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転生魔王は友達を作る
出場種目
しおりを挟むさなに、俺と闇野の会話を聞かれてしまった。
ただし、『勇者』と『魔王』などといった、込み入った話は聞かれてはいないらしい。
「しかし、確証はないだろう」
「間違いないわよ。というか、最初からいたならさすがに気配で気づくわ」
それは、確かに……
まあ、考えてみればさなに今の話を聞かれたところで、なにも問題はない……のか?
むしろ、転生だ魔王だ勇者だと、与太話だと思われるのがオチだ。
「それに、仮に全部聞いてたとしても、全部吹っ飛んでるわよ。
あんな熱烈に好きだなんだと語られちゃあね」
「そういうもんか」
「そういうもんよ」
さなにとっては、公開告白と同じか、もしくはそれ以上に恥ずかしかったということだろうか。
「ま、あの子に関しては心配ないわね。純情そうで、いい子みたいだし」
「当然だ」
「……ま、いいけど」
闇野は呆れたように、目を細める。
なにか、変なことを言っただろうか?
「それじゃ改めて。あなたとは、もう関わることはないだろうし、関わろうともしないから」
「好きにしろ」
過去の遺恨をなかったことにするなら、そこまで徹底しなくてもいいとは思うんだけどな。
今は同じ世界に、それも同じ学校の同学年で居るのだから。
それを最後に、闇野は先々行ってしまう。
俺はそれから少しだけ時間を置いて、戻ることに。
一緒に戻る必要も、ないしな。
「お、真尾~。あの子となに話してたんだよ」
戻ると、馴れ馴れしく鍵沼が肩を組んでくる。
そうかこいつは、俺が闇野を連れて行くところをみていたんだったな。
肩に回された、手を振り払う。
「別に、お前には関係ないことだ」
「えー、つれないなぁ」
膨れて文句を言う鍵沼だが、本当に関係ないことなのだ。
転生、それに『勇者』や『魔王』……この世界で生きている人間には、関係のない話。
別に鍵沼だから話さない、というわけではない。
「それに、その後如月さんも向こう行ってたじゃんか。
なんか戻ってきたとき、顔赤かったけど」
さなの動向までうかがっていたのか、こいつ。
「……もしかして、あのかわい子ちゃんと変なことしてて、それを如月さんに見られたのか……!?」
「蹴るぞお前」
「いて、いてっ。もう蹴ってるじゃんか! 冗談だっての」
俺がさな以外の女と変なことをするなどと、とんでもない侮辱だ。
しかも相手は、勇者……俺を殺した女だぞ。
あの女ほどではないが、俺もあの女と好き好んで馴れ合おうとは、思わない。
「で、そのさなは?」
「あっちで静海となんか話してる」
鍵沼が指差す方向には、さなとあいがなにやら、話していた。
俺が戻ってきたことに気づいていたのか、さなはチラチラとこちらを見ては、また顔をそらす。
だが、顔をそらしても、耳まで赤いのは隠しきれない。
俺は目がいいのだ。耳まで赤いのが丸わかりだ。
「どうしたってんだろーな。ホントなにしたんだよ」
「いやぁ……」
闇野が言うには……
『とにかく、だ。
俺はさなに惚れ、告白した。返事は待っている最中だが……
他の目論見など、あるはずもない』
から聞いていたようだ。
そこからの会話であれば、確かに『勇者』や『魔王』などと口にはしていなかった。
はずだ。
そして、このセリフを聞いたさなが真っ赤になるのも、まあ仕方ないと言える。
その後魂にまで誓ったし。
この世界で、魂に誓うなんて言葉があるにせよないにせよ、まあかなり大胆なセリフであることに、間違いはないだろう。
「ま、しばらくは話しかけないほうがいいだろうな」
「ホントになにしてたの!?」
また話しかけに行ったところで、逃げられるのが目に見えている。
とりあえず、この授業が終わるまでは、話しかけないほうが良さそうだ。
「怪しいなぁ」
「怪しくない」
その後、しつこい鍵沼からの追求をかわして、授業に戻る。
とはいえ、自由時間であるから、あまり授業っぽさはないのだがな。
とりあえず、走っておくとするか。
「しっかし……運動部でもないのに、その体力。お前隠れてなにかしてんな?」
「なにもしてない」
隣に並び、並走する鍵沼。話しかけてくるのは、体力の余裕がある表れか。
息切れなんて、まったくしていない。
俺も、この程度ならば問題なく走れる。
別に、隠れてなにかをしているわけでもない。ただ、昔から体力はある方なのだ。
人間の体なので、初めのうちはその軟弱さに苦労もしたがな。
「光矢ー、こっちこっち」
「ん?」
ふと、クラスメートに呼ばれる。
どうやら、競技ごとに練習するようにしたようで、俺は俺が担当する競技に呼ばれた。
鍵沼と別れ、移動する。
自分でも、自分がなんの競技に出るのかわかっていなかったが。
ここで、判明するのか。
さて、俺はなにに出ることになるのか……
「それでは、これから二人三脚の練習を始めようと思う!」
「……」
「……」
二人三脚……男女ペア三組で出場。
闇野のクラスと合同授業なため、この場には二人六組がいることになる。
そして、俺のペアとなるのは……
「…………さな」
「! ……は、はい」
俺の呼びかけに、肩を震わせるのはさなだ。
せめて授業が終わるまではそっとしておこうと、思ったのだが……
まさかこんな形で、話をすることになるとは。
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