目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第二章 異世界っぽい世界で学校生活

第45話 待ちに待った魔法の授業

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 ……無事(?)歓迎会が終わり、パーティーの余韻を残しつつも、クラスはいつもの風景に戻っていく。

 このまま次の授業が座学……であったならば、おそらくみんなの集中力はもう切れていただろう。だがそうはならない。
 なぜなら次の授業科目は……

「ふふふ……次の授業、私の力を発揮する絶好の機会! タツよ、とくとその目に焼き付けるがいい!」

「お、おう……」

 教室から移動している最中、達志の隣を歩く眼帯少女、ロリっ子サキュバスのルーアが、その眼帯を押さえながら高笑いしている。
 妙にテンションが高い気がするが、それはこの先行く場所、そして次の授業内容が影響している。

「で、ルーアのテンションが高い理由……なんてったっけ、次の授業」

「ふふ、それはですね。ズバリ、まほ……」

「魔法技術の学習、及び実技ですよ、タツシ様」

 さっきちらと聞いたのだが、歓迎会のインパクトが強すぎて薄れてしまった。
 なので次の授業内容を聞くと、妙にもったいぶるルーアの代わりに答えるのはリミだ。

 リミは達志の隣、ルーアとは反対側に並んで歩いている。台詞を取られて不服そうなルーアだ。

「魔法……魔法かぁ」

 魔法……その単語に、達志もテンションが上がっていくのを感じる。

 街中でありふれた光景になるほど、魔法は日常で使われている。だが、こうして魔法の授業、というのは、いやでもテンションが上がってしまう。
 いったい、どんな魔法があるのだろう。

 リミやセニリアが魔法を使えるというのは、本人の口から聞いたが、実際に見せてもらったことはまだない。
 ……まあ先ほど、意外な形でリミの魔法を見るハメになったが。

「リミ、今私がタツと話していたんですが。割り込みとはお行儀が悪いですね」

「いえいえルーアさん、私はスムーズに会話が進むように変わっただけですので」

 密かに目を輝かせる達志の両隣で、なぜか二人の少女が火花を散らせている。
 口出ししては巻き込まれかねないので、なにも言わない。触らぬ神に祟りなしだ。

「おいおい、モテモテじゃねえかタツ」

「いや、そんなんじゃないと思うけど」

 そんな達志の後ろから、声がかかる。振り向くと、スライムであるヘラクレスがいた。足がないためか、その体を跳ねさせて歩いて(?)いる。
 その際、足音ならぬ飛音が聞こえる。

「リミたんもだが、ルアちんもタツのこと、えらく気に入ったみたいだな」

「リミはともかく、ルーアはさっきのやり取りの中で、俺が気に入られる要因が見当たらないんだけど」

 互いに言い合っている二人は、達志とヘラクレスの会話にも、達志が歩く速度を遅めたことにも気付いていない。
 達志の頭にヘラクレスが飛び乗る。頭にスライムを乗せているという、奇妙な光景が完成する。

「まああんな可愛い子に好かれるのは、いいことじゃねえか。男冥利に尽きるってもんだ」

「それはまあ、そうだけど。ま、リミにも仲良い子が出来るのはいいことだよな」

 リミは今まで、クラスの誰ともあまり関わってこなかったという。そんなリミが目の前で、クラスメートと会話している。
 それが達志にとっては、なんだかとても微笑ましいものに見えた。

 それはそれとして、スライムであるヘラクレスも、リミやルーアはかわいいと感じるようだ。
 恋愛対象的な意味で、スライムだろうが人間だろうが、関係ないということだろうか?

「……ところでヘラ、次の授業って具体的になにやんの? リミ曰く学習と実技らしいけど。
 学習だけなら座学で済むけど、わさわざ移動してることと、実技って響きから察すると……」

「文字通りってったらそうだけど、主に魔法を使ってレベルをあげましょうってことだな」

「実際に使って、アンド見て覚えろってこと?」

「そゆこと」

 つまり、次の授業では生徒たちが実際に魔法を使うということなのだ。
 なるほどそれなら、ルーアのテンションがああまで高かった理由も、わかるというものだ。

 力を発揮する、とも言っていたということは。

「じゃあルーアも魔法使えるってことか」

 異世界から来たとはいえ、みんながみんな魔法を使えるわけではない。魔力貯蔵かある人とない人がいると、セニリアは言っていた。
 どうやらルーアは、使える部類のようだ。

 逆に、元々この世界にいた人間は魔法が使えるはずもないが……どうやら"魔樹"の影響で、魔法を使うことが可能になった人間もいるらしい。

「けどさ、魔法が使えない人にとってはこの授業、退屈なんじゃないか?」

 体内に魔力を貯蔵できない人は、魔法を使えない。
 そういう人は、この授業はつまらないのではないか。それどころか、魔法が使えないことへのコンプレックスを膨らませてしまうのではないか。

 そんな心配が、湧き上がってくる。

「タツは優しいねぇ。けど、心配いらねぇ。
 元々魔法が使えない人間も、魔法が使える人間の側にいることで、魔法が使えるようになることもあるらしい」

「そうなのか?」

「詳しいことは知らないけど、魔力のある人間の近くにいることで、体内の魔力が活性化されてなんとかってさ」

 あまり具体的な回答はもらえなかったが、達志が心配していることは心配いらない……ということで、いいらしい。
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