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転生魔王は友達を作る
帰宅したあとに
しおりを挟むさなを家へと送り、俺は一人自宅への道を歩く。
ああいうのを、豪邸って言うのだろうか。いつか家に上がってみたいものだ。
さすがに、初日から上がらせてもらうのも非常識だしな。
その後は、特になにが起きるわけでもなく……家へと、帰宅する。
すでに両親が、帰っていたのだが……
「真尾、お前、入学前に女の子に告ったって本当か!?」
「私、恥ずかしくて仕方なかったわよ!?」
両親が、驚いた様子で問い詰めてきた。
どうやら、俺がさなに告白したことは、両親の耳にも届いていたらしい。
とはいえ、両親が俺の親だ、と周りにバレたわけではない。
ただ、両親から見れば、入学前から公開告白した男は自分たちの息子、とわかっていたわけで……
まあ、恥ずかしかったわけだ。
「いや、つい……」
「ついでやらないぞそんなことは!?」
別に、両親は本気で怒っているわけではないのだろうが……それはもう、ものすごい勢いだった。
やっぱりあれはやりすぎだったらしい。
その後、告白した女の子とどうなったかを聞かれた。
「とりあえず、家まで送りはしたけど……」
「いきなり!? はぁー、昔から思ってたが、お前のその行動力はどこから出てくるんだ」
行動力、か……どこからと聞かれれば、それは魔王時代からだろうな。
行動力さえもなければ、荒々しい魔族をまとめ上げることなどできなかったからな。
前世と呼べる記憶。それが、今もあってよかった。
自分が転生した理由などわからなかったが……こうして、持っていた知識を活かすことができるのはありがたい。
転生魔術とは、かなりの大魔術だ。
それを自分で使ったわけではない。だとしたら、何者かの意図が働いているのか。
「…………」
と、自室のベッドの上で、ぼんやりと考える。
こうしたことは、今までもたまに考えることはあった。
考えてもどうしようもないし、たとえ原因がわかったところで、だからどうしようというわけでもない。
なってしまったものは、なってしまったのだ。
このまま、時の流れに身を任せればいい。
それよりも、だ。今は……
「さな……」
目を閉じれば、浮かんでくる一人の女子の顔。
如月 さな……これまで出会ったどの女子よりも、俺が魅力を感じた相手。
この体に転生したばかりの頃は、まだ人間相手に気持ちが動くことはなかった。
それはそうだ。前世で魔族だった俺は、人間の異性を好くなど、一定以上の感情を抱くことはなかった。
それは、種族間ゆえの感性の違い。
しかし、この体は成長することにより……俺の感性は、だんだん人間に近づいていった。
中学に上がる頃には、もうすっかり人間と同じ感性になっていたのだと思う。
そんな俺が、こうも心動かされたのは……彼女が、初めてだった。
「……連絡先でも、交換しておくんだったか」
科学の発展したこの世界では、携帯電話というものが普及している。
手のひらサイズの機械で、いつでも相手と連絡が取れるのだ。
前世だと、離れていても魔族同士なら、頭の中で会話ができたが……
人間にそのような芸当は、できなかった。
向こうにはなかった、科学という力で、便利なものが増えていった。
「まあ、毎日会えるのだからな……」
連絡先の交換……それをしなかったことを後悔するも、どうせ毎日会えるのだからと、切り替える。
まあ、会っていきなり連絡先を聞くというのも、驚くかもしれんしな。
そのまま俺は、着替えることもせずに眠ってしまう。
疲れていたのだろうか……人間の体というやつは、この程度でも疲れを溜めてしまうのだな。
その後、母親に強制的に目を覚まされた。制服のまま寝るとしわになるから、せめて着替えろとのことだ。
「……」
とはいえ、一度起きてしまったので……俺は、散歩に出かける。
入学式で早く学校が終わったからといって、他にやることもないしな……
「……桜も、散り始めてるか」
学校の近くでは満開だった桜も、ウチの近くでは散り始めている。
なんとなく、寂しさを感じる。
ともあれ……明日から、新たな生活が始まるのだ。
気を、引き締めなければ。
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