転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は青春を謳歌する

どうしたいんだろうか

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 それは、次の学校登校日でのこと……

「いやぁー、さらさちゃん、めっちゃかわいかったわ!」

「そう……」

 朝一番、登校した俺を見つけるや、すぐに駆け寄って話しかけてきた鍵沼。
 その興奮した様子は、言われなくてもなんのことを言っているのかわかる。

 あの日のデート、まさか俺たちに尾行されていたと知る由もない鍵沼は、小鳥遊のあそこがよかった、ここがよかったと、頬を赤くして話し始めたのだ。

「いやぁ、胸がときめくとかマンガでよく見るけど、こういうことを言うんだなぁ。
 なぁ真尾!」

「そうだな、キモい」

「言葉の前後おかしくない!?」

 いかんいかん、あまりに恍惚な表情で語る鍵沼の姿が、あまりに鬱陶しくて……
 こほん。

 とはいえ、その気持ちは……まあわからんでもない。
 俺も、さなとのデートの時は胸が高鳴る、ってやつを経験したしな。

「いやぁ、これから俺も写真部に入ってもいいかもしんないなー」

「部内恋愛は禁止です」

「真尾がそれを言うの!?」

 まあ、言葉だけだろう……鍵沼は、陸上部を抜けて写真部に来るなんてことは、ありえない。
 この学校では、部活の掛け持ちも許されているようだが……

 それでも、陸上一筋の鍵沼が、写真部に来ることはない。

「鍵沼くん、ご機嫌ですね」

「本当鬱陶しいわ」

 そんな鍵沼の様子を見つめるさなは微笑ましそうに、あいは不機嫌そうに見ている。
 すっかり、この四人でいることがいつもの光景になったな。

 その後も、鍵沼から小鳥遊のいいところを延々と聞かされ続けてしまった。
 ホームルームのチャイムがこんなに待ち遠しいと思ったのは、初めてだ。

 確かに小鳥遊は、魅力的な異性だとは思うが。

「今の話を小鳥遊に聞かせてやれば、泣いて喜ぶだろうに」

 その小鳥遊も……闇野に、同じように語っているんだろうか。
 まさか、自分たちを尾行していた相手だとも知らずに。

 そんなこんなで、一日は過ぎていく……

「で、なんで俺は呼ばれたんだ」

 はずだったのだが、なぜか昼休憩に、闇野に呼び出されてしまった。校舎裏に。
 今からさなたちと昼食を開始するはずだったのに、なんてことをしてくれるんだこいつは。

 一切関わらない……と言っていたつもりが、いつの間にか番号交換までしてしまっていたのだ。
 失敗だったか。

「仕方ないでしょ、私だってあんたと好んで会いたくなんてないわよ」

「じゃあ帰っていいか」

「なんのために呼んだと思ってるのよ」

 ……やれやれ、また面倒なことに。

「小鳥遊のことか?」

「そうよ」

 まあ、そうだろうな。
 闇野が、俺との共通点で自分から話しかけてくることなんて、親友の小鳥遊のことか転生前の世界でのことか、だ。

 ちょくちょく絡むようになったのは……小鳥遊のためなら、気に入らない俺に話しかけるほどに大切な相手ができた、ということなのだろう。

「で、小鳥遊がどうしたって?」

 だいたい、想像はつくが……

「あの子、今日会ってから、鍵沼くんの話ばっかりなのよ……
 こっちが胸焼けするくらいに」

「あぁ……」

 ほら、やっぱりな。

「その反応……もしかしてそっちも?」

「そのとおりだ」

「なんて色ボケな二人なのかしら……
 まあ、鍵沼くんもさらさのことを、好意を持ってくれている、と捉えていいのよね」

 二人揃って、相手とのデートのことを、思い返している。
 それはまあ、なんとも微笑ましい字面ではあるが……

 実際に、それを熱く語られては、こっちの身がもたない。

「体育祭の様子を見るに、馬鹿っぽいけど根はいい子みたいだし……
 デートを見る限りじゃ、女の子のエスコートも、ちゃんとできてるのよね」

 今、ナチュラルに煽りやがったな。ひどい言いようだ。
 別にいいけど。

「なにより、さらさが好きな子だもの、これはあとひと押しでくっつくんじゃない……?」

「ううん……」

 闇野の言うとおり、なにか後押しするものがあれば、鍵沼と小鳥遊の二人はくっつきそうだ。
 小鳥遊はもちろん、鍵沼も多分告白されて、断る理由はない。

 ただ、そうなると……

「……」

 ふと、あいの顔が浮かんだ。
 本人は、鍵沼が自分より先にデートしたのが生意気でムカつく、なんて言っていたが……

 それだけの理由では、ない気もする。あの態度は。
 なんとなくだが。

「どうかした?」

「いや……」

 ただ、闇野には協力しろと言われてるしな。
 俺個人としては、どうしたいんだろうか。

 別に、鍵沼の幸せなんざどうでもいいが……小鳥遊は、鍵沼のことが好きで鍵沼の方もまんざらじゃない。
 あいは、鍵沼と犬猿の仲。しかし、どうやらそこには複雑な感情も込められていそうだ。

「人間って、面倒だなと思ってな」

「なによ突然、きっっっもち悪いわね」

「そんなに実感込めなくても」

 自分が魔王だった頃は、こんなこと考えもしなかったが……これが、人間というものか。
 自分のことだけでなく、他者のことについても、気を配らなければいけない。

 その後、闇野とは少しだけ会話をして、別れた。
 急ぎ教室に戻り、さなたちと合流すると……なんと、さなは弁当を食べずに俺を待っていてくれたのだという。

「一人で食べるのは、寂しいと思って……」

 なんて、とてもかわいらしいことを言ってくれる。
 あぁ、なんということだろう。なんて優しいのか。
 好きだ。

 待ってくれていたさなのおかげで、昼食はおいしくいただくことができた。
 ちなみにあいと鍵沼は、当然のように先にもりもりと食べていた。
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