転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

文字の大きさ
上 下
39 / 114
転生魔王は友達を作る

視線の正体

しおりを挟む


 視線を感じるようにはなってそれなりに経つが、視線の主はなにかを仕掛けてくるわけではない。
 敵意も、今のところは感じない……
 それとも、敵意をうまく、隠しているだけか?

 正体もわからぬ視線に、正直いい気はしないな……
 なんとか、視線の主を引っ張り出せないだろうか。

「真尾ー。そうしたんだよしんきくせえ顔して!」

「いや……お前は、悩み事がなさそうでいいなと思ってな」

「いきなりディスられた!?」

 ……視線が、消えた。
 視線を感じるのは、ほとんど俺が一人でいる時が、多い。
 これまでは、視線の中にたまたま俺がいる可能性も考えたことはあったが……

 やはり、視線の主は俺だけを、ターゲットにしている。

「他のクラスか……」

 あるクラスと一緒になるときに、視線を感じる。
 つまりは、そのクラスに視線の主がいるということだ。

 本人も、その可能性には当然気付いているはず。
 隠れて俺を見張るつもりなら、他にいくらでもやりようはある。

 つまり、視線の主は、自分の正体を隠すつもりがない?
 俺に見つかってもいいと……いや、むしろ見つけてみろと挑発している?

「どの生徒が……」

 教員、という線はないだろう。
 体育の教員は共通だし、教員が犯人ならばもっとバラけたタイミングで視線があっても良い。

 もっとも、あるクラスに犯人がいると思わせるために、わざとそのクラスと一緒のときに視線を送っている可能性もなくはないだろうが……

 その場合、俺を混乱させる意図になる。
 これに、混乱させる意図は見受けられない。

「どうしたんだよ真尾ー、さっきから黙って。
 あ、もしかして別のクラスに、かわいい子発見しちゃったとか?」

「アホ抜かせ」

 こっちが真剣に考えているというのに、このアホは……
 第一、サナ以外の女にうつつを抜かすほど、俺は愚かではない。

「まあまあそう言うなって。
 ほら、あの子とかあの子とか……あ、あの子もレベル高い!」

「……」

 目移り、してるな。
 「彼女できない~」とぼやいていたことがあるが、彼女できないのはそういうところが原因なのでは?

「あ、ほら見てみろよ!
 すげーかわいい子いるぜ!」

「だからうるさ……」

 鍵沼に無理やり顔を動かされ、俺は視線を向ける。
 その瞬間、俺は目を見開いた。

 そこにいたのは、一人の女子生徒だ。
 茶髪を後ろで一本に纏め、あいとはまた違ったツリ目がちの目。それに、背が高い……男子の平均くらいあるんじゃないか?
 凛とした立ち姿……

 確かに、周りの生徒に比べ一線を画すほどの、存在感だ。
 だが、俺が目を奪われたのは、決してその容姿に見惚れたからではない。
 アレも大したものだが、さなに比べれば天と地……

 いや、そうではなく。

「……見つけた」

「んん?」

「あいつか」

 これは、なんというタイミングか。
 たまたま鍵沼に見せられた女が、視線の主だ。

 女の視線は、俺を向いているわけではない。
 むしろ、今は俺に背を向けてすらいる。

 だが、わかる。

「それくらいで、俺を誤魔化せんぞ」

「おい、どうし……お、おい?」

 戸惑う鍵沼をその場に残し、俺は女の所へと向かう。
 今は、体育の中の自由時間……幸運にも、自由に動いたところで咎める者は、いない。

 みな、自分のことに集中していてこちらを気にしている者も、いないしな。

「おい」

「……ん?」

 俺の呼びかけに反応し、女は振り向く。
 その際、髪が揺れた。

 女は俺を見据え、俺も女を見据える。
 初対面のはずだが、どこか初めて会う気が、しない相手だ。

「お前か、ずっと俺のことを見ていたのは」

「……なんのことかな」

「とぼけるな」

 女は、落ち着いた様子だ。こうして俺を前にしても、動揺の欠片も見せない。
 しらを通しきれば、ごまかせるとでも思っているのだろうか?

 だが、俺はそう簡単にはごまかされてはやらん。

「少し、顔を貸してもらおうか」

「……いいよ」

 女は、にこっと笑う。
 屈託のない笑顔ではなく、微笑といった感じだ。

 初対面のはずの俺に話しかけられ、いきなりふたりきりにという言葉にも、拒否感を示さないとは。
 やはり、俺に話しかけられるのを待っていた?

「あっちだ」

「校舎裏? わー、いきなり女の子を連れ込むなんて、やらしーなぁ」

「……」

「なんか反応してよぅ」

 悪いが、軽口に付き合うつもりはない。
 単刀直入に、行かせてもらおう。

「お前は、何者だ?」

 校舎裏にて、ふたりきりになったのを確認し……俺は、女に向き合う。
 女は、相変わらず微笑を浮かべている。

「何者……って、物騒だなぁ。でも、お互いの名前も、知らないもんね?
 じゃあ自己紹介しよう、私は……」

「そんなことはいい。
 俺を観察するような視線、なにが目的だ?」

 ここまで来て、意味のない会話に時間を使うつもりはない。
 女の名前以上に、気になるのはその正体だ。

 取り付く島がないと感じてか……女は、小さくため息を漏らした。
 そして、微笑をさらに、深め……口端を、釣り上げて。

「あらら、気づかれちゃったんだ」

 まるで、いたずらをした子供が、いたずらが見つかったときのような……
 そんな表情を、浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...