目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第二章 異世界っぽい世界で学校生活

第90話 あくまでボランティア的な人助けだから!

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 サキュバスらしさってなんだろうと思った。

「じゃあ、ルーアの思うサキュバスらしいことってなによ。サキュバスらしいことって、なんかしてんの」

 達志の思う、サキュバスの諸々事情が想像のものと異なるというのなら、ルーアにとってのサキュバスらしさとはなんだろう。
 そう思って、聞いてみた。

「え……それはその……寝ている相手にえ、えっちな夢を見せたりとか?」

「俺の想像とあんま変わんなくない!?」

「か、変わりますよ! タツが言ったのは『現実』、私がしているのは『夢』! ぜんっぜん違います!」

 ルーアの思うサキュバスらしさ。それは、達志の想像していたものと、そう変わらないような気もする。だが、全然違うと必死に、否定される。
 その勢いに押されつつも、気になったことがある。

 達志の質問に対する答え……その口振りに、違和感がある。
 私が"している"とは、まさかとは思うが……

「お前、毎日そんなことしてんの?」

「っ……」

 自分が、実際にやっていること。聞いてみたら、言葉を詰まらせた。
 これはルーアの考えるサキュバスらしさと共に、実際にやっていることでもあるらしい。
 サキュバスらしさがソレなのだから、ソレを実践するのは当然とも言えるが。

 視線を泳がせているし、わかりやすすぎる。

「いや、まあいいんだけどさ。サキュバスってか、俺は他の種族について詳しく知ってるわけじゃないし。そういうことしないといけないノルマ的なもんでも、種族間の中であるのかなとか。
 ……ただ一つ気になったんだけど……お前それ、クラスメート相手にやってたりするの?」

 正直、驚きこそしたが……ルーアの行為に、達志は口を出すつもりはない。個人の事情、それも特殊な種族のこととなれば、口出しはできない。
 種族の中で、ノルマみたいな決まりとかあるのかもしれない。三日で何人の男にそういう夢を見せなさいとか。

 ただ、サキュバスの、その夢を見せるというのが……自分の見知った相手も含まれているのか、そうでないのか。場所の範囲の、限界があるのかどうか。
 その辺り……詰まるところ、ルーアが夢を見せている相手が誰なのかが、気になった。

 そして、それを聞かれたルーアは……

「…………」

「したのか! してんのか! 滅茶苦茶目が泳いでんぞ!?」

 先ほどよりもわかりやすく、目を泳がせていた。冷や汗もすごいし、図星だということは一目瞭然だった。

 そもそものサキュバスらしさというのは、なんなのか。本当にルーアの言う通りなのか、ルーアがそう思っているだけなのか。
 それはもう、どちらでもいい。問題は、だ。

 ルーアにとってのサキュバスらしさ……おそらくそれに、正解も不正解もないのだろう。
 これに関して達志が、なにを言う権利もない。ないのだが……

「まさかその、夢を見せる相手にクラスメイトがカウントされてたとは」

 まさかクラスメイトにも、えっちな夢を見せていたとは、予想外だった。
 いったいどんな夢を見せているのか、知らないし知りたくもないが。

「だ、ダメですかね!?」

「それを俺に聞いちゃうの? ……いや別に、ダメとは言わんが……って言っていいのかも複雑だけど。
 クラスメイト相手とは、これまた大胆なことを」

 顔を赤くしている辺り、本人にも恥ずかしいという自覚はあるのだろうか。
 それとも単に、夢を見せている相手を当てられたことが、恥ずかしいだけなのだろうか。

 それがダメかどうかは、達志に判断できるところではないし……聞かれても困る。
 仮にダメと言って、やめるのだろうか。やめて大丈夫なのだろうか。

「え、えっちって言っても、そんなにいかがわしいものじゃないですよ!
 夢を見せるその人が好きな人を、夢の中で具現化して。そこから、好きな人と夢の中で、いい思いをさせてやろうという、私なりの恋のキューピッド的な……」

「充分いかがわしく聞こえるんだけど! ってか教えてくれなくていいから!」

「そう、私は夢の中で、その相手の好きな人といい思いをさせてあげているだけなのです!
 まさに、いい夢見ろよ、とはこのこと! 人助けですよ人助け! ザ、ボランティア!」

「だから言わなくていいっつってんだろ! なんで妙にボランティアの発音いいんだよ! あとそのどや顔やめろ!」

 今までのルーアの人物像が、根本から崩れていくような気がする。なにも知らなさそうな、純朴ロリだと思っていたのに。
 その実、なんかそういうことにめちゃくちゃ興味ありそうなマセガキだった。
 今のルーアをガキ扱いしていいかは疑問だが。

 もしかしたら同年代の中で、一番いろいろ進んでいるのかもしれない。
 別に、それが悪いこととは言わないが。

「ごほん。というか、今の口振りだと、サキュバスって相手の好きな人もわかるんだ?」

「はい、夢の中さえ覗ければ! どれだけ隠してても、心の奥底までは隠し切れませんからね!」

 これは怖いことを聞いてしまった。ルーアの前には、好きな人の隠し事も無意味らしい。
 ルーア恐るべし。というよりサキュバス恐るべし。
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