転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は青春を謳歌する

ペピンタンパワー

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 ファミレスでの食事を終え、あいの勧めでゲームセンターへと向かう。
 ゲームセンターとは、中学の頃に鍵沼に誘われて、行ったことがあるが……金を入れて、クレーンゲームをしてぬいぐるみを取ったことがある。

 なんかのアニメの、不細工なマスコットのキャラクターだ。しかも、わりとでかかった。
 自分でも、なんであんなものを取ってしまったのか、謎だ。多分、転生してから一番の謎だ。

「真尾くんは、ゲームセンターに行ったことはあるんですか? 私は、あいちゃんに誘われて何度か……」

「俺も、鍵沼に誘われて何度か行ったな。クレーンゲームとやらをやった」

「なるほど。難しいですよねクレーンゲーム、私取れたことがなくて」

「俺は、こいつを取ったぞ」

 ゲームセンターのことで、さなとの会話が盛り上がる。
 ふむ、こういった何気ないことでも、会話につなげることができるのか。よく勉強しておこう。

 俺はポケットからスマホを取り出す。
 なぜだかあのぬいぐるみを取った俺は、なぜだかあのぬいぐるみをカメラ撮影し、保存していた。

 まさか、こんな形であの写真が日の目を見ることがあろうとは。

「え、取ったんですか! すごい!」

「あぁ、これだ」

 写真フォルダから、俺は目当ての写真を探す。
 この、不細工なマスコット。さなは知っているだろうか。

「! こ、これは……」

「あぁ、俺も驚いた。まさか、こんなにもぶさ……」

「か、かわいいぃいいい!」

 写真を……というか写真の中のマスコットを見た瞬間、さなの目は輝いた。
 そして、思いもよらなかった言葉を叫んだ。

「わ、わぁー! この子、ペピンタンですよね! かわいい!」

「あぁ、とてもかわいいだろう」

 さなの意見に、俺は全力で乗っかった。
 さながかわいいと言うのだ。今日からこいつは、かわいいものと認定させてもらおう。

 かわいいかわいいと喜ぶさな。なるほど、これがおまかわってやつか。
 それにしても、ペピンタン? すごい名前だな。

「知っているのか、さな」

「はい! 確か子供向けのアニメのキャラクターなんですけど、キャラクター自体は老若男女に浸透しているくらい有名ですよ」

 有名なのか……そう言えば、テレビのCMとかにやたらと登場していたな。

「この、鳥なのか犬なのか猫なのか、よくわからない絶妙なバランスがかわいいんですよねぇ」

 文字だけで受け取ると、さながなにを言っているのかまったくわからない。
 だが、そういうところもかわいい。

 ぱっと見、犬にも見えるが……鳥のような、猫のような。
 ただ、座っているのだけはわかった。ポーズが。

「なになに、どしたん?」

 俺たちの騒ぎを聞きつけてか、鍵沼が寄ってくる。
 そして、俺がさなに向けて見せていたスマホの画面を、覗き見た。

 そして、鍵沼は吹き出した。

「ぷっ、あははは! な、なつかしー! 真尾が初めて取った、ぶっさいくなぬいぐるみじゃいたたたた!」

 腹を抱えて笑う鍵沼の足を、俺は思い切り踏んづけた。
 こいつ、さながかわいいと言ったものを不細工扱いするとは、許せないな。

 見ろ、さながしゅんとしてしまった。

「そうですよね……ぶさいく、ですよね……」

「いや、そのものの感じ方は、人それぞれだ。今のは、鍵沼の感性が人とは違っておかしいだけ。さなはなにも間違っていない。
 そうだよな、あい」

「へっ? あ、あぁ、うん。そうそう、そうだよっ」

 鍵沼の口を塞ぎつつ、あいにも問いかける。俺の視線を受け、意味を受け取ってくれたのか、あいはうなずいた。
 しかし、目をそらしていた。

 あいのやつ。本当はあいもこのぬいぐるみ不細工だと思っているんじゃないか。
 まあ俺も、人のことは言えんが。

「なんていうか、キュート、だよね。うん!」

「あぁ、とてもキューティクルだ」

「?」

 とりあえずさなの機嫌が治ったので、俺はペピンタンとやらの写真を映したまま、さなにスマホを渡した。
 さなは、にこにこしながらスマホの画面を見ていた。

 むう……さなの、あんな笑顔を引き出すとは。おのれペピンタンめ。

「はぁ、すっごいかわいい……直接触ってみたい、もふもふしてみたい」

「なら、俺の家に来るか?」

 さながあまりにペピンタンを好きそうにしているものだから、つい提案してしまった。
 言った後に、気付く。こんなこと言ったら、さなが照れてしまうだろうと。

 だが……

「! いいんですか!?」

 俺の反応とは予想外に、さなの反応は前向きなものだった。
 さなからこうも詰め寄られるのは初めてで、少したじろいでしまう。

「あ、あぁ、もちろん」

「! 約束ですよ!」

 目の前で、さなが花が咲いたような、満面の笑顔を浮かべる。
 あっ、これまずい……浄化されそう……

 ……ともあれ、さながウチに来ることになってしまった。
 日時などは、また話すことになるだろう。それよりも、さなが自分から、こう言ってくれたことに驚きと感激だ。

 それは、ペピンタンの力か……
 なんか、今はペピンタンパワーでテンションが上がっているだけで、落ち着いたら「さっきのやっぱなし」って言われそうで、ちょっと怖いんだが。

「二人ともー、ついたよ」

 そんなこんななうちに、どうやらたどり着いたようだ。ゲームセンターに。
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