転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

文字の大きさ
上 下
31 / 114
転生魔王は友達を作る

うらやましい二人

しおりを挟む


「わぁ、クレープおいしそう……!」

「女子は好きだよなー、そういうの」

 あいも変わらず、真尾とさなを尾行しているあいと流水。
 その過程で、真尾とさなが買ったクレープ、それを影から見ながら、あいは目を輝かせていた。

「いいじゃんか、甘いの好きなんだから」

「別に悪いとは言ってないだろ」

 ようやく、映画の感動から解放され泣き止んだ流水を連れ、あいはこっそりと二人の様子を伺っていた。
 あそこは、確か最近オープンしたクレープ屋さんだ。
 いつか食べに行きたいと思っていた。

 それは、さなと来ることになると思っていたが……
 まさか、会ったばかりの男の子に先を越されるとは、思っていなかった。

「欲しいなら食えばいいじゃん」

「いや、それは……」

 ここで我慢する必要などない。流水の言葉はもっともだ。
 だが……クレープ屋から二人が離れていない以上に、今食べたくない理由がある。

 尾行中に、それも鍵沼と一緒の時にだなんて。
 そんな、初クレープの思い出は嫌だ。

「いいの、別に食べたくないし」

「お前さっきと真逆のこと……は、言ってないな」

 先ほど、あいはクレープがおいしそうだと言ったのだ。食べたいとは言っていない。

 とはいえ、そこまで意固地にならなくても、とは思うが。

「うーん、さすがに食べさせ合いはしないか」

「す、するわけないでしょ!」

 箸やスプーンで、あーんならいざしらず。
 クレープなんてものを、ダイレクトにあーんするには、いくらなんでも早すぎる。

 そういうのは、もっと段階を踏んで……

「って、なにを考えているんだボクは」

 さなをエスコートしている、光矢 真尾……悪い人では、ない。
 面白い人であるのには、違いないけれど。

 自分は当時の現場にいなかったが……初対面の、それも公衆の面前で堂々と告白など、どうかしている。
 そう思ったと同時……うらやましいという気持ちも、あったのだ。

 だって、まだ名前も知らない相手から告白されるなんて、それは一目惚れというやつだろう。
 一目惚れされ、公開告白されるなど、それは女冥利に尽きるのではないだろうか。

 ……まあ、恥ずかしいことに変わりはないだろうが。

「お、二人が動き出したぞ」

「ん」

 流水の声に、意識を戻す。
 二人はクレープを食べ終えて、デートの続きといくようだ。
 あいと流水も、後を追う。

 直前、クレープ屋に後ろ髪を引かれたが……ぐっと、こらえる。
 いいさ、もっといいタイミングで、食べに来るから。

 さなと食べに来るか、それこそデートをするときのために……

「クレープで親交が深まったのか。真尾のやつ、あんな優しい顔俺には向けてくれないのに」

 嫉妬の感情のようなものを覗かせる流水。
 気持ち悪いものだ。

 そんな流水は無視し、あいは二人の後を追う。
 その後はショッピングに移り、二人は服屋や雑貨屋を見ている。

 そんな二人の姿を見ていると……いつか自分も、と、思ったりするわけだ。あいも。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...