転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は友達を作る

ハイなテンション

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「そういえば、部活対抗リレーって何人で出るんだろ?」

 なぐも先輩は地面に仰向けに寝転がり、休んでいる。
 休憩中の時間、あいが思い出したように口を開いた。

 そういえば、気にしていなかった……いや、聞くタイミングがなかったというほうが正しいか。
 クラスでも、部活対抗リレーの詳しい説明はなかった気がする。

「先輩、どうなんですか?」

「ぜぇ、はぁ……ちょ、まっ……はぁっ……」

 懸命に息を整えようとしている先輩。
 黙っていれば美人、とは初めて会ったときに評したが……
 いろいろ、おもしろい先輩だなやっぱり。

 しばらくして、ようやく落ち着いたらしき先輩が起き上がる。
 ……五十メートルでこの有様。運動嫌い以前に、大丈夫か?

「ふぅ……部活対抗リレーは、それぞれの部活から五人でリレーする競技だよ」

「へぇ、五人……」

 リレーというからには複数人出場することはわかっていたが、その人数は五人か。
 五人……そう、五人だ。

「えっと……先輩と、ボクと、さなちゃんと、光矢クン」

「四人だな」

 さらっと言ったが、普通に一人足りない。
 え、これリレーに出れなくないか?

 そんな俺たちの疑問を感じたかのように、なぐも先輩は言葉を続ける。

「大丈夫、足りなかったら特別に、別の部活か部活に所属してない人でも、出てもらえるから。
 まあ助っ人だね」

「人数が足りなくても、出ることは出来るんですね」

「そもそも五人以下の部活は廃部だしね~」

 そういえばそうだった……あと一人メンバーを集めないと、廃部なんだった。
 最近メンバー集めとかしてないから、すっかり忘れてた。

 ならばなおのこと、今回の部活対抗リレーで結果を残さなければ。

「ちなみに、去年はどうしたんですか?」

「うん? 去年はまだ、人数もいたから問題なく出場したよ。
 はぁ、五人以下でも、助っ人借りられればいいのに」

「じ、じゃなくて。先輩は出なかったんですか?」

 去年、なぐも先輩は部活対抗リレーに出なかったのか……か。
 まあ、リレーに選出される人数は五人だし、五人以上のメンバーがいれば……

「私は出てないよ。
 去年は部員が結構いて……あー!」

 去年を懐かしむように語るなぐも先輩だったが、急に大声を出す。
 なんだどうした、びっくりしたな。

 驚いている俺たちを気にすることなく、なぐも先輩はさっきまでの死にそうな顔が嘘なほどキラキラした顔を見せる。

「なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだ!」

「ど、どうかしたんですか?」

「部活対抗リレーに出場するには五人が必要……このままじゃ、私が出るとしても助っ人を一人借りることになる!
 私が出ずに助っ人二人なんてことは、できないのが残念だけど」

「は、はい」

「そこでだ!
 部員を五人以上……つまり私以外に五人集めれば、私はリレーに出なくて済むじゃないか!」

「……」

 この人は……いきなり、なにを……

 つまりは、あれだ。この人は、自分がリレーに出たくがないために、自分以外にメンバーを五人集めようとしている。

 メンバー集めに精を出すのはいい。
 ただ、理由が……

 しかも、部員集めの一歩として部活対抗リレーで結果を出そうとしているのに、部活対抗リレーに出るために部員を集めようとする……
 本末転倒ってやつじゃないか?

「そうだそうだ! そうしよう!」

「いや、あの、先輩?」

「そうと決まれば、早速部員集めに行こう!
 あはははは!」

 ダメだ、完全にハイになっている。さっきまであんな死にそうな顔をしていたのに。
 この人酔ってるんじゃないだろうな?

 その後、マジで部員集めに動こうとするなぐも先輩を、なんとか落ち着かせる。

「はぁ……」

「そんなに走るの嫌なんですか」

「いやぁ……」

 切実だな。
 体育祭……というより、今後の人生のために、少しは走れるようになっておいたほうがいいと思う。

「光矢クン!」

「ん……」

 どうやら、あいも同じ理由であるらしい。
 張り切ったような表情に、俺も小さくうなずく。

 そして、あいはなぐも先輩へと近づいていき……

「先輩、特訓しましょう! 走り込みです!」

「え」

 あいが、なにかいい案を提示してくれるのではないか……
 そう考えていたらしいなぐも先輩は、あいの言葉を聞いた瞬間、固まった。
 まさに、文字通り……顔面蒼白とは、あのようなことを言うんだろうな。

 まるで、そこだけ時が止まってしまったかのように、なぐも先輩は動かなくなる。
 おいおい、死んだんじゃないだろうな?

「あの、先輩?」

「んはぁ!
 あ、は……あまりの衝撃に、意識が飛んでたよ」

 そこまでかよ。
 なぐも先輩にとって、走るのは……いや運動するのはどれだけの苦痛なんだ。

「えっと……聞き間違い、じゃないよね?」

「特訓しましょう、走り込みです!」

「……」

 また、気絶してしまいかねない勢いだ。
 が、今回はなんとか耐えた。

 そして、あいのことを、まるでおぞましいものでも見るかのような目で、見つめ始めた。

「お、鬼ぃ。鬼がいるよぉ」

「先輩、このままじゃだめになっちゃいますよ。ほら、やりますよ」

「いーやーだー!」

 いやいやと駄々をこねるなぐも先輩を引っ張り。
 あいによる特訓が、始まる。
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