転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は青春を謳歌する

応えたい気持ち

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「お、お話が、あります!」

「お、おう」

 足を止め、俺と向かい合う形になったさな。
 その目は、俺を睨んでいる……が、なにか覚悟を決めているようにも見える。
 意図的に睨みつけているというより、緊張のあまり睨んでいるように見える、か。

 なんだろうか。こういうシチュエーションは想定していなかったな。
 当のさなは、浅く何度も深呼吸を繰り返しているようだ。

「きょ、今日は、付き合ってくれてありがとうございます」

「ん? あぁ、なんてことはない。さなから誘ってくれたんだ、断る理由がない」

「っ、そ、それは……ま、真尾くんが、わ、私のこと……」

「あぁ、好きだからだ」

「っ……!」

 どうかしたのだろうか、改まって。
 俺はさなのことが好きだ。その気持ちは少しも揺らいじゃいないが……それを確認された。

 もしかしたら、もっと言葉にして表現したほうが良かったか? 足りなかったか!?
 だがあいは、ストレートすぎるとさなが持たない、とも言っていたしなぁ。

「えっ、と……
 真尾くんが私のことを、その、す、好いてくれることは、嬉しくて……
 で、でも、こんな、初めてで、どうしたらいいか、わからなくて……」

 自分に好意を向けられる……その経験が、さなは少ないのだろう。
 確か、中学は女子校だったという。
 そんな環境じゃ、異性と接する機会も限られる。

 そして、高校では……初日に、俺が公開告白をしたわけだ。
 それでは、さなに近寄る男も、本来の想定よりは遥かに減るだろう。

 よって、今回のように好意を向けられるのが初めて……と。

「それで、あの場ではその、断って……でも、真尾くんはずっと、私を好きだって、言ってくれてて……
 だから私、真尾くんに応えなきゃって……このままにしておくのは、良くないから」

 何度も言葉に詰まりながら、さなはなんとか言い切ったのかほっと一息。
 それから、彷徨わせていた視線を、再び俺に向ける。

 それは、決めつつあった覚悟を、決めた顔つきだった。

「真尾くん……」

「あぁ」

「その、結構待たせちゃいましたが……こんな私でよかったら、えっと……よ、よろしくお願いします!」

 覚悟は決めても緊張はするのだろう、赤らめた頬、潤んだ瞳、震える手……それらを隠すことなく、さなは言い、勢いよく頭を下げた。
 よろしくお願いしますと……そう、言った。

 ……その言葉の意味することは……

「あっ。こ、これじゃわからないですよね」

 はっと、顔を上げたさなはパニックになったように、慌てている。
 言葉が飛び飛びになり、うまく意味が伝わらなかったと、慌てているのだろう。

 だが、これで察せないほど、俺は馬鹿じゃない。

「さな」

「は、はいっ」

「気持ちは嬉しい。
 が、もし待たせて悪い、とか負い目を感じているのなら……」

 確かに、さなの返事は嬉しい。今も飛び上がってしまいたいほどだ。
 だが、それがさなの本心ならば、だ。

 さなの性格ならば、俺を待たせてしまったことへの負い目、好意を寄せてくれた相手へ応えるために、うなずいたという可能性もなくはない。
 もしそうであるなら、俺は……

「ち、違います!」

 しかし、さなは言う。
 それは違うのだと。

「私は……私なりに、考えて……みたんです。
 好きだって言われて、こうやって想われて……自分は、どうなんだろうって」

「……」

「驚きましたよ、まさか会った瞬間に、あんな……
 でも、驚いたけど……嫌では、なかった、です。
 それに、真尾くんと過ごしてきて……楽しいなって、思えたんです。だから……」

 自分なりに考えてみたと、さなは言う。
 好意を向けられるのが初めてだというさなにとって、それはなかなか難しい問題だったに違いない。

 しかし、実際に考えて……考えて、考えて。
 答えを、出してくれた。

「だから、私と……」

「さな、その先は俺に言われてくれ」

 顔を真っ赤にして、その先を言おうとするさなを……俺は、制止する。
 まさか止められるとは思っていなかったのだろう、さなはきょとんとした表情を浮かべているが……

 この先は、俺が言うべきだ。

「さな……俺は、お前が好きだ。
 だから、付き合ってくれ」

「っ……は、はい。
 よろしく、お願いします……」

 俺の視線を真っ直ぐに受け、さなは顔を真っ赤にしてうつむく。
 初対面のあのときは、さなの表情には驚きが多かった。
 しかし今は、その表情は羞恥に溢れている。

 その様子を見て、俺はさなに愛しさを覚えていた。
 これが、夢ではないか……と思いつつ。

「ま、真尾くん!?」

「……うん、現実だ」

 うつむくさなの頭に手を伸ばして、そっと触れる。
 その頭を撫でるように手を動かしていけば、伝わるのは人のぬくもり。
 これが、これは夢ではないことを教えてくれる。

 が……さなは、真っ赤な状態を維持したまま、なにか言おうとしているのか口をパクパク、させている。
 まるで金魚みたいだ。金魚より断然かわいいが。

「さな?」

「ああ、あああたま、たた……あたたたた……」

 だめだ、完全にテンパっている。
 が、指で頭を指しているので、なんとなくわかった。

 なので、手を離すと……さなは、胸を押さえて、息を吐いた。

「は、ぁ……もう」

「なるほど……照れていたのか?」

「! そういうこと、言っちゃだめです!」

 怒られてしまった。
 指摘してはだめなことだったか。
 ま、怒っていてもかわいいな、さなは。

 こうして、二度目のデート……さな発案の水族館デートで、俺たちは恋人同士として、付き合うことになった。
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