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転生魔王は友達を作る
二人で楽しむ時間
しおりを挟む映画を観た後に、フードコートで昼食を食べる。
思えば、デートどころか誰かと映画を観て、その後飯を食べるなんて、初めてかもしれないな。
ちょうど二人用の席が空いていたため、そこに座り、二人でうどんをすする。
最中の会話の内容は、先ほど観た映画の内容だ。
事前に考えていた通り、映画の内容を出せば、会話の内容には困らない。
「あそこは、本当に泣いちゃいました」
「確かに、感動的だったな」
そもそも、映画を観た直後は、無性に誰かと感想を言い合いたくなるものだ。らしい。
そのため、どちらともなく話は弾み、また会話が途切れることもない。
二時間の映画だ、昼食の時間程度で、語り尽くせる内容ではない。
「んっ……ぷは。ごちそうさまでした」
うどんを完食し、水を飲み干したさなは丁寧に、手を合わせる。
俺はすでに食べ終えていたので、さなが食べる様子を見ていた。
もちろん、ずっとじっと見ていたわけではないが……
それでも、さなは恥ずかしそうにしていた。
「じゃあ、そろそろ次に行こうか」
「はい。
えっと……次は、どこへ行く予定ですか?」
「予定とは言っても、実はこのモール内を見て回ろうと思っててな。
どうかな」
「いいと思います。光矢くんは、ここによく来るんですか?」
「いや、実を言うとあんまりな……だから、さなにも案内してもらいたいと、思ってるんだが」
「でしたら、ぜひ!」
デートは、相手を楽しませることが最低条件。
だが、こちらが提示したレールに相手を乗せたままよりも、こちらから弱みを見せて相手にも見せ場を作るのも、また重要だと、どこかに書いてあった。
今回だと、ただ俺が案内するより……さなが俺を案内することで、互いに飽きさせないというものだ。
ちなみに、俺は本当にこのモールにあまり来ない。
なので、さなに案内してもらえるというのなら、助かる。
それに、さなに案内してもらうことで、さなの趣味も知ることができるだろう。
たとえば、服とはいってもどんな服が好みか……案内する店によって、甘いものが好きなのかどうか、といった具合に。
「どんなところがオススメとかは、あるのか?」
「うーん、どうしても女の子視点になっちゃいますが……
ここ、映画館や食べるところもありますが、特に女の子向けの服屋や雑貨屋が、多いんです」
「ほぉ」
女の子向けのものが多い、か。
これは、ラッキーかもしれないな。
さなの好きなものを知れる、チャンスだ。
さなの案内を下に、俺たちはデートを続ける。
さなが案内してくれるおかげか、案内された場所はどこも輝いて見えた。
「あっ」
ふと、さなが足を止める。
その視線は一箇所に向いており、その先にはさなの興味を引くものがあるのだと、わかる。
おそらくそれは、意図的に足を止めたのではないのだろう。
つい、足を止めてしまった様子。
俺も、その視線を追う。
「クレープ屋か」
「! あ、いえこれは……」
俺の言葉に、我に返ったかのようにさなが反応する。
若干顔を赤くして、ぶんぶんと手と首を振っている。
クレープが好きなのが恥ずかしい……というよりは、つい足を止めるほどに夢中になってしまったのが恥ずかしい、といったところだろう。
「ほしいのか?」
「あ、の、その……」
否定しようにも否定しきれず、小さくうなずく。
その様子がまた、小動物みたいでかわいいのだ。
こんな姿を見ていると、なんでも買ってやりたくなる。
「よし、じゃああれも買うか」
「じ、じゃあ今度こそ私が!
映画の券も、さっきの昼食だって、結局出してもらいましたし……」
「気にするなって」
初デートくらい、少しくらいはカッコつけさせてもらいたいものだ。
さなを押さえつつ、クレープ屋へと向かう。
「いらっしゃい!」
「ほら、どれがいい?」
「うぅ……では、バナナを」
「俺はバニラ」
「あいよ!」
結局その場は、俺が出すことにして二人分のクレープを頼む。
ふむ、クレープか……初めて、食べるものだな。
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