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第二章 異世界っぽい世界で学校生活
第49話 力を封印してる系ロリ
しおりを挟む大規模の爆発は、彫像を粉々に焼き払うだけに飽き足らず、威力を死なせないまま爆風を広げていく。
それは当然、離れた所にいた達志たちにも襲い掛かってくる。
「うぉおおお!?」
このままじゃあの漆黒の炎に巻き込まれる。そう思った瞬間、リミが氷の防壁を展開。
直撃は避けるものの熱気までは防げず。しかも炎の威力が高すぎるのか、徐々に氷の防壁にひびが入っていき、溶けてもいる。
「ぬぅうううう……せいや!」
だがリミは諦めない。
爆発の中心点を睨みつける。どうやら、爆発には起点となるところがあるようだが、今はそんな分析をしている時ではない。
その箇所を氷のドームで、幾重にも覆う。おかげで爆発の威力は抑えられるが、代わりにリミにかかる負担は桁違いだ。
氷のドームが壊れないよう力を込め、爆発の力が死ぬまで待つ。
数秒か、それとも数分か。どれほどか忘れてしまう時間が過ぎ、やっとのことで漆黒の炎はおさまる。
リミがほっと一息ついたとき、周りから歓声が上がる。
「お、ぉぉ……死ぬかと思った……サンキューリミ」
腰を抜かした達志は、それでもリミにお礼を告げる。
それだけでリミは、他の誰にお礼を言われるより嬉しくなるのだ。
さて……突然の魔法の、段違いの規模に呆けている場合ではない。いろいろと言いたいことはある。
だがまずは、この事態を引き起こした張本人を、問い詰めるのが先だ。
と、いうことで……
「ぐえっ!」
「何やってんのお前ぇ!?」
逃げようとしていたルーアの首根っこを引っ張り、肩を掴んで逃がさない。当のルーアはというと、気まずそうに視線をそらしていたが……
「た、タツが言ったんですよ!? 私の魔法を見たいと!」
「言ってねえよ! 確かにそんな空気は出してたかもしれないけど、見たいとは断固として言ってねえよ!
それに……思わねえじゃん! ルーアの魔法にこんな威力があるとか!」
ルーアの魔法の威力について、疑いを持っていたのは確かだ。
だがこんな威力があるなど、誤算もいいところだ。
クラスメイトがざわついていたり、リミや由香が慌てていた理由がわかった。それに、魔法のためのこの建物内であんなことになるとは……
「っていうか、なにその眼帯! 中二設定キャラが付けてる眼帯って言ったら、単なるファッションってのがお決まりだろ!? なにマジで力封印しちゃってんの!? 眼帯で力封印とか、お前死神かよ!」
「知りませんよそんなこと! タツが勝手に思っていただけでしょう! しかもなにをわけのわからないことを!」
あわや大惨事の爆発。それを防ぎ、みんなから賛美を浴びせられるリミ。
その後ろで、達志とルーアはまた別の騒ぎを起こしていた。「ぐえー」と女の子とは思えないルーアの声が響く。
その様子を見ながら、ヘラクレスと由香は苦笑いを浮かべつつ、ため息を漏らすのであった。
ルーアが放ったのは、火属性の魔法だ。だがそれは、火というのは生易しい表現に思えるほどに、巨大な規模の爆発。
それを行った張本人は、冷たい床の上で正座させられていた。
「すみません、反省してます……」
反省の印として自発的に……いうよりは、強制に近い正座。
膨れた頬は、見ただけでこっちが痛くなる。封印していた左目は当然眼帯で塞がっており、小柄な体はますます小さくなっている。
眼前に立つ人物を見上げ、ルーアは震えていた。
「こんなところであんな大規模な魔法を使うやつがあるかバカタレ」
額に青筋を立てているのは、担任であるケンタウロスのムヴェルだ。
基本生徒の自主性を重んじるのだが、今回は場合が場合だ。
「すげーな、壁や床が焦げてる」
「この建物、魔法の練習によく使われるから、大抵のことじゃ傷すらつかないようになってるんだけどね……」
爆発があった場所を見て感想を漏らすのは、達志だ。
それに答えるように、由香が話す。
つい先程の光景を思い返すが……見た目だけでなく、実際に威力がスゴかったのだ。
「しかし、単なる中二ロリじゃなく、ホントに力を封印してる系ロリだったとは」
「たっくん昔からラノベとかよく読んでたもんね」
言って、はっとした表情で由香が口を塞ぐ。が、運よく周りには誰もいなかった。ついつい、気が緩んであだ名で呼んでしまった。
しっかりしろよ、と達志はジト目を向ける。
「俺よりそっちのほうが気を付けたほうがいいんじゃないですかね? き、さ、ら、ぎ、せ、ん、せ、い」
「うぅ……」
やはり十歳年を取ろうと、教師になっても、由香は由香だ。
「うぁあ……せっかく作ったタツシ様型彫像がぁ…… 」
由香をからかうのもそこそこに……視線を巡らせる。
そこには、ある意味今回の爆発の、一番の被害者であるリミが、うなだれていた。
達志としても、自分と同じ姿の彫像を壊されたのは、複雑な気分だ。
「おーいリミ、あんま落ち込んでんなって」
「そうそう、本物が近くにいるんだしよ」
「うおっ、ヘラ!」
どう声をかけていいかわからなかったが、とにかく元気出せと声をかける。すると直後、頭上から別の声が。
視線を向けると、達志の頭にスライムが乗っているではないか。
「なに、お前そこ気に入っちゃったの?」
「気に入っちゃったの」
「ふふ、仲良しだね二人とも」
どうやら達志の頭が気に入ったらしいヘラクレス。達志の問いに、オウム返ししつつちょこんと乗っかっている。
思いならともかく、そこまでの体重は感じられない。。なので、そのままにしておく。
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