転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は体育祭を謳歌する

魔力の残滓

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 部活対抗リレー……その、終了の合図が鳴り響いた。
 各々、懸命に力を振り絞って事にあたった。

 その結果は……

「一位は、バスケ部です!
 続いて陸上部! 写真部は、惜しくも三位となりました!」

 司会が、高らかに宣言する。
 それは、俺たちが一位になれなかったことを意味していた。

 瞬間の、会場の盛り上がりは凄まじく。
 一位にこそなれなかったが、写真部への称賛の声が多かった。

 他の運動部を抑えて、だからな。それもわからなくもない。
 さなたちは、まだ現実を受け入れられていないのか、ぽかんとしている。
 もっとも、走ったばかりのあいと、なぐも先輩は息も切れ切れだが。

 結果は、惜しくもではあるが上々だろう。
 だが、俺には部活対抗リレーの結果よりも、気になることが一つ、できてしまった。

「……魔力?」

 今……いや、つい先ほど。確かに感じた。
 魔力……この世界には、ないはずのもの。魔力という概念はあっても、実際にそういった力はない。

 魔王から転生した俺は、どういうわけか体内に多少なりの魔力を残している。

 そう……魔王であった俺はともかく、普通の人間が魔力を持っていることなど、ありえないのだ。

「光矢くん?」

「ん、あぁ。
 いや、なんでもない」

 俺がこの場で押し黙っているのを疑問に思ったのか、さなが不思議そうな顔を向けてくる。
 かわいらしい顔だが、俺はなんでもないとごまかした。

 さなに、魔力がどうのと言っても信じてもらえるものではない。
 こういった話を、信じる人間がいるとすれば……

「……」

 さりげなく、俺は自分のクラスのテント……の隣へと、視線を向ける。
 視線の先にいるのは、目的の人物、闇野の姿。

 闇野 遊子。転生する前は勇者であったあの女ならば、今の魔力を感じたかもしれない。
 人間ではあっても、それなりの技量を持つ人間は魔力を感じ取れる。
 勘、というやつだ。

 もっとも、この世界でもその勘が生きているかはわからないが。
 しかも、一度死んだ身だ。

「後で、聞いてみるか……」

 単純に距離、魔力量の問題もある。
 俺はこの場にいて、近くから感じた。テントとは距離が、離れている。
 それに、俺でも微弱にしか感じられない程度の、魔力量だったしな。

 もしも周囲と同じく喜びに打ち震えていたら、俺でも気が付かなかったかもしれない。
 ……で、だ。

 問題は、魔力がどのように、使われたかだ。
 俺の感じたものが、間違いでないのなら……

「あの、バスケ部か……」

 最後、アンカーのリレー。
 あのとき、走者の順位は陸上部、写真部、その後ろにバスケ部だった。

 だが、急激にバスケ部が追い上げてきたのだ。
 その結果、前を走る走者をぐんと抜き去り、バスケ部が一位へと躍り出た。

 そう、魔力は……バスケ部のアンカーの身体強化に、使われたのだ。

「あー、惜しかったなー」

「仕方ないさ」

 悔しがる鍵沼、それを励ます他の陸上部。
 その会話を聞きつつ、俺は考える。

 誰が、なんのために、
 バスケ部アンカーが魔力による身体強化で一位になった。この事実だけを捉えると……

 当のバスケ部アンカー、もしくはバスケ部内部に魔力を持った人間がいる、ということだ。

「光矢クン、行くよー」

「……あぁ」

 俺たちは自分のテントへと、戻っていく。
 その間も、俺の目は……バスケ部に、注がれていた。

 普通に考えれば、バスケ部員の中の誰かが、バスケ部を勝たせるために魔力を使ったと考えられる。
 だが、なんのために?

 そりゃ、俺だってなぐも先輩に魔力を使おうと考えたことはあるが……
 それも、残存する魔力の消費量を考え、断念した。
 俺の体内に、魔力はあまり残っていない。

 つまり……言い方はアレだが、体育祭の競技程度にも魔力を使ってしまえるほど、膨大な魔力を宿した人物。
 目的はともかく、それは間違いないだろう。

「先輩ー、しっかりー」

「かっこよかったですよ!」

「うぅう……」

 ま、考えてもわからないこと……か。
 一応、闇野にも伝えるだけ伝えとこう。
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