転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は友達を作る

魂に誓って

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「……ふっ」

「なにが、おかしいの」

 俺は思わず、笑ってしまった。
 それが届いたようで、闇野は眉をひそめる。
 バカにされた、とでも思ったのだろうか。

 バカにしたのではないが、しかしおかしく感じたのは、事実だ。

「てんで、的外れなことを考えているなと思ってな」

「的外れ?」

「あぁ」

 俺が、さなを利用してなにかを、考えているのではないかということだ。

「俺は、さなに一目惚れした。好きになった。だから、告白した。
 ただ、それだけだ」

「……」

 自分自身の、正直な気持ち。
 別にこの女に伝える必要もないのだが、あらぬ疑いをかけられるのもつまらない。

 なので、嘘偽りない思いを伝えたのだが……
 なぜか、固まってしまった。

「おい」

「んぁっ!?」

 我に返ったと言わんばかりに、その場で飛び跳ねる。

「あー、いや……あまりの衝撃に、意識飛んでた」

「そんなにか?」

「そんなによ!
 だって、そんな、堂々と、す、す、す……」

 なんだこいつ、ゆでダコみたいになって。
 ちょっとおもしろいな。

 さては、そういった経験がないんだな?

「ま、堅物そうな女だったしな」

「カタブツ……!?」

「あ、口に出てたか」

 とはいえ、世界を救うために『勇者』として、戦っていたんだ。
 確か俺と対峙したときは、見たところ二十代前半……いや、十代後半といった感じだったか。
 色恋にうつつを抜かしたい年頃だったろうが、そうも言ってられない状態だった。

 そう考えると、彼女の運命を左右してしまった魔王、つまり俺にも責任を感じるところはある。
 その後充実した人生を送ったらしいから、申し訳ないとまでは思わないが。

「とにかく、だ。
 俺はさなに惚れ、告白した。返事は待っている最中だが……
 他の目論見など、あるはずもない」

「……あなたから、一目惚れだ好きだなんて言葉が出るなんてね。
 他意がないと、違える?」

「魂に誓う」

「……」

 魂に誓う……これは、我ら魔族にとって特別な意味を持つ言葉だ。
 今俺は魔族ではない、というのは置いておいて。

 魔族は、その生体はほとんどが謎に包まれている。
 ある日突然、どこかで生まれる。
 人間のように、親は存在しない。

 そして、力あるものが生き残る。
 生き残り、生き残り……弱者から強者へと成った者は、次第にこう思うのだ。
 我が魂に誉れあり、と。

 気高き魂を持つゆえに生き残り、生存本能が強い魂ゆえに力ある者へと駆け上がる。
 だから、魔族にとって己の魂とは特別な意味がある。

 魂に、誓う……それは、魔族にとって、命をかけるよりも意味のある誓いだ。
 もっとも、人間であるこの女が、魔族のあり方を知っているかは知らないが……

「……そう、わかった」

 ただ、一言……それだけ、言った。
 意味を知っていたのか、それとも意味を知らずとも、俺の本意を感じ取ってくれたのか。

 いずれにしろ、これでこの女が俺にちょっかいをかけてくることは、もうないだろう。

「じゃ、そろそろ戻ろうかしら」

 闇野は、俺に背を向けて歩きだす。
 自分から俺を引き止めたくせに。先々行きやがって。

 闇野の表情は伺えないが、どこか上機嫌にも、見えた。

 ……それにしても、俺と闇野が転生した謎は、結局解けないままか。
 むしろ俺にとっては、謎が増えただけだ。
 もう"そういうもの"だと、割り切るしかないか……

「……あれ」

 ふと、声を漏らして闇野が足を止める。
 俺も、自然と足を止めてしまった。

 もうすぐで、校舎裏から出られるというのに、どうしたというのか。
 その視線は、校舎角の向こう側を見ている。
 俺の位置からは見えなかったので、位置を移動して……

「……さな?」

 そこには、さながいた。
 校舎の影に、身を隠すようにして。
 どうしてここに。

 ……まさか、今の話を聞かれたのか?
 『勇者』と『魔王』の、その話を……

「キミは……如月さん、だったね」

「あ、あ、あ、あの……」

 肩を震わせ、振り返り俺たちを見るさなの顔は……赤かった。
 ……なんでだ?

 さらに、身振り手振りが忙しく、慌ただしい。
 話を聞いていた、にしては、妙な反応だ。

「如月さん……今の話、聞いてた?」

「え、えっと……はい」

 聞かれていた……のか。
 どうする、結構込み入った話していたからな……ごまかせるか?

 しかし、闇野は慌てた様子はなく、落ち着いて聞く。

「じゃあ、どこから、聞いていたのかしら」

「それ、は……」

「そもそも、どうしてここにいるんださな」

「それは、光矢くんがきれいな女の人と、どこか行くのが、見え、て……」

 答えるうちに、さらに赤くなっていくさな。
 かわいいじゃないか。

 ほほぉ、俺が女子と姿を消したので、気になっていた、と。

「も、戻ってこないから、気になって……ここに。
 そしたら……こ、光矢くんが……」

「俺?」

「わわわ、私を……!」

 さなは顔を覆うようにして、黙り込んでしまう。
 そして、その場から背を向けて……逃げた。

「あ、さな!
 ……なんなんだ?」

「なるほど……」

 闇野は、なにかに納得したようだ。

「なんだ」

「彼女は、私たちの正体についてはなにも聞いてない。
 あなたが、あの子に一目惚れして、好きだって誓った場面に、遭遇したみたいね」

 闇野の説明に、俺は納得する。
 なるほど、そうか……だから、さなは妙に言動も行動も、不自然だったわけか。
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