転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜

白い彗星

文字の大きさ
上 下
3 / 114
転生魔王は友達を作る

小柄のツインテール

しおりを挟む


 如月 さな。彼女も、頭がいい……と。
 いいじゃないか、この魔王の恋人ともなれば、バカには務まらんからな。
 だが悪く思うなさな。いかに面倒な入試トップの挨拶があったとはいえ、俺は常に一番でないと気が済まんのだ。勉学も運動も何事も。

 魔王、だからな。

「ふふふふ……」

「おい、あいつ笑ってるぞ」

「やだ、先生呼ぶ?」

 おっと、思わず感情が昂ぶってしまった。

 そのさなだが、さっきから机に座ったまま、俯いて顔を上げようともしない。なんだか耳が赤いような気もするが、まさか風邪か?
 魔族は風邪など引かない。が、軟弱な人間の体は脆い。この俺でさえ、この体で何度風邪に犯されたことか。

 まったく、仕方ないな。未来の恋人の体調を気遣うのも、魔王たる俺の務めか。

「あ、立ち上がったわよ」

「如月さんの席に向かってない?」

 俺は席を立ち、さなの席へと向かう。
 先ほどは告白を断られてしまったからな……ここで、気遣いの出来る男アピールだ。

「さな、どうした。具合でも悪いのか?」

「名前呼び!?」

 背後から声が聞こえた。振り向くと、先ほどからこそこそやっている女子が、しまったと言わんばかりに口を押さえていた。
 まったく無粋な。少しは静かにできんのか。

「どうしたさな、聞こえているか?」

 返答は、ない。

「……あいつ、公開告白して振られたんだよな」

「正確には、如月さんが逃げたって話だけど」

「そんなの私だって逃げるわよ」

「つまりあいつは、公開告白して逃げられた相手に、傷も癒えないうちに下の名前で呼びかけてんのか? メンタルどうなってんだよ」

 やれやれ、外野がうるさいが……ま、どうでもいいか。
 俺が用があるのは、さなだけなのだから。

 それから何度か名前を呼びかけるが、本人は小刻みに震えながらうつむくばかり。
 やはり風邪か?

 今日はすでに終わった始業式と、その後のホームルームのみだ。具合が悪いなら、早く帰るに越したことはない。

 なんなら、俺が送ってやろうか。
 そう、声をかけようとしたとき……

「ちょっと待ったぁ!」

 ダンッ、と、机を叩く音が聞こえた。それは、さなの机の隣から……座っていた女子生徒が「ひっ」と声を漏らした。
 机を叩いた人物は「あ、ごめん」と平謝り。

 俺は、視線を……下へと滑らせる。俺の目線に、そいつはいなかったからだ。
 視線を落とした先……そこには、一人の小柄な女が立っていた。

「なんの用だ、チビ」

「ちっ……!」

 女は、固まった。なんだ、なにか用事があるから話しかけてきたのではないのか。黙ってるんじゃない。
 徐々に、女は顔を赤くしていく。トマトのようだ。

 その後、何度か深呼吸を繰り返し……

「ふぅ……し、初対面でチビ呼ばわりか。ふぅん、なかなかおもしろいね、キミ。そのおもしろさに免じて、許してあげるよ」

 かなり無理をした様子で、そう言った。
 そしてなんか知らんが、許された。

 それにしても……小柄ではあるが、度胸はあるらしいな。
 他の連中が遠巻きに見てくるだけだった中、ただ一人、俺に物申した。
 女であるからと軽く見るわけではないが……なかなか、見どころがある。

 強気に見えるツリ目がちの目、小柄だかどこか迫力を感じさせる雰囲気。
 茶髪を、左右で結って……あれ、なんて言うんだっけか……

「なんだ、その……尻尾みたいな……」

「ツインテール! キミやっぱり失礼だな!」

 そうツインテールだ。短めのツインテール。そうだそうだ。
 小柄のツインテールは、腰に手を当て俺を見上げている。

「あ、あいちゃん……」

「安心してさなちゃん。ボクがビシッと言ってやるから」

 ふむ、体格の違う異性にも物怖じしない度胸。やはりなかなかの好評価に値するぞ。

 というか、ここに来て初めてさなの声を聞いたな……一言だけではあるが。
 うん、鈴の音のように凛として、それでいて透き通るような、実に耳当たりのいい声だ。

「あの、聞いてる?」

「もちろん聞いているぞ。
 ……で、なんの用だ小柄のツインテール」

「っ……言い返してたら一生話が進まない気がするから、ひとまずそこは置いて……はおけないけど、とりあえず話を進めようか」

「うむ」

 言葉にならないかのように、手をぶんぶんさせている。どうした急に。
 その後、これまたなにかわからないが、謎の葛藤を終えたらしい。
 小柄のツインテールは、改めて俺に向き直る。

 長いな、小柄のツインテールって。

「コホン。ただその前に、まず、ボクには静海しずみ あいって名前があるんだから、チビとかツインテールとか、体の特徴で呼ばないでほしいかな」

「そうか……それはすまなかったな」

 やっぱり、ひとまず置いてはおけなかったようだ。

 ただ……指摘されて、ハッとする。確かに俺も、昔デカ男とか言われた時には、それを言った女を消しずっみにしてやろうと思った。
 やられて嫌なことはやらない。人間世界の常識だ。

「お、おう。なんか素直に謝られると気味悪いな」

「俺だって、悪いと思えば謝るさ」

 そう、悪いと思えば謝る。
 人間世界の常識以前に、俺は素直な性格なのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...