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転生魔王は青春を謳歌する
そのデートの様子は
しおりを挟む「……」
「た、たまたま! ほんと、偶然ねー!」
鍵沼と小鳥遊のデート当日。
待ち合わせ場所とされる駅前、そこに俺と闇野……そして、あいがいた。
そもそもの始まりは、鍵沼にデートの確認を行った翌日のこと。
突然闇野に呼び出されたかと思えば、デート当日に尾行をする、なんて言われた。
もちろん小鳥遊には内緒で。
なぜ俺も付き合わなければならないんだと抗議したが、無視されてしまった。
来なければ来ないであとが怖いので、仕方無しに今日来たわけだが……
「あい……」
「え? わ、や、え……ボクはただの、ショッピングだけど!?
いやー、人が多いわねー!」
聞いてもいないことを、棒読みで喋り始めるあい。
今日の尾行について、もちろん俺はあいを誘ってはいない。
闇野も同じだろう。
となると、あいは一人で、鍵沼と小鳥遊のデートを尾行しに来たわけだ。
本人は、ただのショッピングだと言ってはいるが……
「お前には、人のデートを尾行する趣味でもあるのか?」
「なっ、違っ……たま、たまだって! ホントに!」
こいつには、俺がさなとデートをした際も尾行されたっけな。
本人の慌てようから、これはたまたまではないことがわかる。
闇野からは変な視線を向けられるし。
これは俺のせいじゃないぞ。
「あー、変にごまかさなくていいから。あいつが気になるんだろう」
「なっ……ち、違うわよ!
ボクが気になるのはさらさちゃん!
あいつに変なことされないかって、見張るためにねぇ!」
「そ、そうか……」
「そうだよ!
ともかく、ボクも行く!」
こいつ、開き直りやがった。
「ねえ、来たわよ」
「……とにかく騒いだら気づかれる。
お前もこっち来い」
「ぬ……はい」
結局、あいは俺と鍵沼の会話を聞いていて、今日がデート日だと知っていた、ということか。
俺と闇野とあいは、揃って身を隠し、鍵沼と小鳥遊の姿を見守る。
ここからだとなにを話しているかはよく聞こえないが、楽しそうなのは伝わってくる。
問題は……
「あぁ、もう、なんとも焦れったいわね。
もっとこう、積極的に……」
「ぬぬぬ……」
隣のギャラリーが、うるさいことだ。
どうやら闇野は小鳥遊の消極さに悶々しているらしい。
一方であいは、誰に対してなにに対してか、獣のように唸っていた。
下手に話しかけたら、噛みつかれそうな雰囲気だ。
そんな中で、待ち合わせした鍵沼と小鳥遊の動向を見守り……
場所を移動し始める二人に合わせて、俺たちも移動を開始した。
……果たして俺は、いったいなにをしているんだろうか。
「友達想いというか、おせっかいというか……」
二人には聞こえないよう、小さく呟く。
以前の鍵沼とあいは興味本位からだったが、今回闇野は、どちらかといえば心配だからという面が大きいのだろう。
過保護というか……
まあ、小鳥遊の性格を考えれば、わからなくもないが。
「ふむ、お昼はファミリーレストランで優雅なランチ……悪くないわね」
と、闇野はことあるごとに二人のデートを、というか鍵沼を観察している。
小鳥遊に釣り合うのか、見ているということだろう。
元々、小鳥遊が好意を寄せている相手として、鍵沼に興味はあったはずだ。
それを、まさかこんな形で相手のことを調べるとは思わなかったが。
俺たちも、同じファミレスに入り、二人にバレないように席につく。
で、昼食の時間だ。
この場にさなもいれば、好きな女と学校外で昼食なんてまるでデートのようなこともできるのだが……
……やはり、鍵沼たちを尾行しているさな、というのは嫌だな。
「なんだかんだいい雰囲気じゃない」
「ぬぬぬ……」
見た感じ、鍵沼が話しかけそれに小鳥遊が受け答えていく……鍵沼はあの性格だから、話題が尽きることもない。
話し手の鍵沼と聞き手の小鳥遊、相性としては悪くないのかもしれない。
時折見せる、小鳥遊の笑顔がそれを物語っている。
「あ、移動するわよ」
移動する二人に合わせて、俺たちも移動する。
なぜ俺が、こんなコソコソと……
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