36 / 114
転生魔王は友達を作る
尾行コンビ
しおりを挟む「さて……」
「……」
「……」
現在俺たちは、近くの公園に来ている。
俺は腕を組み仁王立ち、目の前のベンチにはあいと鍵沼を座らせている。
二人とも、気まずそうに視線をそらしていた。
「あ、あの、光矢クン」
「なんだ」
「私たち、なんで座らされてるんでしょうか」
「言わなきゃわからんか?」
「……わかります」
それに合わせて、鍵沼もこくこくとうなずく。
どうやら、こうなった原因はわかっているようだ。
俺が二人に問い詰めたいのは、もちろん尾行の件についてだ。
言っておくが俺は、怒ってはいない。
が、怒っていないのと今回の件を問い詰めないのとは、また別の話だ。
「で、お前らはいつから俺たちの後を追っていたんだ?」
「……最初から、です」
やはりか……大方、俺の考えていたとおりということらしい。
それにしても、最初からって……待ち合わせ時間、俺もさなも予定より早く合流したんだが……
「よく俺たちが合流する時間を知ってたな」
「ええと……私は、今日のデートのことさなちゃんに相談されてて。
で、さなちゃんなら、多分待ち合わせ時間より早く来るだろうな~って思って。
待たせたほうがいいよ~ってアドバイスはしたんだけど、一応行ってみたらやっぱりね。あはは……」
あいは、なるほどさなから相談を受けていたか。
まあ、デートを申し込んだあの場にはあいも一緒にいたし、帰宅後にあいに相談しても不思議はないか。
で、問題は……
「鍵沼は?」
そもそも、この男にはデートの情報なんて入ってこないはずだが……
はて、どこから嗅ぎつけたのか。
なぜか、あいの顔色が悪い。
「いやあ、それが、静海に相談されてさぁ」
「……あいに?」
あいが、鍵沼に相談? 今回のデートのことを?
どういうことだ?
あいに視線を向けると、うつむいている。
構わず、鍵沼は続ける。
「如月さんが、真尾にデートに誘われたから、どうしたらいいか的な相談を静海から受けてな。
で、そんときに待ち合わせ時間も聞いて。真尾なら、確実に時間より早く行くだろうなって思って」
「……あい」
「だ、だって、仕方ないじゃん!
さなちゃんから相談されたのはいいけど、私も男の子とデートした経験なんてないし……
だから、鍵沼に、男の子はどういうのが喜ぶのかとか、相談を……」
……つまり、さなの相談を受けたあいが、その相談を鍵沼にした、と。
これで、鍵沼もデートの件を知ることになった。
なんでそんなことを……と思ったが、あいもあいでわからないことが多かったということらしい。
「それにしても、なんで鍵沼なんかに……」
「なんかって」
「だって……こんなこと相談できるの、不本意だけど鍵沼くらいしかいないし……」
「不本意って」
他に、相談する異性がいなかった……ということらしい。
気軽に相談できたのが、鍵沼だと。
やっぱりこの二人の関係、よくわからん。
「じゃあ、二人はそれぞれ待ち合わせ時間より早めに来て、俺たちが来るのを待ってた、と」
「うん。あ、別に鍵沼と一緒に待ってたわけじゃないからね?
こそこそ、怪しい動きをしてたから放っておけなくてつい……」
「なにを!? 完璧な変装だっただろ!」
「どこがよ!」
二人で、ギャアギャアと言い合っている。
尾行中にこんな騒ぎを起こさなかったのは、なんだかんだ自分たちの立場をわかっていたのが大きいだろう。
俺は、小さくため息を吐いた。
「いや、別にいいんだ。さっきも言ったように怒ってないし……
ただ、こそこそしていたのが気になっただけだ」
怒っていない……そう伝えると、二人は安心したような顔になった。
「ただし、さなにもちゃんと話しておくように」
「ぅ……はい」
いくら心配だったからとはいえ、さなだってこそこそ見られていていい気はしないだろう。
二人に改めて忠告したことで、今日は解散となった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる