目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第四章 激動の体育祭!

第133話 さあ競技を始めよう

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 体育祭に挑むためのチーム。
 個性的なメンバーしかいないが、チーム一丸となれば、壁は乗り越えられるはずだ。多分。

 それぞれの個性のぶつかり合いが激し過ぎるが、果たしてうまくいくだろうか。

「ま、なんとかなるだろ。うん、なるって考えよう。
 魔法ありきみたいだし、これだけ人数がいれば、リミみたいなすごい奴がいるかもしれないし……」

『第一種目は、玉入れ競技です。選手の人は……』

「さっそく魔法関係なさそうなのきちゃった!?」

 いよいよ競技が始まる。その第一種目は、玉入れである。

「って、玉入れ!? 高校生にもなって玉入れ!?」

「なんだようるせーな。目玉種目の一つだろうが」

「玉入れが!?」

 驚愕する達志とは別に、出場メンバーが集まっていく。予めプログラムに目を通していたが、見間違いではなかったようだ。
 この競技は、各チーム五人が出場する。

 玉入れという名の通り、それぞれのチーム色のカゴに玉を投げ入れていく。ここまでの説明なら、普通の玉入れではある。
 が、これは魔法ありきの競技。普通の、とはいかないだろう。

「じゃ、行ってくるねー」

「…………頑張る」

「ウチのクラスから二人も出んの?」

 元気よく手を振る蘭花と、無口ながら気合いを表すシャオ。二人の背中を見送りながら、とりあえず達志は観戦モードに。
 玉入れなんて小学生以来なため、懐かしくはあるものの……

 正直、この年で玉入れに熱くなれるとも思えないのだが、果たしてあにが始まるのだろう……

『では、開始!』

 メンバーが揃い、競技が開始される。
 確認すると、蘭花とシャオ以外に、達志の知った人物は…………いた。

「ヘラ……あいつもいる」

 スライムであるヘラクレス。手足もないスライムに何ができるのかと思いきや、忘れてはいけない。
 彼はその体から、手足を生やすことが出来るのだ。

 しかも……その長さに制限はない。ゴムのように伸縮自在なのだ。よって……

「玉を投げ入れるんじゃなく、直接カゴに入れている……だと?」

 玉を投げ入れる必要はなく、手に持ったまま直接、玉を運ぶことが可能だ。
 しかも、彼の場合それは魔法ではない。スライムゆえの特殊能力……とでもいえるだろうか。

 正直、結構グレーゾーンな気もする。

「ありなの!? あれありなの!?」

「ありありだぜ!」

 ルール的に問題はないらしい。ならばいいが。
 あれならば、確実に玉を入れることが出来るため、非常に効率的だ。

 また、別チームの様子も観察してみる。やはり各々、普通に玉を投げ入れている者が多いが、そんな単純にいくはずもない。

「……なあ、あそこのチーム玉浮いてない?」

「ありゃ無属性の浮遊魔法使ってるんだろうな」

「いいの!? あれもいいの!?」

「ありありだぜ!」

 浮遊に関しては、魔法だからまあいいのだろうが。
 さすが、ここまでくるとなんでもありなのだろう。

 だが、ああいうやり方がありならば、こちらにも勝機はある。以前水魔法で触手を作り出し、使っていた人物が、赤チームにはいる。
 あれを使えばヘラクレスのように、玉を直接入れることが可能なはずだ。

 というわけで、気に入らないがトサカゴリラに期待するしかないだろう……なのに。

「なんで、この競技に出場してないんだよ!!」

「うぉ、びっくりした」

「びっくりしたのはこっちだよ!」

 のんきにテント内に座っているトサカに、達志は頭を抱える。
 なぜこの男は、ここでのんびりしているのだろう。

「なんであんたこの競技出てないんだよ! あんたの水触手活かすとしたらここだろ!?」

「うるせーな。仕方ねーだろ、同じ人間が出れる競技数は限られてんだから」

「ならなおさら出ろよ! あんたが輝けるのはこの競技で、役に立てるのは今この瞬間だけだろ!?」

「お前どんどん失礼になってるよな!? ナチュラルにタメ口だしよ!」

 テロは起こすわのんきにしてるわ、使えないトサカである。
 体育祭が始まったばかりで、早くも達志の血圧が上がりそうである。

 これは第一種目落としたかもしれない……そう達志が思い始めていた頃、その肩に置かれる手があった。

「まあまあ、落ち着きたまえよ勇界くん」

「ロリ島ロペ……」

「なんて不名誉な呼び方をするんだキミは」

 その手は、同じチームであるロペのものであった。正直心の中だけでそう呼んでいたのだが、つい口に出てしまった。
 だってどうしようもないロリコン野郎なんだもの。

 ロリ島改め毒島 ロペは、若干表情を引きつらせながらもコホンと咳払い。
 次いで、選手たちの方を指さす。

「自分のチームメンバーを信じなよ、ほら」

「信じろって言われても……」

 他チームは、厄介な魔法は元より、そのコンビネーションで着々と玉を入れている。
 ヘラクレスに至っては、手を巨大化させ十以上の玉を一気に入れるという、とんでもないことをしでかしている。
 もうあれ魔法でいいんじゃないか。

 他のチームも、慣れてきたのか次々と玉を入れて……


 ボォォ……


「……うん?」

 見間違いだろうか。投げられた玉が今、燃えて焼失した。
 いやいやそんなわけがない。目を擦り、目を凝らし、もう一度よく見る。


 ボォォ……!


「……なあ、燃えてない? 玉燃えてない?」

「あぁ」

「ありなの? しかも火の元、ウチのチームからっぽいんだけど?」

「ありだし、正真正銘ウチのチームの仕業だ」
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