転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は体育祭を謳歌する

部活対抗リレー開始

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 不安しかない、部活対抗リレー。
 しかしどれだけ不安を感じていようと、まだみんなの準備が整うまで待ってくれと願っても、時間の流れは一定だ。

 人間であろうと、魔王であろうと、勇者であろうと。
 時間の流れは、誰もに平等だ。
 平等に流れる時間は、時を進め、そして……

『次の種目は、部活対抗リレーです。
 出場する選手のみなさんは……』

 ついに、その時が来た。来てしまった。
 そのアナウンスを聞き、なぐも先輩は肩を跳ねさせて。あいは気を引き締める表情になり。小鳥遊は話が終わってないことに不本意ながら黙り込み、さなはあたふたと周囲を見る。

 選手は、入場する。

「はぁあ……はぁぁあ……」

「先輩、ここまで来たらもう、覚悟を決めましょう」

「また、無様な姿を全生徒たちの前にさらしてしまうのか……」

 なぐも先輩は、すでに諦めモードだ。
 励ましたいところだが……俺がなにか言っても、逆効果かもしれない。

 同じく運動が苦手なさなだからこそ、聞くことがあるかもしれない。
 任せよう。そしてなぐも先輩の芯の強さに、賭けよう。

「それにしても……重いな、なかなかに」

 俺たち写真部の首には、カメラがかけられている。ただし、本物ではない。
 部活対抗リレー……それは、それぞれの部活が、それだとわかるものを持って走る種目だ。

 写真部は、以前考えていた通り、カメラを手に走ることになっている。
 周囲を見れば、いるわいるわ珍妙な集団が。

 バスケットボールを持っている者、サッカーボールを持っている者、バットとソフトボールを持っている者、柔道着を着ている者……
 部活の数だけ、そこに珍妙な光景が、広がっている。

「一応練習でもこれ引っ提げて走ったとはいえ、やっぱ違和感だな」

 カメラのような機械をかけて走るのは、さすがに危ない。なので、同じような重さの石をぶら下げている。

 さて、ここで部活対抗リレーのおさらいだ。
 走る人数は五人、リレーとは違い男女の人数は決められていない。
 バスケ部はボールをドリブルをしながら、サッカー部はボールをリフティングしながら、といった風に、部活によって走り方も変わってくる。

 ちなみに、指定の走り方を破って走った場合、即失格となる。
 "なに"を"なに"しながら走る、という指定でないだけ、重いとはいえカメラ風の石を下げただけで走ればいい写真部は、案外楽かもしれない。

「どうなることやら」

 走者がそれぞれ、位置につく。俺は、第三走者だ。
 走る順番は、こうだ。

 第一走者 小鳥遊
 第二走者 さな
 第三走者 俺
 第四走者 なぐも先輩
 アンカー あい

 小鳥遊の実力は、先のリレーで確認した通り。練習のときよりも、本番に強いタイプなのだろうか。
 その次にさな……なぐも先輩に次いで運動苦手とはいえ、元テニス部だ。
 その感覚は失われていないことは、練習中に確認した。

 俺も、とにかくやれるだけやるだけとして……
 問題は、俺の次のなぐも先輩だ。

 結局、練習と言うか特訓中も、芳しい成果は得られなかった。
 騎馬戦で運動神経が発揮できなかったのも、その証拠だ。

 つまりは……

「なぐも先輩に行くまでに、どれだけ走りの貯金を溜められるか……」

 遅いことを、攻めはしない。人には得手不得手があるのだ。
 ならば、不得手な人のために頑張るのが、得手な人の役目だ。

 ただ、当然ながら問題もある。
 その一つが……

「……まさかお前も、第三走者とはな」

「まったくだよ、すげー運命だな」

 ……同じ第三走者に、鍵沼がいるということだ。
 これは、計算外だった。

「お前のことだから、第四かアンカー……もしくはトップかとも思ってたんだがな」

「あはは、素敵な評価どうも。
 でも、部活対抗リレーに出れたからって、その中でも一番ってわけじゃないからさ」

 鍵沼は、いくら速くてもまだ一年生。
 部活対抗リレーに出るような生徒だ、鍵沼より速い者は当然いるだろう。

 鍵沼とは、何度か競走したことがある。
 その時俺は、何度やっても勝てなかったっけか。

 ……ただ、それは中学での話。
 それに、これは部活対抗リレー。

「チームで勝てば、問題ない」

「へへぇ、言うねえ真尾」

 チームで勝てば……か。
 魔王だった俺が、そんなことを言うように、なるなんてな。

 やるからには、勝つ。
 しかし相手は、運動部。それも陸上部だ。勝ち目は薄いと言ってもいい。

 だが、勝ち目が百パーセント見えている戦いもまた、つまらない。
 だからこそ、燃え上がるというものだ。

「真尾、なんか楽しそうじゃん」

「そんなことは……」

 ない……それを言うより先に、空砲が鳴る。
 それはつまり、第一走者がスタートしたということ……部活対抗リレーの開始を、意味していた。

 第一走者の小鳥遊は、他の部活に比べても速い。

「うっわ、あの子マジで速いな!
 なんで陸上部来てくれなかったんだー、チクショウ!」

「……」

 悔しげにしている鍵沼に、彼女が陸上部に行かなかった理由はお前だ、と話したら、どんな顔をするだろう。

 小鳥遊が陸上部に入らなかった理由は、ひとえにそこに鍵沼がいたからだ。
 好きな人とお近づきになりたいが、同じ部活に入る勇気がない。
 それほどまでに、奥手なのだ。

 あるいは、小鳥遊の性格がもっと前向きだったら。
 その結果は、違っていたのかもしれないな。

「……始まった、か」

 兎にも角にも、こうして部活対抗リレーは、幕を開けた。
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