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転生魔王は友達を作る
恋人の有無
しおりを挟む今俺を見ている二人の少女、闇野と小鳥遊は、程度の違いこそあれどどちらも同じ表情をしている。
お前、この人、なにを言っているんだ……と。
考えてみれば、そうだろう。恋愛相談の最中に、いきなり部活への勧誘など。
しかし、これには明確な理由がある。
「写真部はな、俺が所属している」
「はぁ」
「俺と同じ部活に入れば、同じ部活のメンバーとして小鳥遊のことを、紹介しやすくなる」
「!」
そう、俺が考えた策……
同じ部活仲間であれば、友達に紹介しても不自然はないだろう作戦だ。
現にこの方法なら、鍵沼と接点もない闇野を通して小鳥遊を紹介するより、よっぽど自然だ。
「へぇ、さっきのよりずいぶんまともな案じゃない」
「ふふん。
ちなみに鍵沼は陸上部だが、陸上部に入ったところで、一人で話しかけられる自信は?」
「……ないです」
一人でも話しかけられるなら、わざわざ俺に相談を持ってきたりはしないだろう。
なので、俺がサポートする意味でも、いい案だと思う。
「俺も、さなも、それに鍵沼の幼馴染もいる。安心して任せておくといい」
「幼馴染……が、いるんですか。
その人って、女の子、ですか?」
「ん? あぁ……」
瞬間、小鳥遊が表情を暗くする。
闇野は、なに余計なこと言ってんのよ、と言わんばかりの表情だ。
異性の幼馴染の存在に、気持ちが揺れるのはまあわからんでもない。
とはいえ、いずれバレることだとは思うけどな。
「心配することはない。
あの二人は、ただの腐れ縁なだけだ」
「……本当? 後になって、実は付き合ってたとか言わないわよね」
「ないない」
さすがに、すでに付き合っている相手に告白させるために手を貸すほど、俺だって鬼じゃない。
相手がいれば、逆に小鳥遊を諦めさせる方向に導いただろう。
「そうだ、大事なことだったわ……マヌケね私も」
「どうした」
「その幼馴染が相手じゃなくても、鍵沼くんにすでに付き合っている相手がいないか、ってこと」
重要なことなのに確認するのを忘れていた、と、自分を呪うように頭を抱えていた闇野は、確認のために口を開いた。
そもそも、鍵沼に恋人はいるのかどうか……
それを、真っ先に確認するべきだったのだ。
「いない。少なくとも俺が知る範囲では」
「じゃあ、もしかして実はもう……」
「ただ、あいつが彼女ができたら、真っ先に俺に報告するだろうな」
俺が興味があろうがなかろうが、彼女ができればそれを、嬉しそうに語る。
そういう男なのだ。
そして、これまでにそういった話は、聞いたことがない。
「でも、隠してるとかありうるんじゃない?」
「あいつは、彼女ができたなんて重大イベントを、隠し通せるほど器用なやつじゃない」
器用なやつじゃない……それは、確かだ。
それは、保証してもいい。
ゆえに、鍵沼に現在、恋人はいない。
「もっとも、告白されたって話は何度か聞いたな。
どれも、断ったらしいが」
「こ、告白……やっぱり、されたことあるんだ」
かっこいいしそうだよね……と、小鳥遊はどこかうっとりしな様子で頬に手を当てている。
想い人がモテている事実が、嬉しいらしい。
そんなもんか……
まあ、さながモテているのは……悪い気は、しないな。
「じゃあ、なんで断ったの?」
「そこまでは知らん。
まあ、あいつは運動バカだからな……付き合うより運動してるほうがよかったんだろ」
あくまで俺の、見解だがな。
「でも、いつまでも悠長にもしてはいられないってことね」
「あぁ。あいつの情緒は変わりやすいからな」
「……あんたほんとに、鍵沼くんへの当たり強いわね」
これまでに告白を断っていたからと言って、これからもそうとは限らない。
急いで告白する必要はないとはいえ、悠長に構えてもいられないわけだ。
それを知ってか、小鳥遊はくっと顔を引き締めた。
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