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転生魔王は友達を作る
感受性豊か
しおりを挟む「結構いろんなものがあるんだな」
映画の券を買った俺たちは、近くを見て回ることにした。
服屋に本屋と、さすがいろいろなものが並んでいた。
あまり、こういうところには来たことがないからな。
新鮮だし、見ているだけでも楽しい。
「光矢くんは、あまりここには来ないんですか?」
「あぁ。さなは?」
「中学の頃は、友達とよく来てましたよ」
やはり女子だからか、ショッピングとしてモールに来ることは多かったらしい。
ここで言う友達とは、あい以外にもいることを指しているのだろう。
引っ込み思案な性格とはいえ、友達付き合いはうまそうだ。
だから、誘われるままに、あるいは自分から誘い、ショッピングに来ていたのだろう。
「あ、そろそろ時間ですよ」
「お、もうか」
さなに指摘されて腕時計を見ると、上映時間十五分前……
そろそろ、入場開始がアナウンスされるころだ。
俺たちは、映画館へと向かう。
映画とは、本編前の予告も見るのが醍醐味だ、と昔鍵沼に聞いたことがある。
ポップコーンとジュースを買い、俺たちは映画館の中へ。
案内されたシアター内、指定された席を探し、そこに座る。
「……!」
ここで、俺は重大なことに気づく。
さなと二人で、映画を観に来ている……つまり、映画を見る際、俺たちは隣同士に座ることになる。
さなと、隣同士……
このシチュエーションが、早くも叶うとは!
「光矢くん?」
「え。あ、あぁ、座るさ」
衝撃の事実に立ち尽くしていた俺を、さなが現実へと引き戻す。
暗闇、隣同士……ふむ、いいじゃないか、映画鑑賞!
それに、せっかくの時間だ。
あまり映画というものを観たことがなかったため、楽しませてもらおうじゃないか。
その後少しして、映画が始まった。
「……」
その内容は、要点を纏めれば学生同士の恋人の物語で、余命を告げられた彼氏とその彼女の切ないストーリーを描く、といったものだった。
切ない恋愛もの……といったところだ。
会場内では、あちこちからすすり泣く声が聞こえていた。
映画館では静かにということだが、あふれる感情は止められないといった感じか。
それに……隣では、さなも映画を観て、泣いていた。
「っ……」
声を押し殺して、それでもあふれる涙は止められない……
隣とはいえ、暗闇だからさなの顔はよく見えない。
それでも、見えた……さなが流す涙は、きれいだと、思った。
「うぅう、いい映画でした……」
俺も、涙こそ流さなかったが、その内容にすっかり取り込まれてしまった。
集中していたためか、二時間はあっという間だった。
映画を観終えたさなは、まずいい映画だったと、感想を漏らす。
最初こそ俺に涙を見られるのを恥ずかしがっていたようだが、もはや諦めたようだ。
とりあえず、ハンカチを渡しておく。
「ありがとうございます……
すみません、こんな……」
「いや。感受性豊かで、いいと思うぞ」
なにかに感動して泣けるというのは、それだけで素晴らしいことだ。
なにも恥じることはないだろう。
「うぅ、ぐす……」
「なんでアンタまで泣いてるの。
ていうか、うるさいっ」
他にも、似たような人たちはいる。今聞こえたのは、男の方が泣いているが。
……気のせいか、なんか聞いたことのある声な気がするが。
まあ、これだけ人がいれば、そういうこともあるだろう。
「じゃあ、昼食でも食べていこうか」
「はい……」
まだ涙を拭っているさなの同意を得て、俺たちはフードコートへと向かう。
このモール内には、食べるところも充実しているのだ。
フードコートには、いろいろある。
ラーメン、牛丼、うどん……さて、なにがいいだろうか。
どこで食べようかは決めていたが、なにを食べるかまでは決めていないからな。
人はそれなりに多いが、なんとか二人用の席を確保。
その後、昼食選びへと移ることに。
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