目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

文字の大きさ
上 下
117 / 184
第三章 変わったことと変わらないこと

第116話 幼なじみたちとの交流

しおりを挟む


 ファミレスでシェルリアと出会った。

「あ……はーちゃん! お待たせ」

「ホントにだよ、ファミレス入ってきたはいいけど、過ぎてったかと思えばいきなり立ち止まってんだもん。アタシが迎えに来なかったら永遠と話してたんじゃないの?」

「そ、そんなことないよ」

 振り向き、シェルリアはにこにこと笑顔を浮かべている。
 対してその正面にいる、はーちゃんと呼ばれた女の子は不機嫌そうだ。

 それもそうだ。待ち合わせに現れた相手が、自分をすっぽかしていきなり知らない男と、話に花を咲かせ始めたのだから。
 だが、それも本気で怒っているわけでは、なさそうだ。

「ごめんごめん。ちょっと先輩と会っちゃって」

 手を合わせ謝るシェルリアだが、顔には笑顔を浮かべて舌を出している。
 てへぺろ、というやつだ。正直かわいい。

 どうやら相当に気心が知れた仲のようだ。ガシガシと頭をかいたはーちゃんは、「はぁ」と軽くため息を漏らした後、「まあいいよ」と告げる。
 シェルリアとはいい友人らしい。

 が、その見た目は一言で言ってしまえば、ギャルだった。褐色の肌に、染めたのか地毛かはわからないが金髪を、お団子にして頭の右側に乗っけている。
 ちなみに達志眼によると、胸はシェルリアより大きそうだった。

「センパイねぇ……ってことは、テニス部の? んじゃ、こっちの筋肉おっさん? やっべふけすぎじゃね!?」

 先輩と聞き、はーちゃんが目を向けたのは達志……ではなく、猛だ。どうやら体つきからそう判断されたのだろうか。確かに、運動をやっていると思われても仕方ない。
 それにしても猛、そこまで老けているとは思えないが……女子高生からすると、そうなのだろうか。

 知らないうちにバカにされたっぽくなった猛は、ぷるぷる震えている。これは、ちょっとイライラしてきている。

「ち、違うよ! こっちの人!」

「えぇ……うっそ! こんなナヨったのが!? 超ウケるんですけど!」

 いつの時代のギャルだよ、と言いたくなる言葉遣い。
 それはそうと、こちらをなめきっているその態度……ちょっとだけイラッとする。ちょっとだけ。ホントだよ。

「は、はーちゃん! す、すみませんお二方……ほら、行くよ!」

「あっはははは!」

 これ以上はまずいと思ったのか、バカ笑いしているはーちゃんの背中をいそいそと押していくシェルリア。
 元々はーちゃんが座っていた席に戻る途中も、度々シェルリアは頭を下げてきていた。
 なんだろう、この組み合わせは。

 腐ったエルフとくそったれなギャル。なんと異色の組み合わせだろうか。

「……行くか」

「……そうだな」

 嵐が通りすぎたのを確認してから、二人は席を立った。
 始めこそ、どうか俺と猛で変な妄想をしないでくれ……と願っていた達志だが、もうそれどころではなさそうだ。

 とりあえず店を出てからも、シェルリアはともかくはーちゃんの話題に触れるのは、やめておいた。
 それから、たいした話題もないままに歩いていると、プルルル、と着信音が鳴った。

「お、さよな?」

 スマホを見ると、そこには幼なじみさよなの名前が表示されていた。
 なんだろう。とりあえず、電話に出る。

「はい、もしも……」

『達志くん今暇? 学校休みだよね、部活も休みだよね、リミちゃんから聞いたよ! ってわけでウチに来てくれない? もしかしてお友達と一緒? え、猛くん? なら二人でおいでよ! ってか来て!』

「……はい」

 電話に出て、聞かれるままに答え、すごいまくしたてられ、電話が切れた。
 訳も分からないまま、その後さよなの家に行った。

 出迎えるさよな。挨拶もそこそこに、あれよあれよと部屋に連れていかれた。
 初めて入る、十年後のさよなの部屋。それにドキドキする……まもなく、ポーズを取らされ、十分が経過していた。

「……なあ、今どうしてこんなことになってんだっけ」

「さあ……」

 理由も説明されないまま、ポーズを取らされ、達志と猛は、混乱している。
 混乱している、としか言葉が出てこないほどに、混乱している。

 二人は、指示された通りにポーズを取り、かれこれは同じ姿勢なのだ。たとえ動かなくていいとわかっていても、長い時間同じ姿勢でいろと言われるのはつらい。
 いや、動いてはいけない、というのはつらい。

 どうしてこんなことをしているか、その理由を聞きたいのだが……

「ほら、二人とも、動かない」

「「はい……」」

 目の前の美少女……幼なじみである五十嵐 さよなは、その隙も与えてくれない。
 普段物静かな彼女が、物事に打ち込む姿は、真剣そのものだ。

 紙になにか描いているようなので、デッサンをしているのだろうか。職業がデザイナーの彼女がこうしているということは、なにか仕事でもしているのだろうか。
 それにしても、自分たちがポーズを取る理由がわからないが。

 真剣に取り組むその姿に、幼なじみとはいえ思わず見惚れてしまう。
 彼女が大人になっていれば、なおさらだ。十年分の、大人の色気というやつが出ている。

 黒いタイトスカートから伸びた脚は、黒タイツにより覆われている。
 なんでスーツなんだろう、と突っ込みたくなる格好ではあるが……美人のスーツ姿というのは、なんかこう、ぐっとくる。

(脚長っ……それに、やっぱきれいな顔してるよな。物静かだからミステリアス美少女って人気あったもんな。
 物静かな分大人になって、妖艶さも合わさったというか……いかんいかん。さよなは猛が好きなんだ、そんな変な目で見ては……)

「達志くん、ぼけっとしない!」

「ほぁ!?」

 同じ姿勢を続けてばかりで、退屈だったからであろう。考え事にふけっていた達志に、怒鳴るような声。
 気づけばさよなの顔が、目の前にあるではないか。

 これには思わず、変な声が出てしまう。

「さ、さよな? あの、顔ちかっ……」

「あんまりぼーっしないの。これは達志くんのためでもあるんだから」

 見慣れたはずの、見慣れていない幼なじみの顔。それが目の前にある。
 やはり面影はあるとはいえ、美少女から美女になった彼女の顔が至近距離にあるというのは、心臓に悪い。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。 それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。 しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。 お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。 そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。 少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...