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ダンジョン創造者とダンジョン攻略者

第19話 ダンジョンへ行きたい、でも行けない

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 クレアの提案で、俺とクレアはパーティーを組むことになった。
 それぞれ、DランクとEランクの冒険者である。それがパーティーを組むことで、俺は本来ならEランクのクエストしか受けられないはずが、Dランクのクエストも受けられるというわけだ。

 冒険者としてのランクを上げるには、とにかくクエストをこなすしかない。それも、難易度の高いものであればそれだけ、ランクも上がりやすくなる。
 俺にとっては、願ったりだ。

「ただ、クレアはそれでよかったのか?」

 今回の申し出、俺にとってはありがたいものだったが……正直、クレアのメリットが見当たらない。
 俺はクレアのおかげで高いランクのクエストを受けられるが、クレアは……なんの、得があるのだろうか。

 これはクレアから提案してくれたものだ、よかったもなにもないとは思うが……本人がどういうつもりなのかは、気になる。

「その、妹は昔からおっちょこちょいで……以前から、行動を共にしてくれる人がいれば、とは思っていたんです」

 そんな俺の疑問に答えるのは、姉であるクレナイ。正直、二人の見た目は似てはいるが、それ以外は全然だ。
 しっかりした雰囲気のクレナイは、実際に俺のダンジョンを難なくクリアしていく。対してクレアは、どこか頼りない印象を受ける。

 だから、姉としても心配になる……か。

「それはまあ、なるほど」

「なるほど!?
 もー、私はしっかりしてるよお姉ちゃん!」

 ……どうやらクレア自身には、自分はおっちょこちょいだという認識はないらしい。
 それが余計、姉に心配を与えてしまっている、ということだろう。

 見た感じ、ぽわぽわしてるもんなぁ。
 クレナイに似た顔なのに、雰囲気が違うだけでこうも変わるのか。

「私はその、一人だと心細いから……
 それに、ソロよりもパーティーを組んだほうが、クエストの成功率はぐんと上がりますからね!」

 クレア本人は、寂しいから、という単純な理由ではあるようだ。
 他にも、多人数であればクエストのクリア率も上がる、と。

 確かに、ダンジョンにもソロで挑む場合と、パーティーで挑む場合とでは、そのクリア率も格段に違う。そういうことだろう。
 ……クレナイは、ソロでクリアしまくっているけど。

「まあ、そういうわけで。
 これからよろしくお願いしますね、レイ兄さん!」

「はい、よろしく」

 明るい笑顔で手を差し出されて、俺は握手に応じる。
 ここに、DランクとEランクの冒険者のパーティーが結成された。会ったばかりで、お互いのことをよく知らない間柄だ。

 冒険者、パーティーと聞けば、ぼんやりとどんなものかは想像がつく。しかし、それを実際に自分が体験することになるとは。
 どんなものかはわかるが、これまでダンジョン内での光景しか見たことがなかった俺にとっては、なにもかもが初めてのことだ。

 まったく、俺はクレナイの弱点を探るためにこの世界に降りてきたのに。どうしてこんなことに……

『主様主様』

「ぉ……」

 いきなり、頭の中に声が響いた。あまりに突然のことだったので、思わず声が出てしまったが……
 出しきらずに、小さく留めたことを褒めてもらいたいくらいだ。おかげで、クレナイにもクレアにもバレてはいない。

 これは、俺の頭の中にだけ聞こえる声。そして、この声の主……俺のことを主様と呼ぶのは、ただ一人、いや一匹だけだ。

『……ラビ、か』

『そうっす。いやぁ、ちゃんと声が届いたようでなによりっす』

 ラビ……俺が作り出した、うさぎみたいな生き物。実際、ラビがなんなのか俺にもよくわかってない。
 とりあえず、話し相手がほしくて、その結果としてラビを生み出したのだ。

 そのラビは、あの空間に残してきてしまったわけだが。
 ラビから俺だけじゃなく、俺からラビに対しても声を届けられるというわけか。しかも、頭の中で言葉を思い浮かべるだけで。

『どんな調子っすか、そっちは』

 どうやら、俺のことを気にかけてくれているらしい。かわいいところがあるじゃないか。
 ただ、どんな調子と言われても、困ってしまう……んだよな。クレナイをぎゃふんと言わせるとか言っておいて、なにも進展していない。

 まさか、クレナイの弱点を見つけるために一緒にダンジョンに潜るどころか、冒険者ランクとやらのせいでダンジョンに入れず、ランクを上げるためにクレナイの妹とパーティーを組むことになった……とは言えない。

『えっ、とぉ……クレナイとは、会えたん、だ』

『えっ、マジっすか! パネェ!
 早速宿敵と出会うとか、主様持ってますねぇ! やべぇ!』

 ……なんだろう、嘘はついていないのに、心が痛い。
 クレナイと会ったことはラビの言うように、すごいことだとは思う。この広い場所で、いくらクレナイの行動している地域に狙いを定めたとはいえ、降りた先でこんなにも早くクレナイと会えるなどと。

 これで、クレナイとダンジョンに入ることができていたら、言うことなしなんだけどなぁ。

『いやぁ、このモニターからじゃダンジョン内の様子しか見れないっすからねぇ。
 でもま、クレナイと会ったってことは、ダンジョンに足を踏み入れるのも時間の問題っすね』

『!』

 しまった……そうだ、そうだった。
 あの空間にあるモニターは、ダンジョン内の様子を見ることができる。そう、ダンジョン内の様子しか見れない。
 だから、ダンジョンの外でなにをしていようとわからない。俺が、冒険者としてせこせこ行動していることもバレはしない。

 だが、ダンジョン内に入れば、すぐにモニターに映る。いつまでも、俺がダンジョン内に姿を現さなければ、不審に思われる!

『そ、そうねぇ……あははは』

『なんか主様変じゃありません?』

『変じゃないよ!』

 まずい……これは、早くダンジョンに入らないと、まずいことになる!
 大見得切って出てきて、冒険者としてちまちまやって……そんなの、バレるわけにはいかない!
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