目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第四章 激動の体育祭!

第131話 体育祭日和!

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 十年間を眠り、目覚めた世界で。周囲の環境が一変していた。
 そんな世界で、戸惑いを見せるのは、目覚めた本人勇界 達志だけではなかった。
 その周囲の人物も、また同様に。

 思春期真っ盛りの少年少女や、思春期を通りすぎた女性の、複雑な恋愛事情が浮き彫りになったりならなかったりする、今日この頃。
 誰かに相談したりされたり、事態が動きそうで動かなかったり。

 それらの問題が、この短期間で解決するはずもなく、日は過ぎていく。
 結果、数名はもやもやした気持ちを抱えたまま、ついにこの日を迎えることになった。

『これより、体育祭を開催します!』

 マイクを通した、生徒代表の声が響き渡る。
 そう、今日は校内生徒のほとんどが待ちに待っていた、体育祭である。

 時期的に仕方ないのだが、超暑い。さっさと初めてほしい。

「いよいよ来ましたねぇ、この時が! 今日こそ、我が封印された力を、解放するとき……!」

(楽しみなのは楽しみなんだけど、胸の中で気持ちがごちゃごちゃしてて、整理しきれてねぇ……)

 あからさまにテンションの高い、中二少女ルーア。彼女とは対照的に、達志の心情は穏やかではない。
 その理由はというと。先日、放課後の空き教室での由香との一件以来……彼女とはまともに話せていないからだ。

 さよなに相談こそしたものの、だからといって事態がすぐに動き出すはずもなく。
 それが心の中で、ずっとつかえている。

 第三者に相談するほどに悩んでいたのだから、由香本人に直接話せるはずもないし。
 かといって、それ以外の話を由香としようと思っても、嫌でもあの日のことを思い出してしまう。

「ま、体動かせば、多少はましになるかな」

 だから今日は、いろんな意味で複雑な日である。
 楽しみであったり、もやもやが気になってちゃんと集中できるか不安であったり。

 とはいえ、とりあえず体を動かせば、このもやもやはどっかいくんじゃないかとも思うので。
 チームの勝利に貢献するためにも、考えるのをやめようと思う。

 自分のためだけでなく、やるからには勝ちたいのは、本当であるし。

 ただ……複雑な気持ちがあるのは、なにも由香関係のことではない。
 複雑の中には、不安な気持ちもある。そんな気持ちになっている原因は、今このときこの瞬間のせいだ。

「やー、楽しみだねぇみんな気張ってこー!」

「やるからには優勝だあははー!」

 妙にテンションの高い女性陣……小宮 蘭花と、ネプランテ・ゴン。人間の少女と、ゴブリンの少女。
 見ていて微笑ましいし、華がある分こちらはむしろ、癒し要素になるだろう。

 問題は……

「…………がんばる」

「ふぅ……可憐なつぼみたちが、あちこちに咲いている。素晴らしきかな体育祭!」

「さすがアニキ! なによりも先に、見物客の子供をチェックするとは!」

 こっちの、男性陣の方である。無口なリザードマン、シャオ・リングルはまあ、ともかくとしても。

 独特的な口調の小金山 バキ。彼がアニキと呼び、異様に持ち上げる相手……
 大問題なのがこの男。ロリコン疑惑(ほぼ確定)の男、毒島 ロペ。
 問題といっても、今のところ人柄だけなので、運動神経的な意味でチームに貢献してくれるかはまだ、わからないが……

 貢献してくれるとしても、その性格だけでマイナスであるのだ。もう通報してしまえ。
 わかっていたこととはいえ、問題のあるメンバーのいるチーム。

 それに加えて……

「いやぁ、今日は実にいい運動……いや体育祭日和だね! あっはっは!」

 テンションの高いメンバーの中でも、異様にその存在感を醸し出している、この男。
 筋肉のせいで体操服がぱっつんぱっつんになり、それでも本人は気にせず、笑っている。

 オールバックにした金髪が、太陽の光によって輝いているようだ。
 この男と達志は、面識はない。一方的に知っているだけだ。なぜなら……

(なんで筋肉ナルシストと同じチームに……)

 以前、リミに告白をしていた生徒である。
 告白といっても愛の告白ではなく、自身が主将を務める柔道部への勧誘であるが。その現場を、達志は見ている。

 柔道部主将というからには、運動神経もいいのだろう。ならばチームとしては、ありがたいことではあるが……

「お友達どころかお近づきにすらなりたくない人種だと思ってたんだけどなあ……」

「ん?どうしたんだいキミ、顔色が悪いぞ? 体調管理はしっかりしないとダメじゃないかあっはっは!」

「あははー……」

 どうも、達志の苦手なタイプだ。だが当の本人はそれに気付くこともなく、のんきに達志の背中をばんばん叩いている。
 すごく、痛い。

 加えて肩を組んでくるものだから、暑苦しくて仕方ない。ただでさえ暑いのに。

「同じチームになった者同士、友好を深めようじゃないか。共に優勝を目指して頑張ろう!!」

「あっつい……いろんな意味であっつい」

「そ、そんなに男同士くっついて…………せ、先輩はやっぱり受け……! えへ、ぅえへへ……」

「自分のチームに帰れ腐れエルフ!」

 暑苦しいほどにくっついてくる筋肉ナルシスト……名を、ノーベルト・ヴェンマという。

 彼と、彼に巻き込まれる達志を見てなにかを嗅ぎ取ったのか、エル腐もといエルフであるシェルリア・テンが、どこからともなく寄ってくる。
 ちなみに彼女は青チーム……マルクスと同じチームだ。

 現在、生徒たちは各チームに分かれている。クラスも学年も関係ない。

「まだ始まってもないのに、どっと疲れたんですけど……」
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