / 184
第四章 激動の体育祭!

第142話 ぶつかり合いの結果!

しおりを挟む


 なにかが飛んできて、達志はそのなにかを、なんとか避けることができた。
 どうやら、マルクスの仕業だ。彼は、レースを共に走っていたもう一人を掴み、引っ張り……後ろにぶん投げたらしい。
 つまりは、人間砲弾だ。そんなのありかよ、と叫びたい。

 結果、後ろを走っていた達志にぶつかりそうになったが、それを避けることに成功したのは幸運だった。
 いや、ぶつかりそうになったのではない。マルクスは、完全に達志を狙っていた。

 思わぬところで、体が反応してくれたらしい。それでも、体勢を崩してしまったことに変わりはなく……転びそうになり、手をぶんぶん振ってしまう。
 バランスをとろうと右往左往する腕……それはなにかを掴んだ。

「おわっ!?」

「ぶはっ!」

 幸か不幸か、前方を走るマルクスの服を掴み……そのまま、勢いあまって二人とも転倒。
 ……するかと思いきや、その場で踏ん張る。

 さらに驚くことに、後ろから達志に掴まれているにも関わらず、マルクスはそのまま走るのを続行。
 人一人がぶら下がっているため速度は落ちるが、人一人をぶら下げての状態で足を進め続ける。この体のどこに、そんな力があるのだろうか。

「ちょ、そんな引っ張らないでぇ!」

「お前が、離せば、いいだろ!」

 ここで手を離せば転ぶ。しかも距離を離されてしまう。
 かといってこのまま掴み続けても、ただ引きずられるだけだ。ついていくのもやっとだし。

「なら、寸前で……っておわぁ!?」

「ふん!」

 こうなれば、旗を取る寸前でこちらから手を伸ばし、先に取るしかない。勝つためにはそれくらいしないとダメだ。
 決してズルくなんてない。ズルくなんてないのだ。

 が……そうそううまくはいかない。やると決めるや否や、体勢が大きく崩れる。
 マルクスが、強引に達志を引き剥がしにかかったのだ。

 なんとか離されないように、必死に掴む達志だが、異様に強い力で振り払われる。人の皮を被ったゴリラじゃないかと言いたくなるくらいに。
 握力ゴリラなんて、リミだけで充分だ。

「いでっ」

 派手に振り払われた達志は、後頭部強打。地面に打ち付けてしまう。
 残念な結果に終わりながらも、振り払われる寸前……達志は、見た。マルクスの額から、なにかが生えているような。

 五人で競う、このビーチフラッグス。スタート時には、当然五人いた。
 しかし、スタート直後にマルクスタックルにより一人転倒。達志を狙った生徒も、勢い余ってマルクスにやられ、これも転倒。
 さらに、スタートし順調に走っていたもう一人は、マルクスに人間砲弾に使われ、顔面を地面に打ち付けた。

 残っていたのは、達志とマルクスの二人のみ。
 激しい攻防の結果……しがみつく達志を、マルクスは強引に振り払う。

 そして……

「っ、つつ……あー、あちゃー……取られちったか」

 打ち付けた後頭部を擦り、達志は起き上がる。そして、見た。
 達志を振り払ったマルクスの手に、旗が握られているのを。旗は一つゆえに、この種目には二位、三位が存在しない。
 そのため、旗を取ったチームの一本勝ちだ。

 達志は結局、意気込み充分結果不十分となったわけだ。
 悔しいが、不思議とさっぱりしていた。

 ちなみにその後の五戦目も、達志所属の赤チームは旗を取れなかった。
 なので、ビーチフラッグスではまったく点を取れなかったことになる。

「うぅ、面目ない」

「いやあ、すごかったよ。どんまいどんまい」

 ビーチフラッグスが終わり、達志及び赤チーム他メンバーは、テントへ戻る。
 五人いて、一点も点が取れなかった。その不甲斐なさに、沈む一同。

 しかし、迎えてくれるチームメンバーは、誰一人としてそれを責める者はいなかった。

「確かに勝てなかったのは、残念だったけど、みんな楽しそうだったしね。
 特に、勇界くん!」

「お、俺?」

 チームメンバー一人一人を労いつつ、蘭花は達志を指差す。
 その手で、達志の手を取り、ぶんぶんと振った。

「そうそう、見ていても、楽しんでいるのが伝わってきたよ!」

「お、おう、そうか……」

 正直、一生懸命でよく覚えてはいない。
 しかし、見る側がそう感じたということは……実際、達志は楽しんでいたのだろう。

「そ、れ、にぃ」

 蘭花が、意味ありげに、達志の耳元に顔を近づける。

「いやあ、敵チームなのに、勇界くんのことを応援しているあの子、すごく情熱的だったよ」

「あの子?」

 まるで内緒話をするように、蘭花は言う。
 一瞬、それは誰のことかと思った。敵チームで、達志のことを応援している人物など。ほとんどの人物は、同じチームの人を応援するはずだ。

 しかし、そこまで考えて……達志は、ある一人の人物の顔が、思い浮かぶ。
 その人物は、同じチームならばおそらく、いの一番に駆け寄ってくるだろう自信があった。

 ……リミは、達志の応援を、してくれていた。

「……そっか」

 自然と、達志の表情も柔らかくなる。
 このあとは、待ちに待った昼食の時間だ……その時に、リミと一緒に食べよう、という話をしている。

 その際、お礼を言っておくとしよう。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。 それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。 しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。 お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。 そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。 少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...