82 / 184
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
第81話 私のこと忘れちゃいませんかい
しおりを挟む「そういえば最近、魔物をよく見ますね」
部活トーキングの中で、ポツリとリミが口にする。以前、テニス部に魔物が現れたことを、思い出しているのだろう。
魔物を初めて目撃した達志としては、あまりわからないが……最近魔物が現れる頻度が、増しているらしい。
それが聞こえたルーアは、なぜかドヤ顔になる。ふっふっふ……と口元に笑みを浮かべて。
「確かにそうですね。しかし、我が魔法にかかれば魔物の一匹や二匹へのへのかっぱっぱ……! 現に、以前部活動中に現れた魔物は、我等部員一同で袋だたき!
その後おいしくいただきました!」
「お前一人の魔法だけでも充分すぎる気がするんだけど。あとやっぱ食うんだ」
ルーアの火属性爆発魔法だけでもオーバーキルだろうに。そこへ、部員一同で袋だたきとは……もはや魔物が不憫だ。
そして魔物を食べるスタイルは、共通らしい。
魔物が現れて、普通ならば怯えるところだが……彼女たちは、食料が迷い込んできた、程度の認識らしい。
末恐ろしいことだ。
「ところで、今の話の流れとは関係のない話をしていいですか?」
「おう、どうした」
「私の体のこと、どう思ってますか?」
それは、唐突だった。
謎の発言。突然の理解不能な言葉に、達志は、いや他のみんなも困惑の表情だ。
過ごして数日が経つが、ルーアのこうした『いきなり発言』は珍しくない。むしろ今回、断りを入れたのでマシだ。
中二病だし仕方ないか、と謎の納得をしていた部分もあるが……それを差し引いても、これは意図のわからない質問だ。
「なに突然。新手の逆セクハラ?」
「ち、違いますよ! なんですか、この、変態!」
顔を真っ赤にして抗議するルーアだが、抗議したいのはこっちだ。この変態野郎。
セクハラ発言をされて困っているのはこっちだというのに、理不尽すぎる。
ルーアの基準がよくわからない。
「まったく……こほん。あのですね、タツは私がサキュバスだってこと、忘れてるんじゃありませんか?」
「……」
本題に入ったルーアの言葉を、達志はただただ黙って聞いていた。
これは、話を黙って聞くという意味の沈黙ではなく……
「え、ルーアってサキュバスだっけ?」
言っている意味がわからない、という意味の沈黙だ。
「案の定の反応! いや、せめて覚えてるって取り繕わないだけになおひどい!」
返ってきた達志の言葉に、ルーアは怒ってみせる。ぷんぷんだ。ぷりぷりだ。ぷりぷりロリだ。
そこで、思い返す。
言われてみれば、初登場……自己紹介された時に、そのようなことを言っていた。気がしないでもないが……
正直今の今まですっかり忘れていた。
ごめんという気持ちが湧かないほどに、清々しく。
「むぅ……」
サキュバスといったらあれだろう、なんかえろい悪魔。その程度の知識はあるが、自分がそうだと言うルーアを、達志は信じていない。
だってそんな素振り全く見せなかったし、このロリボディでそんなこと言われても。
まあ、それはそれで需要あるのかもしれないが。
「まったくタツ! 人の人種を忘れるなんて何事……」
「え、ルーアってサキュバスでしたっけ?」
「え、ルアちんってサキュバスだっけ?」
「ぬがぁあああ!」
追い討ちをかけるかのようなクラスメイトからの言葉。知り合って数日の達志はともかく、クラスメイトにまで忘れられているとは……
「おこなの、ルーア?」
「そりゃあそうですよ! 一体私をなんだと思ってるんですか!」
頭を押さえ、髪を掻きむしっている。おいおい、そんなに激しくすると髪が抜けてしまうぞ。ただでさえ属性盛り盛りなのに、プラスにハゲの属性まで付けてどうするんだ。
ルーアの叫びを聞いた、達志、リミ、ヘラクレスの見解は……
「「「頭の悪いロリっ子中二娘」」」
「ぬぁあああ! なんなんですか、三人で示し合わせたんですか!」
見事にハモった三人の見解に、ルーアの興奮は収まらない。自分が今までそのように見られていた事実に、ルーアは床に膝をつき、うなだれる。
「な、なんてこと……みんなには私が『頭のいい謎のミステリアス美少女サキュバス』として認識されていると思ったのに……!」
どうやら本気でショックだったようだ。そして、そんな夢みたいなことを思っていたとは。
その小さな体がさらに小さくなってしまった姿を見て、達志はルーアの肩を叩く。
慰めの言葉でもくれるのかと、期待するルーア。
「そんなん認識してる奴は一人もいねえよ。そもそも謎とミステリアスの意味が重複してる時点で、頭悪いじゃねえか」
「そんな……!」
追い打ちをかけた。追い打ちに次ぐ追い打ちにより、もうルーアは涙目だ。
ちなみに四つん這いになっているため、後ろにいる男子たがスカートの中を見ようとしている。
それを教えてやるほど、達志は優しくない。
ルーアが突然騒ぎ出したので、クラス中の視線はルーア、そしてその輪の中にいる達志たちにも注がれている。
「なあルーア、みんな見てるしもう少し落ち着いて……」
「落ち着け!? 私の個性の一つを知らないと言われたんですよ!?」
どうにも聞く耳を持ってくれない。
正直ただの人間である達志にしてみればどうでもいいことなのだが。自分の個性とも言えるものを、知らないと言われて……ルーアにはなにかしらのダメージがあったのだろう。
「おいどうした」
「めんどいのが来ちゃった」
騒ぎを聞き付け、現れるマルクス。堅物だけに面倒そうであるが、それがまた口に出てしまっていた。
それを聞いてマルクスは、異論を唱えようと口を開く。
「マルー! マルは私のことわかってくれますよね!?」
「うおう!?」
だがそれは、飛びかかるルーアにより防がれる。いくらロリボディとはいえ、油断していたところにいきなりタックルされては、たまらない。
10
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)
IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。
世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。
不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。
そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。
諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる……
人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。
夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ?
絶望に、立ち向かえ。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキルガチャで異世界を冒険しよう
つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。
それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。
しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。
お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。
そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。
少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家の猫がポーションとってきた。
熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。
ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。
瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。
始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる