目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第二章 異世界っぽい世界で学校生活

第70話 部活動をしよう

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「タツシ様、そろそろ戻りませんか?」

 会話が一段落した頃、猫を抱いたリミが寄ってくる。

「ん、あぁそうだな」

 ウサギの獣人少女が猫を抱いているシーンというのは、なかなかに微笑ましい。
 獣大好きなケモナーなら、泣いて歓喜する光景ではないだろうか。

 ……あ、猫逃げた。悲しそうなリミ。

 リミに言われて時計を見ると、そろそろ六時限目の授業が始まるらしい。どうやら、テロがあっても授業はやるらしい。ホントたくましいな、ここの人たちは。
 そして昼休みから思ったほど時間が経っていないことに、びっくりだ。

「それから授業が終わって放課後になったら、部活見学に行きませんか?」

「部活? ……いいかもね!」

 保健室を後にして、教室に戻る途中……放課後の約束を取り付けるリミ。
 達志としても、なにかしらやりたいとは思っていた。それに、単純な話、この学校でどんな部活動が行われているのか気になる。

「リミは、なんか部活やってんの?」

「はい! でも、それは後のお楽しみです♪」

 秘密とは残念だ。しかし口元に指を当て、ウインクする少女の姿はかわいいので許そう。
 あと隣で、マルクスが悶絶している。

 どうせ放課後にはわかることだ。楽しみにしておこう。

 ――――――


 キーンコーン……


「はぁー、終わったぁー」

 六時限目の授業が終わり、どこからともなく声が漏れる。
 結局テロ後とはいっても普通通りの授業で、しかも誰もが普通に授業を受けていた。本当にたくましいものだ。

 ……で、ホームルームも終わり。それぞれ部活に行く者、そそくさと帰宅する者、友達とおしゃべりしている者などがいる中で……

「ではタツシ様! 部活見学行きましょうか!」

 いの一番に、リミは達志の所へ。その目は、なぜだか輝いているように見える。

「お、おう……ってか、なんで俺よりリミの方がわくわくして見えるの?」

「えっ!? いやいや別に、タツシ様も一緒の部活に入らないかななんて思ってないですし……」

 身を乗り出して迫るリミに、達志は苦笑い。しかも、考えていることが駄々漏れであるので、さらに苦笑い。
 ……とはいえ、それも考えなかったわけではない。
 
 リミと同じ部活。今日でそれなりに話す相手ができたとはいえ、やはりリミは一線を越えている。
 それだけに、一番話しやすい相手と同じ部活というのは、達志としても安心なわけだが……

「じゃあそろそろ教えてくれないか。リミは、なんの部活に入ってるんだ?」

「はい、調理部です!」

 ……その気持ちは、一瞬にして冷めつつあった。

「……なん、だと」

 嘘偽りの一切が感じられない笑顔。冗談、というわけでもないだろう。
 リミが所属している部活……その名前に、達志は驚愕を隠せない。

「えっと……氷部?」

「やだなぁ、調理部ですよぉ」

 どうやら、聞き間違えというわけでもないらしい。母音が似てるからと、限りなく低い可能性に賭けたが、ダメだった。紛れもなく、調理部のようだ。
 調理部、調理部……うっそだろお前、と言いたい。

 なにせ、リミの料理の腕は、退院当日に味わったばかりだ。ただでさえ、母やセニリアの指導を受けて、あの時点であの腕なのに……その上調理部に入部しているなど、信じられない。
 言っちゃ悪いが、上達が見られない。さすがに言えないが。

「もしタツシ様が調理部に入ったらー、毎日私の料理を試食してもらったりなんかして……うへへ」

 まだ決まったわけではないのだが、達志が調理部に入ったときの妄想に突入したらしいリミ。
 頬を染め、うへへ……と笑っているが、達志はそれどころではない。

 毎日……その言葉を聞いた瞬間、全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。
 ……あれを毎日? 冗談じゃない。死んでしまう。

 リミのピンク色の妄想の中では、「美味しいよ」だの「さすリミ(さすがはリミの略)」だのと伝えてくれる、それはそれは凛々しい達志が登場している。
 しかし、実際の達志は少し震えてさえいる。
 もう、体が拒否反応を起こしてしまったらしい。

 達志としては、調理部に入る選択肢はこの時点で消えた。
 部活へ案内される前に教えてもらえて、よかった……今は、その幸運に感謝だ。

「と、とりあえずいろんな部活見てみようかな」

「そうですか……」

 これでなにかうまいこと言って、調理部に入部するのだけはやめよう。調理部だけは絶対入らない。
 それは心に固く決めた。

「って、そんなこと考えてたらフラグになりそうだからやめよう」

 そんなこんなで、部活見学のため教室をあとにする。ちなみにヘラクレスたちは、自分たちが所属している部活へと向かった。
 てっきりルーアなんかは、学校が終われば早々に帰宅して、家で変な呪文でも覚えてそうだと思っていたが、そんなことはなかった。

 それぞれがどの部活に所属しているかは、聞いていない。見学に行った時のお楽しみだという。
 別に、全部が全部の部活を回るつもりではないのだから、全員に会うとは限らないのだが……

「案内してくれるのは嬉しいけど、部活はいいのか?」

「はい、今日は事前に許可は取っていますので。
 タツシ様は、どの部活に興味があるんですか?」

 隣に駆け寄って来るリミ。彼女の部活仲間は、リミの料理をどう考えているのだろうか。

 さて、興味のある部活……うーん、と考える。
 どんな部活があるかわからない。とはいえ、基本は変わらないだろう。魔法ありきの世界になっても、そうそう変な部活は増えない……と思う。

「そうだなぁ……運動系か文化系でいったら、運動系かな。それに、ものすげー個人的な意見だけど、運動系ならリハビリにもうってつけだし」

 運動系か、文化系。この二種類であれば、達志個人の好みとしては運動系だ。
 実際、眠ってしまう前の達志は、高校ではテニス部に入っていたのだ。

 なので、今のところの第一候補はそれだ。

 さらに別の理由として、運動系であれば、目覚めてからの達志の体の調子を戻す、リハビリにもなる。
 今でこそ、日常生活に支障がないレベルに回復してはいるが、それでも以前通り、とはいかない。

 トサカゴリラの一件でも、それなりに動き回れはしたが、やはり体力の低下は否めない。運動系の部活ならば体力の上昇も見込めるし、それはリハビリに繋がる。
 そのためできるなら、運動系の部活がいいと思っている。
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