目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星

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第一章 異世界召喚かとテンションが上がった時期が俺にもありました

第37話 あぁ懐かしの我が母校

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「……でけえ」

 周囲の建物なんかは変わったが、道自体はそんなに変わっていない。
 通学路を、達志はリミとともに、歩いていく。
 なにか事件が起きるでもなく、二十分弱を歩いた

 そして、ついに学校についた。
 目の前に広がる光景に、思わず達志は息を呑む。制服に身を包んだ達志の目の先にある建物は、間違いなく以前達志が通っていた学校。

 たどり着いた校門前で、達志は立ち止まっていた。それもそのはず、達志の知る校舎とは、大きさが全然違うのだ。
 以前の大きさの、倍は以上あるのではないだろうか。

 それに、通学路を通る生徒の数も以前より増えているように感じる。その中には人間以外の生き物も当然ながらおり、みんながここに通っているのだ。
 学校が大きくなった分、受け入れる生徒数も増えた、ということだろうか。

「ここ、ホントに俺の通ってた学校だよな……?」

「はい、そうですよ?」

 達志やリミが着ている制服と同じものを着た生徒たちが、続々と校門の向こう側へ。
 表に書いてある学校名も達志の知るもので、ここが達志の通っていた学校であることを、疑う余地はない。

「まあ、俺ん家がああなってた時点で、不思議はないのか……」

 達志自身、自宅があんな変貌を遂げていたからこそ、この程度の驚きで済んでいるのだ。
 自宅でさえああなのだから、他にも変わっている場所は多いだろう。

 それも、複数の人数が通う学校なら。

「うし……行くか」

 今日からここに通うのだと、再認識。軽く深呼吸をして、一歩先に待つリミと共に、校門を潜る。

「……なんか、見られてない?」

 いざ決意を固めたはいいが……足を進める度、なんだか、視線を感じる。
 正確には、学校に近くなってきた辺りから感じてはいたのだが……学校につき、校門を潜ってからは、より多くの視線を感じる。

 人間や、獣人……亜人などの人たち。その視線に、達志は落ち着かなさを感じる。

「タツシ様のイケメンぶりに、みな見惚れているのでは?」

「イケメンとかまだ使われてるんだ。……そうなら嬉しくないこともないけど、どうもそういう感じじゃない」

 十年経っても死語化していない単語を聞き、嘆息。もし本当に、イケメンだから見られているのであれば、悪い気はしない。
 だが達志自身、イケメンでないことなどわかっている。

 仮にそうだとしても、周りからの視線は、「あの人イケメンよ!」といった類いのものではない。

「十年ぶりに登校する人間が珍しくて……ってわけじゃないだろうし」

 達志が……というか、十年ぶりに登校する生徒がいることなど、教師以外は誰も知らないはずだ。
 故にこの視線は、もっと別のことのはずだ。

「気のせいなのでは? タツシ様、久しぶりの大勢の人を前に緊張なさっているとか」

 あくまで達志の気のせいではないか、と告げるリミは、耳にかかった髪の毛を、かきあげる。
 すると、その仕草を見た周りから「ほぅ……」と吐息が漏れるではないか。

 そこで、ようやく気づく。この視線は達志ではなく……リミに向けられているものだと。
 視線を集めているのはリミで、隣にいた達志が、自分に視線が集まっていると、錯覚していただけだ。
 つまり、リミの言う通り、気のせいだったというわけだ。

 これだけの注目を集めるなど、リミはこの学校ではアイドル的な存在なのだろうか? 確かに外見は、ため息が漏れるほどの美少女だ。
 もしかしたら、向けられる視線の中には、隣にいる達志に対する嫉妬のようなものも、含まれているかもしれない。

「知らぬが仏ってやつだな」

 視線の意味に気づいた瞬間、居心地が悪くなる。自分に向けられる嫉妬の視線など、百害あって一理なしだ。

「どうしました?」

 当のリミは、視線の意味どころか、向けられる視線にすら気づいていない。これでは本人に直接言うわけにもいかないだろう。
 視線を集めているのはキミだよ~、なんて。

「なんでもないよ。行こう」

 とりあえず、早くこの視線から逃れたい。そのため足早に、玄関先へと向かう。
 ただし、達志がまず向かうのは職員室だ。復学するということで、ひとまずは職員室に行くよう言われている。

 前もって用意された上履きに履き替え、リミの案内で職員室に。学校内の構造も、やはり変わっており、広くなっている。

「ではタツシ様……名残惜しいですが、ここでお別れです。クラスが一緒になることを祈っています。
 ですが、たとえ違っても、終わったらタツシ様のクラスまで迎えに行きますから! 一緒に帰りましょうねれ」

「あ、うん」

 一緒のクラスになれるとは限らない。もちろん一緒のクラスになれれば言うことなしだが、そうでない場合でも、迎えに行くことを強く約束。
 達志にとっても、リミがいなくなってしまうこと、一緒のクラスになれないことは手痛い。

 とはいえ、これに関してはどうしようもないだろう。去っていくリミを見送り、達志は職員室へと入室する。

「失礼しまーす」

 ノックをして、返事を聞いてから扉を開けると、そこには、やはり達志の知らない空間が広がっていた。
 まず思ったのは、広っ、だ。学校に来てから度々思ったことではあるが。
 中にいた教員たちは入ってきた人物を見る。今度こそ達志自身視線を受け、少々緊張する。

 元々、大勢の視線を受けるのに不慣れな達志にとって、今の時間は居心地のいいものではない。その時間を打ち破るように、声が響いた。

「お、キミが勇界 達志くんだね?」

 達志を呼ぶその声の主は、奥から歩いてくる。学校に登校してきてから、初めて話すリミ以外の相手。それも教師。
 まずは挨拶だ。第一印象は、しっかりしなければ。

 目を閉じ、達志は軽く深呼吸。そして、まずは元気のいい挨拶を告げるために目を開けると……

「私がキミのクラスの副担任だよ」

「っ、なっ……ぁ……」

 達志は、固まった。
 なぜなら、達志の目の前に立つのは……うん、見間違いでは、ない。

 そこにいる人物は、達志にとってまったくの予想外であり、達志にとってとても身近な存在だった。

「如月 由香です、よろしく」

 ……教師になったという、幼なじみである女性。如月 由香が、笑顔を浮かべて立っていた。

「ゆ、ゆかむぐ!」

 予想外の人物の登場に驚き、名前を呼ぼうとするが、達志は両頬に手を添えられる。いや、添えられるどころの強さではなかった。
 むぎゅ、と手で頬を挟まれ、強制的に言葉を止められた。

「よ、ろ、し、く、ね」

 有無を言わさず、笑顔を向けてくる由香に、達志はただ黙って、頷くしかなかった。
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