転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は体育祭を謳歌する

開幕!

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 ……六月某日。

「かぁーっ、ついに来たぜ体育祭!」

「元気なやつだな」

 本日は、隣で喜んでいる鍵沼にとって待ち焦がれた、体育祭の開催される日だ。
 そして、同時に我らが写真部部長、なぐも先輩が待ち焦がれていなかった日でもある。

 現在全生徒はグラウンドに集まっている。
 それから、代表が体育祭開催を宣言していく。

 これだけの生徒が集まると、さすがに圧巻だな……

「体力が有り余って仕方ないぜ!
 早く走りてー!」

「ま、やる気があるのはいいことだよ」

 クラスごとに、用意されたテントに入る。
 一年生にとっては初めての体育祭だ、やる気になるのもまあ、わからんでもない。

 ……なぐも先輩に鍵沼を会わせてみたら、まさかこんな人間がいるなんてと衝撃を受けるかもしれないな。

「はぁ、とうとうやってきてしまいました……」

「さなちゃんしっかり!
 あれだけ練習したんだもん、大丈夫だよ」

「う、うん」

 少し離れたところでは、不安そうなさなをあいが励ましている。
 あいもどちらかと言えば鍵沼側の人間だ、この体育祭を楽しみにしていた。

 本人に言ったら、間違いなく機嫌を悪くするだろうから、伏せておくが。

「ま、なんにしてもみんな楽しもうぜ!」

「おー!」

 この二ヶ月で、鍵沼はすっかりクラスの中心だ。
 陽気な性格が幸いしてというか。それに、その性格は周囲にも受け入れられやすかったようだ。

 バカだから、嘘偽りないその中身が、好印象を与えたのだろう。

「騒がしいわね、そっちのクラスは」

「ん」

 ふと、隣から声をかけられる。
 そこにいたのは、別クラスの闇野だ。

「どうした、お前から話しかけてくるなんて」

「別に。一応同じチームなんだし、話くらいしてもおかしくないでしょ」

 この体育祭……というか、ほとんどの学校の体育祭はそうだろうが、赤組と白組に分かれて競う。
 俺のクラスと、闇野のクラスは同じチームに所属しているわけだ。

 こいつも変わったなぁ、当初はあれだけツンツンしていたのに。
 熱気に包まれて誰にも会話は聞かれていないだろうとはいえ、自ら話しかけてくるとは。

「一応、さらさがお世話になっているみたいだから。
 不義理はしたくないってだけよ」

「お前は小鳥遊の母親かよ」

 どうやら小鳥遊は、部での出来事を逐一闇野に報告しているらしい。
 そこで、俺にもお世話になっている、的な話を聞いたのだ。

 俺以外は女子ばかりであるため、過ごしやすい空間であることも、小鳥遊にはいい傾向に働いているらしかった。

「再会したばかりの頃は、もう関わらない、みたいなことを言っていたのにな」

「状況が変わったのよ、不本意だけど」

 俺がからかうように話すと、闇野はバツが悪そうに言葉を返す。
 実際、小鳥遊の件がなければ、こうして話すこともなかっただろう。

 ……かつては、魔王と勇者という立場にあり、命のやり取りをした俺たちが、今こうして同じチームで戦っている。
 実に、妙な気分だ。

「なに笑ってんのよ、気持ち悪い」

「ひでー言いようだな」

『まもなく、第一競技が始まります!
 競技に出る生徒の方は……』

 アナウンスが、第一競技……つまり体育祭が始まることを、高らかに告げる。
 それを受け、生徒たちはそれぞれ、動き出す。

「ま、なんにせよ足は引っ張らないでよね」

「そっちこそな」

 最後に、相手に一声かけてから……互いに、背を向けて自分たちのクラスの輪の中に、戻っていった。
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