転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は友達を作る

友達と友達

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 中身はどうあれ、年頃の女子が特定の男子に注意を向ける。
 わざわざ本人に話しかけるではなく、俺を介して情報を得ようとする。
 なにより、こうして顔を赤らめている。恥ずかしそうにしている。

 人間の、それも女の気持ちに機敏なわけではないが……
 俺だって、それがなにを意味しているかは、わかる。

「まさかってなによ……
 ……! ち、違うわよ!」

 俺の言葉の意味に気づいてか、闇野は首と手とを振る。
 ぶんぶんと、それはもうその部位が千切れてしまいそうなほどに。

 怪しい……
 そんな俺の視線にも気づいたらしい闇野は、ムッと不機嫌そうな顔になる。

「私は、もっと賢そうなのがタイプなの!
 あんなバカっぽいの範囲外だわ」

 ひどい言われようだな鍵沼。
 別にいいけど。

「で、そのバカっぽい鍵沼がどうしたって?」

「……私が言うのもなんだけど、友達の悪口言われて怒らないの?」

「そのつもりはまったくない」

 まあなんにせよ、闇野が鍵沼になぜか興味を持っているのは確かなようだ。
 闇野は本題に入るべく、咳払いをする。

「で、その鍵沼くん……なんだけど。彼を気になってる子がいるのよ。
 私じゃなくて、私の友達がね」

「……」

 今……この女は、なんと言った?
 鍵沼を気になってる子がいる、だと? いや、『友達の話』という前置きは、結局自分のことだと聞いたこともあるし……

 そんな、まさか……

「本気なのか?」

 さっきは、闇野の反応から冗談半分ではあったが……
 まさか、本気で鍵沼のことを気になっている子が、いるというのか?

 俺があ然と口を開いているのが意外だったのだろう。
 闇野は眉をひそめて、首を傾げる。

「あんた、彼の友達なのよね?」

「一応な」

 そういえば……中学の頃も、あいつは女子に人気があったな。
 バカではあるが、あの性格だ。ユーモアに溢れ、クラスの中でもムードメーカー。

 それに、運動神経はいい。
 あいつを好ましく思う女子も、まあ少なくはないわけだ。

 告白されただとか、そういう話は聞いたことがないが。

「で、つまりはお前の友達が鍵沼を好ましく思っている。
 鍵沼と仲よさげに見えていた俺に声をかけてきた。
 理解はしたが……なぜ友達本人が来ない?」

「奥手なのよ、あの子。
 なにより、あなたが以前、私を校舎裏に連れ込んだところを見ていたみたいでね」

「言い方」

 以前……
 俺が、謎の視線を感じ、その正体がこの女だと判明したときか。

 理由がわからなかったので、人が見ていないところへ連れて行ったわけだが……
 なるほどそこを見られていた、と。

「じゃあなんだ。鍵沼と仲良くしていた俺と、ただならぬ関係であるお前に白羽の矢が立ったわけだ」

「あなたも言い方。
 ……まあ、そういうことよ」

 なんともまあ……
 当人同士が話していないどころか、どちらもその関係者であるだけだとは。

 友達と友達が、その友達同士の関係性のために話を……
 なんかわけがわからなくなってきた。

「はぁ……
 言っておくけど、あんたにも関係のあることなんだから、協力してもらうわよ」

「なぜだ」

 そもそも、闇野は友達のためだからわかるが……俺は、なんの関わりもない。
 鍵沼と仲良くしていた、ただそれだけで話を打ち明けられただけだ。

 鍵沼のためになにかしてやる義理も、悪いが闇野の友達のためになにかしてやる義理も、俺にはない。

「今言ったでしょ。あんたに連れ込まれたところを見られたから、私がこうしてあんたに話しかけるはめになったのよ」

「……」

 そう、言われるとな……俺としても、なにも言えない。
 確かに、誰にも見られないように気をつけたとはいえ、俺から闇野を引っ張っていったしな……
 結果見られてるし。

 しかも、もう関わらない的なことを言われてまだ数日。闇野としても気まずかったことだろう。

「私としてもあんたと話すのは不本意だけど、こうなった以上仕方ないわ」

「……仕方ない、か」

 これは俺の落ち度だ。
 いかに鍵沼を気になっている女子が、俺には関係なくとも……
 今回ばかりは、断るわけにもいかない。

「だが、具体的になにをすればいい。
 というか、わざわざ俺を介さなくても……」

「わかってないわねぇ。とりあえず私とあんたが仲良くなった風に見せて、お互いに友達を紹介する。
 そういう流れよ」

「そういうもんか」

「そういうもんよ」

 自分の色恋でも初めてのことばかりなのに、他人の色恋をどうこうできる自信はない。
 なので、ここは前世でも人間であった闇野に、従っておくとしよう。

 まあ、こいつに色恋がわかるのかどうかは、ともかくとして。

「で、不本意だけどまずは私のと…………友達って、あなたを私の友達に紹介するわ。不本意だけど」

「何回不本意言うんだよ」

「で、それから私の友達と鍵沼くんを会わせる。そういう作戦よ」

「へい」

 俺にはそういうことはわからないから、一切を任せておくとするか。
 ……一応、さなとあいにも報告しておいたほうがいいだろうか?

「それにしても、なんだってその子は、鍵沼を気に入ったんだ」

「どうやら、走る姿がよかったみたい」

「そうなのか」

「そうなのよ」

 走る姿がモテる……とは、どこかで聞いたことがあるような、ないような。
 とにかく、そんな感じらしい。

 まずは、鍵沼と例の子を、知り合わせるところから、だな。

「ところで、さっき鍵沼のことをバカっぽいと言っていたが、それ遠回しにお前の友達のこともディスってないか?」

「……あの子には内緒にしてもらえると助かるわ」

「……あぁ」
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