11 / 114
転生魔王は友達を作る
初登校!
しおりを挟む翌日。
今日から、本格的な高校生活が始まる。
昨夜は不思議と、よく眠れたな……帰宅してから、少しだけとはいえ寝たから、あまり眠くはならないかと思っていたが。
「あら、おはよう」
「おはよう」
今日から新生活とはいえ、なにがどう変わるというわけでもない。
いつも通りの、光景だ。
起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝ご飯を食べて……
今までと違うのは、腕を通す制服と、鞄くらいだ。
「じゃ、いってきます」
「えぇ。頑張ってね」
その「頑張ってね」には、いろいろな意味があるのだろう。
俺は家を出て、学校へ向けて登校する。
これまでとは違う、新しい道……なんとなく、真新しい気分だ。
これからは、ほぼ毎日この道を通ることに、なる。
「……お」
しばらく歩いていると、前方に見知った後ろ姿を見つけた。
あの歩き方、そしてその隣の小柄な少女は……
隣とは言っても、不自然なほどに距離が開いてはいるが。
「おはよう、二人とも」
「わっ、びっくりした」
音もなく二人の背後に忍び寄り、俺は声をかける。
そのうちの一人……あいは、肩を跳ねさせてわかりやすく驚く。
「こ、光矢クンか……びっくりした」
「よぅ、おはよう」
「おぉ」
「お、おはよう」
二人の間に不自然な距離があるため、俺はその隙間へと収まる。
不自然に距離が出来ていたというよりは……わざと、開けていたんだろうな。
「一緒に登校とは、仲が良いんだな」
「……光矢クンそれわざと言ってる?」
あいが、顔をしかめる。鍵沼も、同じような表情をしている。
まあ、わかっていたことだが……それにしたって、わかりやすいな。
「家が隣同士だと、こうなっちまうだけだよ」
「あんたが家を出るタイミング遅くすればいいのよ」
「なんで俺が!」
家が隣同士……家から学校へ行く時間を考えれば、自然と家を出る時間も決まる。
同じタイミングで家を出れば、二人が家を出る時間が重なるタイミングは被りやすい、ということだ。
二人ともぎゃいぎゃいいがみあっている。
中学が別だったのなら、こんなこともなかったのだろうか。
「ほら二人とも、じゃれてないで行くぞ」
「じゃれて!」
「ない!」
息ぴったりじゃないか。
二人は、駆け足で俺の両隣に並ぶ。
「ところで、昨日はちゃんとさなちゃんを、家まで送った?」
「もちろんだ」
あいが、昨日のことを聞いてくる。
やはり、気にしていたのか。
俺は、紳士な男だからな。やることは最後まで、ちゃんと責任を持つさ。
あいは、俺の答えに満足したかのように、うなずく。
「そっかそっか。
ま、昨日のことは電話で聞いてたから、光矢クンがちゃんと送ってくれたって言うのは知ってたんだけどね」
「電話、か」
あいとさなは、中学からの友人同士……しかも同性なら、互いの連絡先を知っていても、不思議はないか。
二人がどんな会話をしたのか、興味はあるが……
それは、プライバシーというものだ。
気になるが、むやみな詮索はしないでおこう。
「真尾は、如月さんと連絡先交換したのか?」
「アホか。初日からいきなり、そんなことはできん」
「……俺バカなのかな。連絡先聞くより公開告白のほうがよっぽどレベル高いと思うんだけど」
「光矢クンってちょっとずれてるのかな……?」
俺が、ずれている……?
今までそんなこと、考えたこともなかったが……
昨日の周囲の反応、それに両親の反応……俺は、ずれていたのか?
「あ、さなちゃんだ」
「なんだと!」
あいの言葉に、俺は視線をあげる。その視線の、先に……
……美しい黒髪が、輝いているようだった。
姿勢正しく歩いている、少女……
後ろ姿だけで、彼女がどれほど清純な人物か、見て取れるようだ。
あいは駆け寄っていき、その背中に抱き着いた。
うらやましい。
「おっはよー、さなちゃん!」
「きゃっ……お、おはようあいちゃん。
びっくりした……」
……あいのやつ、俺にびっくりしたとか言っておきながら、自分でも似たようなことをしているではないか。
俺たちは、あいを追いかけるようにして、二人に近づいていく。
「あ……お、おはようございます、光矢くん。鍵沼くん」
「あぁ、おはよう」
「おはよう、如月さん!」
さなのやつ、鍵沼にもちゃんと挨拶するとは……いいやつだ。
別に無視しても構わないだろうに。
意図せず、昨日途中まで一緒に帰ったメンバーが、合流した。
「はー、毎日家を出たらさなちゃんがいてくれたらいいのに」
「お前な……」
「まあまあ、二人とも……」
おそらくだが、これからはこういう風景が、普通になっていくのだろうな。
騒がしいというか、賑やかというか……いいな、こういうのも。
これまでは、たまに登校中に鍵沼に絡まれる形だったし……
「あれ、真尾なんか楽しそう?」
「そうだな。お前がいじられている姿を見るのは、悪くない気持ちだ」
「ひでぇ!」
初めて歩く道も、やがては慣れ親しんだ道へと変わっていく。
こういうのも、悪くはないな。
「私、男の子と登校するの、ずいぶん久しぶり……」
「私もそうかなー。女子校だと、そんなこともなかったしね」
「俺は男なんですけど!?」
会ったばかりのメンバー……だが、会話が途切れることは、なかった。
学校に着くまでの時間は、あっという間だと感じるほどに。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる