目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第二章 異世界っぽい世界で学校生活

第79話 めちゃくちゃ濃い一日

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 結論からいうと、魔物はマズくはなかった。むしろ美味しかった。食べてしまった。

 丸焼きの方が、素材の旨味がそのまま出るんだとかなんとか言っていた。しかし達志にとって、そんなのはどうでもよかった。
 むしろ聞きたくない情報を、次々聞かされた。

 食べる際、アレが魔物じゃないと必死に考えることで、達志はなんとか意識を保っていた。
 だが、意識を魔物から別のところにそらしても、アレを食べたという事実は変わらない。

 マズくなかった。むしろ美味しかった。
 ……が、アレを食べたこで、なにか大切なものを失ってしまったような気がする。

「ただいまー」

 部活見学に行ったはずが、副部長と試合。最中に紛れ込んだ魔物を撃退し、それを食して今、自宅に帰ってきたのだ。
 今日学校から起こった出来事を通して、どっと疲れてしまった。

「おかえり! ……あぁ、なんて素敵な響きなのかしら」

 玄関で靴を脱いでいると、達志に駆け寄って来る足音。母みなえだ。
 エプロンをつけていることから、なにか作っていたのだろうか。正直、あまり腹は減ってないが。

 みなえは達志を出迎え、なにかに感激しているようだった。

「どしたの母さん」

「あぁ、ごめんね。いや、ね……こうして達志と、ただいまおかえりのやり取りができるのが、嬉しくて」

 感激しているみなえに疑問をぶつけた達志だが、それは野暮だったと後悔した。
 達志にとってはつい最近のことでも、みなえは十年間、息子と話すことができなかったのだ。
 当然、おかえりやただいまのやり取りなんかも、できるはずもない。

 だからこうして、息子と、達志と、何気ない会話ができるのが、嬉しいのだ。

「……これからは、毎日言ってよ。俺も、毎日言うから」

 恥ずかしいよりも、嬉しい気持ちでいっぱいだ。
 何気ないやり取りで、母さんが喜んでくれるなら……毎日何気ないやり取りを続けていこうと、達志は決意する。

 それが、自分も嬉しいから。

「えぇ。……あら、リミちゃんは一緒じゃないの?」

 なんだか恥ずかしいことを言ってるなと、顔が熱くなってくる。しかし、後ろを覗き込んでくるみなえの質問に、達志は顔の熱を冷ます。

 みなえの言うように、リミは一緒にはいない。

「あぁ。なんか、調理部の先輩に魔物の新しいレシピを聞きに行った」

「へぇー、勉強ねっし……魔物? レシピ?」

 話も程々に、リビングへと向かうと、そこにはいい匂いが充満していた。
 やはりなにか作っていたのだろう、なんともおいしそうな匂いだ。

 とはいえ、今から作るなんて。すぐ食べるわけでもないのに、冷めてしまっては味が落ちるし、少し気合いが入り過ぎでは?
 そう、思ったが……

「せっかくの達志の復学祝いなんだもの、腕によりをかけないと。
 それに今作ってるのは、時間が経っても冷めにくい料理で、むしろ時間が経つほど美味しくなるのよ」

 とのことらしい。なんだか不思議な料理に思えるが、達志にはよくわからない。

「復学祝い、か」

「えぇ。どう? 友達できた? ……って、まだ一日目だもんね」

「……そうか、まだ一日目なのか……」

 できる限り頭から離していたが、今日は、復学初日なのだ。
 大きく変わった世界の学校に、通い始めた、その初日。

 幼なじみがクラスの副担任になってて、個性的すぎるクラスメイトに囲まれて、いろんな魔法を見て、変なトサカがテロを仕掛けてきて、部活見学に行って、試合して、魔物を目撃して、食べて……

「……いやいや、今日が特別なだけだろ、うん」

 濃すぎる一日だったが、今日が特別なだけだったのだろう。そう信じたい。でないと身が持たない。
 まあ、いい土産話になったと考えよう。

 母も、いろいろ話を聞きたそうだ。ひとまず、先ほどの、友達ついてに答えるとしよう。

「友達……って答えるには、まだお互いのことを知らなさすぎるけど。いろいろ話す奴なら、できたよ」

「まあ、そうなの? どんな子?」

 息子の友達(仮)に、母は興味津々だ。どんな子か……答えるのは難しい。
 なにせ、一人一人が個性的すぎるのだ。とりあえず、名前だけでも答えておこう。

「一番話しかけてくれるのは……ヘラクラス、って奴」

「あら、カッコイイ名前ね。カブトムシのお友達?」

 ……当然、こうなる。こうなるよな。ヘラクラスと聞いて連想するのはカブトムシだ。
 いったい誰が、ヘラクラスからスライムを連想するだろうか。

「他には……ちょいちょい突っ掛かってくる、マルちゃんかな」

「あらあら、ラーメンでも作りそうな名前ね。女の子?」

 ……名前というか、あだ名(本人は認めていない)を言ってしまった。
 そりゃこのあだ名なら、女の子と思ってしまっても無理はないだろう。

「ま、他にも……」

 他にも、今日話したクラスメイトのことや、濃かった一日の出来事を思い出し……それを語る。
 騒がしくも、楽しかった一日を。

 それはリミが帰ってきて、セニリアとの四人で晩御飯を食べている間も尽きないほど、話題は豊富だった。
 達志の学校での出来事による話で、食卓は終始盛り上がった。
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