目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第二章 異世界っぽい世界で学校生活

第88話 私はサキュバス〜!

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 ……サキュバスであることを証明するための、準備。そのためにルーアが部屋を去って、もう十分が経過しようとしている。
 その間、待っているよう言われた達志は、ただ待っているしかない。

 去ったといっても元々広くない、アパートの一人用の室内だ。
 部屋と部屋とを仕切る扉があり、せいぜいその向こうで何かをしているのだろうが……

「……なにしてんだろ」

 正直、覗いてやろうという気持ちが十回くらいあった。鶴の恩返し気分だ。だが、待っててと言われたわけだし……
 もし覗いたら、見ぃたぁなぁとか言いながら、この辺にある水晶で叩かれたり杖で刺されそうだ。これも中二グッズか。

 たくさんグッズが置いてあるおかげで、退屈はしなかった。仮にも、一人暮らしの女の子の部屋をあちこち見るのも、どうかとは思ったが。

 そんなこんなで、こうしてきちんと待っていた。
 そして待ち始めて十分以上が経った頃、ようやく準備が終わったらしく。バンッと勢いよく、扉が開かれる。

「待たせましたね!」

「ホントにな。ったく準備ってなにを……ふぁっ!?」

 扉が開き、高らかな、かつ偉そうな声が聞こえる。こんなにも待たせといて、なぜこうも偉そうなのか。
 一言文句を言ってやろうと、ルーアに視線を向けると……その格好に、思わず変な声を上げてしまう。

 それもそのはず……ルーアは先ほどまでの制服ではなく、なぜかぶかぶかの……ワンピースだろうか……を着ていたのだ。

「お前……なん、その……えっ?」

 あまりに珍妙な光景に、言葉が出ない。その様子を見て、ルーアはなぜか得意気だ。

「ふふん、驚いてますね? まあ確かに、今の私にはちょっぴり大きなサイズで……うっかりポロリしちゃいそうですもんね? ふふふ……」

「そこじゃねえよ! いやそこもだけど……そこも含めてだよ! だいたいポロリとか十年前すらあんま聞かねえぞ!」

 ポロリなど、十年前ですらあまり聞くことのなかった単語を使っているルーアは置いておいて、改めてその格好を見る。
 本人はちょっと……と言ったが、どう見てもぶかぶかだ。

 体格的にも、中学生(下手をしたら小学生)が、成人女性の服を着ているようにしか見えない。
 そのサイズの合ってなささから、服を着ている、と言っていいのか困ったところではあるが。

「まさか準備って……それか?」

 これだけ時間をかけて、ぶかぶかの服を着てくるのが準備だというのか。
 だとしたら、その意図が掴めないのだが……

「そうです! この方が、変化がわかりやすいかなと思いまして」

「変化ぁ?」

 なぜこんなにも、見えてしまいそうなはしたない格好で、堂々としているのか。達志にとってはもはやそっちの方が不思議になりつつある。
 羞恥心とかないのだろうか。

 そんな疑わしい視線を向けていると……

「む、なんですかその目は。ははーん、さては私のこの、ナイスなボディが見えそうで見たくて仕方がないとか? タツもエッチですねえ」

 なんて言い始めた。
 やらしーですねえ、なんて言葉を続けながら、眉を下げ、なんとも腹の立つ表情で見つめてくるのだ。

 準備だなんだと言っておきながら、もしかしてからかうために着てきただけではないのか。
 殴りたくなるような表情な上に、達志にとっては聞き捨てならない言葉だ。

 だから、それに応えるために……

「……はっ」

 思いっきり鼻で笑ってやった。それを受けたルーアは動きを止め……カタカタ震え始める。

「な、なあ! い、今鼻でわら、笑いましたね!?」

「悪いな。俺、ガキには興味ないんだよ」

「タツと同じ高校生だし! しかも私がフラれたみたいな言い方やめてくれません!?」

 理不尽だー、と抗議するルーアだが、理不尽を訴えたいのはこっちだ。
 今日は別に、ルーアと漫才するために家に来たわけじゃないはずだが……

「ぬぬ……いいでしょう! ならば見せてあげましょう、私の進化した姿を!
 このサキュバスの力で、タツなんか思わず見惚れて襲いたくなっちゃうくらいの、ダイナマイトバディに変体してやりますよ!」

 一人燃え上っているルーア。
 趣旨が変わってきている気もするが、今ルーア着ているぶかぶかの服に、今の台詞を加えると、つまりこういうことだろう。

 サキュバスは、自身の体を変化させることができる。

 達志も、いろいろ書物を読み漁ったことでその辺りの予想はつく。
 要は、ルーアのロリッ子体型がボンキュボンになる……ということだろう。

 だから、体が大きくなっても大丈夫なように、今ぶかぶかな服を着ているのだろう。
 今も大丈夫な服を着てきてほしかった。伸縮自在な服とかないのだろうか。

「ふふん、では……とくとみるがいい!」

 燃え上がったルーアのテンションが、最高潮に達した。不敵な笑みを浮かべている。
 直後、その体が淡い桃色の光に包まれ……達志に見えるのは、ルーアのシルエットだけになる。眩しすぎて目を開けられないほどではない。

 そして、シルエットは……体が、一回り大きくなっていく。さらには手足が、体の大きさに合ったサイズへと、伸びていく。
 こういう表現が正しいかはわからないが、魔法少女ものの、アニメの変身パンクを見ているようだ。

 実際の時間は、そんなに経ってはいない。光が徐々におさまっていくのは、変体が終わった合図だとわかった。
 ルーアを包んでいた光が完全に消え、そこから姿を現したルーアは……
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