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第二章 現代くノ一、現代社会を謳歌する!
第68話 連絡先交換しませんか!
しおりを挟む「美愛ったら、またそんな格好で」
「……別にいいでしょ、夜のコンビニくらい」
新たに店内に入ってきたのは、赤色のジャージ姿の女の子。
栗色の髪は薄めで、髪型はツインテール。印象的なのは、猫みたいに大きな目がきりっとしているところだ。
どうやら、篠原さんの娘のようだ。
ジャージ姿なのは、こんな時間だしコンビニ程度ならばわざわざおしゃれをすることはないという気持ちからだろう。
その気持ちはよくわかる。
「……お母さん、その人と仲いいの? ずいぶん親しげに話してたけど」
「あら、そう見える?
この子、一緒に働いてる瀬戸原くん。瀬戸原くん、娘の美愛よ」
「こ、こんばんは。篠原さんにはその、バイトを始めてからお世話になってまして」
「……そう、ですか」
「まったく。ごめんなさいね、この子無愛想で」
「い、いえ」
な、なんだろう……周りにはいなかったタイプだ。
桜井さんも火車さんも、そして久野市さんも。それぞれ性格は違うけど、積極的に話しかけてくれる。
だけどこの人は……すごく、話しにくい。
初対面の人に言うことじゃないけど、篠原さんの言う通り無愛想なのだろう。
だって、怖いんだもん! なんていうか、すごく睨みつけてくるんだもん!
「どもー、俺は木葉の親友の神崎 ルアでーす!
あ、木葉ってのはこいつの下の名前なんだけどね」
ふと、明るい声が響いた。それは、ルアのもの。
ルアはまるで、俺の肩を組んだかのようなテンションで話す。というか、レジの境がなければ実際に肩を組んでいただろう。
……この流れでよく、自分も話に入ってこようと思ったな。
その胆力、すさまじい。
「! ぁ……ど、どう、も」
そして挨拶を受けた篠原さんの娘さんは、俺にやったようにツンと返事をする……
かと思いきや。
顔をそらして返事をするのは、俺と同じなのだが……なんというか、雰囲気が違う。
あんな風にあたたかくなく冷たい雰囲気だったし、なんなら触れたら刺してやるみたいな覇気が見えていた。
なぜかもじもじもしているし。
この違いは、いったいなんだろう。
「……そういえば瀬戸原くんは、○○高校だったわよね?」
「はい、そうですよ」
「あら。じゃあ美愛と同じ高校じゃない」
「えっ、そうなんですか」
ここで、思い出したかのように篠原さんが手を叩いた。
それを聞いて俺は、驚く。今まで、同じくらいの娘がいるとは聞いていたが、同じ高校だとまでは思わなかった。
それに反応するのは、娘さんも本当だ。
「え、そうなんだ……」
「えぇ。瀬戸原くんが一年生だから、あなたの後輩になるのね」
「ふぅん」
同じ高校で、娘さんは俺の先輩にあたるらしい。
学年が同じだとしても、入学してまだ数ヵ月だ。クラスメイト以外とは接する機会は少ない。廊下で見たこともない。
そう思っていたが……なるほど、学年が違うのか。
ならば知らないのも、無理はないな。
「えっと……そっちの……」
「神崎っす」
「……神崎くんも、同じ高校なの?」
「はい! 木葉と同じクラスですよ」
「……ふぅん」
なんだろう、俺に対してよりも興味を抱いているような気がする。
気のせいだろうか?
というか、さっきからチラチラとルアのこと見ているな……珍しい金髪だからだろうか?
もしかして、染めてるなこいつ……とか思われているのかな?
娘さん、これ染めてるわけじゃないんだ。地毛なんだ。だから不良ってわけじゃないんだ、誤解しないでくれ。
「そうだ! ここで会ったのもなにかの縁だし、美愛さん連絡先交換しませんか!」
「!」
こ、こいつ……自分がチラチラ見られていることに、気がついていないのか!?
そうでなくても、初めて会った相手……それも異性の先輩に、連絡先を聞くだと!? しかもいきなり名前呼びだと!?
こいつのメンタルは鋼でできているのかな?
ぎょっとしたのは、当然俺だけではない。
娘さんも、驚いている様子だ。それはそうだろう。
ルアよ、残念ながらこれは断られても、文句は言えない……
「べ、別にいいけど」
「!?」
しかし俺の心配事とは裏腹に、娘さんはまさかの承諾。
少し顔が赤い気がするが、風邪でも引いているんじゃないかと少し心配になる。
承諾されたことに喜ぶルアが、娘さんに詰め寄っていく。
娘さんは少し後ずさりし、目を合わせられないのかきょろきょろとあちこちに動かしながらも、スマホを取り出し応じていた。
……なんだかんだ、あれがルアのいいところだよな。
あの積極さに、引っ越してきたばかりの俺も助けられたのだから。
「あらあら、青春ねぇ」
隣に立つ篠原さんは、二人の姿を見て頬を緩ませていた。
あれが青春……なるほど。せっかく都会の学校に来たんだ、俺ももっと頑張らないと。
「やったー、美愛さんの連絡先ゲット」
「あ、あの……神崎くんって、だ、誰にでも、こうやって連絡先聞いてるの?」
「え? いや、誰にでもじゃないですよ。もっと仲良くなりたいなとか、そう思った人だけです」
「……そう」
ルアにとっては、俺もルアにもっと話したいと思ってもらえたってわけか。嬉しいなぁ。
そんな二人のやり取りを見ていると、扉が開き店内に音が鳴り響く。
お客さんだ。
店内にお客さんが増えたことで、ルアと娘さんは察してくれてレジ前から離れていく。
二人そろって、なにか買っているようだ。
ルアはああ言っていたけど、ルアなら誰とでも仲良くなれそうだよな。
火車さんも仲良くしてるし……久野市さんとも、案外気が合ったりして?
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