転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は友達を作る

気になるあいつ

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 体育祭の練習の中でも、普通の授業はある。
 俺にとっては、簡単な内容ではあるが……他の人間にとっては、そうでもないらしい。

 特に、この男にとっては。

「あー、どうしよー!
 全然わかんねー!」

 と、嘆く鍵沼である。
 運動は得意だが、勉強は苦手なのだ。

 そして、もう一人……

「うぅ、高校になってから授業のレベル高いよぉ」

「よしよし」

 さなに撫でられる形で、あいが机に突っ伏している。
 話によると、鍵沼よりも頭が悪いらしいし……

 二人は、頭を抱えていた。

「体育祭が終わったらテストもあるみたいだし……」

「あー、なんとかなる気がしねぇ!」

 そんな二人の様子に、さなは苦笑い。
 俺も、なんと声をかけるべきか悩むところだ。

 気休めに、なんとかなるとも言えないな……鍵沼だけならともかく、あいには。
 そんな二人だが、やはり体育の時間になると、この時間が嘘のように飛び跳ねる。

 単に体を動かすことが好き、というよりは、勉強のことを忘れたいという気持ちからだろう。

「難儀なものだなぁ」

 別の物事に没頭し、その間だけでも考えたくないことを忘れる……
 それがいいのか悪いのかは、果たしてわからないが。

 そして今日も今日とて、体育祭の練習をしていたときだ。
 合同クラスでの、練習時。
 この間赤組と白組の枠組みが発表され、同じ赤組のクラスと一緒に授業をしていた。

「ちょっと」

 ふいに、誰かから声をかけられた。
 聞き覚えのある、女の声。
 しかし、もう俺に話しかけてくることはないと思っていた女の声。

 首を、動かす。
 そこにいたのは、かつての『勇者』……

「闇野?」

 今は転生し、この世界では闇野 遊子と名乗る女だ。

 以前、俺にもう関わらない的なことを言っていた、気がするのだが……

「ちょっと、いい?」

「構わないが……どういう、風の吹き回しだ?」

「私も、不本意よ」

 闇野は、やれやれと言わんばかりに腕を組みながら、ため息を漏らす。
 闇野としても、これは望んだ状況ではない、ということか。

 であるのに俺に話しかけてくるのは、どういった理由からか。

「あの、今走ってる彼……あんたの、友達でしょ?」

「彼……?」

 どこか言いにくそうに、視線をずらす。俺も、その視線を追う。
 その先には、今言った通り、リレーやらなんやらの練習で走っている連中がいて……

 ……その中に、一人の男の姿も、あった。

「まさか……鍵沼のことか?」

「知らないわよ名前は。ほら、あそこで楽しそうに走ってる」

「……鍵沼だな」

 どうやら目当ての人物は、鍵沼らしい。
 あいつと友達と認識されているのは、物申したいところではあるが……

 なぜ、あいつのことで俺に?

「いつも、楽しそうに絡んでるから、そうじゃないかって」

「……楽しそうなのはあいつだけどけどな」

 俺が一方的に絡まれているのだ、そこは認識の違いだな。
 しかし、俺たちの距離感を見て友達と思うのも、仕方ない……か?

 さて、つまりはあいつに直接話しかけるのが難しいため、俺からあいつのことを聞きだそうとしている、という認識でいいだろうか。

「……ん?」

 そこまで考えて、疑問が生まれる。
 なんのために?

 まさか、いやまさかとは思うが……

「まさか、お前……」

 見れば、闇野の頬はほんのりと赤くなっていた。
 え、そうなのか? そういうことなのか?
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