転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

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転生魔王は友達を作る

たった一人の写真部員

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「ささ、どうぞどうぞー!」

 俺、さな、そしてあいは部室内へと招き入れられた。
 そして、机と椅子を用意され、さな、俺、あいの並びで座る。
 机には、コップに入れられたお茶が出された。さらに茶菓子まで。

 俺の正面には、部長である女がにこにこと笑顔を浮かべながら、座っていた。
 俺たちを、順に眺める。

「では、改めまして!
 ワタシは三年生、安達 なぐも!
 この写真部の部長にして、唯一の部員よ!」

 先ほども聞いた情報を、改めて告げる。
 部長……なぐも先輩は、一人だというのにやたらと元気だ。

「いやあ、でも嬉しいよ! まさか一気に、部員が三人も増えるなんて!」

「いや、私たちは……」

 それに、どうやら話を聞かない人種らしい。
 彼女の中で、話が進行している。

 さなは困ったように笑い、あいがおずおずと手を上げる。

「あの……安達、先輩」

「ん? なにかな後輩くん!」

 後輩……俺たちが新入生で、なぐも先輩が上級生という点では、合っているのだが……
 そこには、単なる新入生、在校生だけではない響きを感じた。

 あいも、おそらくは俺と同じことを感じながらも、そこはとりあえず置いておく。

「えっと……なんで、先輩一人、なんですか?」

「あぁ、はは。そうだよね、やっぱり気になるよね!」

 いずれ切り出されると思っていた問題、それに直面し、なぐも先輩は少しだけ顔をしかめる。
 そして、腕を組み……

「それが、以前はもっと部員がいたんだよ。
 でも、先輩たちが卒業してから……かな。急に、みんなやめていったんだよ」

「……先輩は、心当たりは? 変わったこととか」

「まったくないよ。ただ、変わったことか……このマネキン人形を買ったことかな。
 それに、学内のいろんな人に、モデルを頼むようにしたとか」

 原因不明の、部員がやめていく問題……本気で、原因がわからないと頭を捻らせている。
 しかし……俺は、今の話を聞いて、予想が出来てしまった。

 おそらくは、さなも、あいも。

「えぇと……ねえ、なんて言ったらいいと思う」

「俺に聞くな」

 さすがに、本人に直接言うのはためらわれるのか、あいが小声で話しかけてくる。
 とはいえ、俺に聞かれても困る。

 原因は、おそらく……というか、確実になぐも先輩の行動、もとい奇行にあるだろう。
 初対面の俺たちですら、すでにその片鱗を見ているのだ。

 マネキン……それも、妙にリアルなものだ。子供が見たら、確実に泣くだろう。
 人体模型の方がまだましだ。

「……」

 これを、いきなり買ったり……似たような奇行を、してきたのだろう。
 その結果として、部員はやめていった。
 その奇行に、ついていけなくなったのだろう。

 俺も、出来るならばもうこの人と関わり合いにはなりたくはない。
 そのうち、マネキンにしていたようなことを要求されそうだ。

「じゃ、俺たちはこれで……」

「えー、まだ来たばっかりじゃないか!
 それに、お茶も飲んでないし」

 お茶になにか入れられているんじゃないかと疑っている……とは、さすがに言えないが。
 出されたものを口にした時点で、簡単に逃げ出せなくなってしまう。

 ならば、最初から手を付けないのが正解。
 なあに、去る理由は、いくらでも考えられる。

「別の部活も見に行きたいので。行こう、さな、あい……」

「んぐ……っ」

「……」

 席を立とうと、隣を見ると……茶菓子を食べ終え、お茶でそれを流し込んでいる、さなの姿が目に入った。
 出された茶菓子、そしてお茶を、綺麗に口にしてしまっていた。

「ごくっ……い、行くんですか?」

「……いや、もう少しいよう」

 さすがに、茶菓子とお茶を完食してしまった上ですぐに去るなど、できるはずもない。
 俺は、上げかけていた腰を、静かに下ろした。

 対するなぐも先輩は、ただただにこにこしている。
 これも計算通りなのか、それとも単においしくいただいてもらって嬉しいのか。

「でも、なんで部室は、こんな端っこに……」

「それがね……部員がワタシ一人になったからって、前使っていた部室を追い出されたんだよ! 理不尽だと思わない!?
 それに、今年中……つまりはワタシが卒業するまでなんだけど、部員を五人にしないと……つまりあと四人集めないと、廃部だって言われてね」

 おっと……これは、やたらと重たい理由が出てきたぞ。
 とはいえ、なぐも先輩が卒業するまで廃部は待ってくれる……なら、そこまで深刻に考えることでも、ないのではないか。

「キミたちのおかげで、三人は埋まったけど……あと一人かぁ」

 この人、廃部にはしたくないらしい……しかも、やはり俺たちのことを数に入れている。
 このままでは、なし崩し的に部活に参加させられてしまいそうだ。

 写真部とは興味があったが、廃部の危機……おまけに危ない先輩もいたのでは、考え直さなくてはいけないだろう。
 早いうちに、入部の意志がないことを示さなければ……

「あの、俺たちは……」

「なんて、大変な……わかりました! 私たちでよければ、入部します!」

「!?」

 やんわりと断ろうとしたところへ、さなからのまさかの発言。
 正気か……!? しかも、私"たち"って言った……!?
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