転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は友達を作る

恋人か友達か

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 小鳥遊 さらさ。鍵沼に想いを寄せているこの少女。
 始めこそ驚いたが、まあ恋の形は人それぞれだ。
 誰が誰を好きになっても、それは個人の問題。

 この少女が物好きなだけかもしれないし、実は女にしかわからない鍵沼の魅力というやつがあるのかもしれない。
 まあ、どっちでもいいが。

「で、そんなに自信満々で、なにか策はあるわけ?」

「もちろんだ」

 俺を、どこかバカにしたようにしながら見つめている闇野。相変わらず腕は組んだまま。
 その偉そうにしている鼻っ柱を、へし折る策が俺にはある。

 自信を持って、策はあると告げた俺。
 それに対して、小鳥遊、そして闇野も、興味深そうに眼を見開いている。

 俺の考えた策、それは……

「それは、公開告白だ!」

「……」

「……」

「教室の中でも、校庭のど真ん中でも、どこでもいい。
 目撃者の居る前で、想いのたけをぶつけるのだ」

 それは、俺も実践した方法。
 まあ、俺の場合はそこまで考えていたわけではなく、さなを一目見た結果があの公開告白に繋がったわけだが。

 ふふ、俺の完璧な策に、二人とも固まっているな。

「人前であれば、もう引き下がれないという思いから、気持ちが引き締まるはずだ。
 また、第三者が目撃することで、それが嘘や冗談ではないと、わからせることが……」

「あんたバカか!?」

 まだ話している最中だというのに、闇野にセリフを遮られる。
 しかも、言うに事欠いて人をバカ扱いだと?

 人に恋愛相談をしておいて、なんたる言い草。

「バカとはなんだ、バカとは。
 失礼な奴め」

「バカだからバカって言ったのよ! いや、ホントバカなの!?」

 またバカって言いやがった。

「どこが不満だ」

「全てよ!」

 闇野は吠え、口こそ開かないものの小鳥遊もどうやら、同じ意見らしかった。
 なぜ……?

「本気で『なぜ?』って顔してるわね」

「なぜわかった」

「わかりたくなかったわよ」

 はぁ、と闇野はため息を漏らして、額に手を当てる。

「あのね、普通の人は公開どころか、告白さえもそう簡単にはできないのよ。
 しかも、さらさは鍵沼くんとろくに話したこともないのよ?
 そんな相手に、告白なんてできないわよ」

「俺は初対面のさなに告白したが」

「それはあんたがおかしいだけよ!」

 あんたを基準に考えるな、と叫んだ後、闇野は肩で息をする。
 そんなに疲れるなら、怒鳴らなければいいのに。
 こんなことを言ったらまた怒られそうだから、言わないが。

 しかし、そうか……できないのか……

「無理なのか? 小鳥遊」

「え、ええと……ちょっと……いえ、かなりハードル高いかなっと……」

「さらさは奥手なの。
 いえ、そうでなくても無理よ」

「だが、この手が確実だぞ?」

「却下」

 公開告白……これは、却下されてしまった。
 非常に残念だ。

 それにしても、告白という直接的な方法が封じられてしまっては……

「じゃあもう、お友達になってから徐々に距離を縮めるくらいしか……
 いや、そんな遠回しな方法……」

「いや、それでいいのよ!」

「……なんだと?」

 友達になって、距離を縮める……そんなことで、いいのか?
 いや、それとも……普通は、そうなのか?

 考えてみれば、俺はさなへ告白したが、その返事をもらうまでの今の関係……友達と言えなくもない。
 友達となり、距離が縮まり、さなは俺のことを見てくれている、ということなのか?

 なるほど、そう考えれば……

「友達は恋人への第一ステップというやつなのか」

「なにを考えているのか知らないけど、友達としてまずは鍵沼くんを紹介してくれればいいのよ」

「その後はお二人にお任せ、と?」

「なんでよ! ちゃんとフォローしなさいよ!」

 恋人の前に、まずは小鳥遊と鍵沼の二人を友達にするところから、始めなければならない。
 その後も、ケアは必要……というわけか。

 まあ、ここまで当事者であるにも関わらず、小鳥遊はほとんど会話に入ってこない。
 俺相手ですらこうなのだ。好きな相手の前では、固まってしまってもおかしくはない。

「ふむ、だいたい理解した。よし、任せろ」

「さっきの今で、不安しかないわよ」

 そう不安がることはないのに。
 要は、まずは二人を会わせるところから始めればいいわけだ。

 問題は、どうやってそのシチュエーションに持っていくかだが……

「……そうだ。小鳥遊は、なにか部活に入っているのか?」

「……なによ、藪から棒に」

「いいから」

 俺の質問の意図がわからないのだろう、闇野も小鳥遊も首を傾げる。
 だが、これは必要なことだと理解してか、ゆっくりとうなずいて……

「じ、実は……まだ……」

 恥ずかしそうに、そう答えた。

「そうか」

 それを聞いて、俺は口の端が吊り上がるのを感じていた。
 望んでいた答えが、返ってきたからだ。

 まだ理解が及んでいない二人に……いや、小鳥遊に、俺は続けざまに口を開く。

「小鳥遊……ものは相談だが。写真部に入らないか?」

「……はぁ?」

「はい?」

 きっと、二人にとって突然な……部活への、勧誘。
 さっきまでの話と、繋がっていないかのようなその言葉に、闇野は眉にしわを刻み、小鳥遊も間の抜けた表情を、浮かべていた。
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