107 / 114
転生魔王は青春を謳歌する
これからの予定
しおりを挟むファミレスでの食事。
それぞれ、鍵沼はハンバーグステーキセット、あいはミートスパゲティ、俺はにぼしラーメン、そしてさなは魚の塩焼きを注文した。
注文した品が運ばれてくるまでの間、俺たちは話に花を咲かせた。
まあ、ほとんどが俺とさなに関してのものだったがな。付き合ってからの関係はどうだとか、普段どんなやり取りをしているのだとか、どこまでいったのだとか。
どこまで行った、とは質問の意味がよくわからなかったので、この間の水族館デート以来二人で出掛けていない、と返答をしておいた。
なぜかあいと鍵沼はため息を漏らし、さなに至っては顔が真っ赤だった。
そんなこんなで、待つこと数分……
「お、きたきた」
「……なんだこれは?」
いち早く反応した鍵沼が、振り返る。
それを確認して、俺も同じ方向に視線を向ける。
するとそこには、驚きの光景が広がっていた。
「き、機械が自動で……料理を持ってきた、だと?」
てっきり、店員が料理を運んでくるのだと、思っていた。
だがその認識は間違っていたことを、思い知らされた。
そこにいたのは、機械……しかも、ひとりでに移動している。
「おい、あれはなんだ?」
「なんだ、って言われても……あ、もしかして真尾、配膳ロボット見るの初めてか?」
「すごいですよね。ほら、背中……? に、料理を乗せて運んでくれるんです」
「この注文パネルで注文したテーブルに、ちゃんと持ってきてくれるみたいだよ。
なんて言ったっけ、ベル、ベラ……ベラなんとかって言ったっけ」
料理を乗せたトレーを乗せた、機械……ベラなんとかは、迷わず俺たちのテーブルへと向かってきた。
そしてテーブルの側で動きを止めると、顔のような位置にある画面に『料理をお取りください』と表示された。
とりあえず、言われたままにするか……
「す、すごいな……人間の科学は、ついにここまで……」
「そうだねー。タッチパネルで注文して、機械が料理を持ってきてくれる。
ソーシャルなディスタンス対策且つ人手不足対策なんだけど、逆に人があんまりいらなくなるのかもねぇ」
ゴクゴク、とコップに注いでいた水を飲みつつ、あいは言う。
……危なかった、普通に人間の科学がなんて言ってしまった。あいはあまり深く受け止めなかったが。
気をつけなければ。
それぞれが料理を取ると、ベラなんとかの上部にあったボタンを押す。すると、ベラなんとかは移動を開始する。
来た道を、戻っていく。おそらく、キッチンへ戻っていくのだ。
ファミレス一つで、こうも新たな発見があるとはな。
「んじゃ、さっそく食おうぜ」
「そうね」
それぞれ注文したものが違ったため、来る時間に差はあったものの、全員の料理が到着。
そんなわけで、手を合わせ、昼食にとりかかる。
……うん、うまいな。それに、だんらんにも最適の場だ。
他にも客はいるし、悪くはない場所だ。
「それで、これからどうするんだよ」
ハンバーグステーキを食しながら、鍵沼は聞いてくる。
これから、とは、このあとの予定のことだろう。
元々これは、ダブルデートのつもりだ。ただしあいと鍵沼には知らせずに。
なので、普通に遊ぶ形でいるわけだが……
今のところ、カラオケにしか行ってないからな。しかも途中で切り上げたし。
「じゃあ、ここはどうかな」
そう言って、あいが鞄からなにかを取り出す。
それは、紙……なにかの、チケットか?
「ゲームセンターの割引チケットなんだー。それに、ここボウリングもできるんだよー」
「お、いいじゃん」
「ボーリング……」
あいの提案は、ゲームセンターというものだ。
近くに、そういう店があった気がする。がやがやして、あまり好ましくは思っていなかったが……
普通のお出かけだと思っているあいは、なにか楽しめそうなものはないか、と用意してくれたのだろう。
しかし、ゲームセンターであいと鍵沼の仲は深まるのだろうか?
「さなはどう思う」
「はい、いいと思いますよ」
ふむ、さながいいのならばいいだろう。
そのゲームセンターとやら、行ってやろうではないか。
その後も、会話を続けながら、同時に食事も続けていく。
学校では、ほとんどいつも四人で食事を共にしている。だが、休日に四人で、というのはまた、新鮮だ。
……さなと二人のデートも楽しかったが、これも悪くはない。
「でさでさ、もう少しで夏休みじゃん。そしたら、みんなで遊園地とか、夏祭りとか行ったりしよーよ。
……一応、鍵沼も誘ってもいいよ」
「なんだと? お前こそ、ハブにしてやろうか」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ二人。仲がいいんだか悪いんだか。
夏休みか……そういえば、ホームルームでそんなことを言っていた気がする。
さなと付き合うことになった嬉しさから、あんまり聞いていなかった。
しかし、そうか……夏休み。学校が休みならば、毎日のようにさなと会うことも、できなくなる。
……今までであれば、そう考えていただろう。だが今は違う……恋人同士であれば、休みの日に会うことに、なんの問題もない。
学校に拘束されない分、さなと二人の時間を増やすこともできる……というわけか。
なんだろうな、それを意識したら、夏休みがすごく楽しみになってきたな。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる