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第一章 現代くノ一、ただいま参上です!
第21話 今から木葉っちの家行ってもいい?
しおりを挟む「あーん!
……んん、今日もパンがうまいっ」
「ホント火車さんは、パンが好きだねぇ」
購買に昼メシを買いに行った俺と火車さんは、無事目当てのものをゲットし、教室に戻ってきた。
俺と火車さん、そしてルアは、席を並べて一緒に昼食を取っている。俺は購買で買ってきたおにぎり、火車さんは同じく購買で買ったパン、ルアは弁当だ。
基本的に、この三人でお昼を一緒にするのが、俺たちの中で暗黙の決まりみたいになっていた。はじめは誰から、言い出したんだったか。
「そういう木葉っちは、おにぎりかぁ。パン派のウチとは相容れないかもねー」
「なんでだよ」
「オレはどっちでもいい派~」
などと、三人で他愛のない話をしながら、昼メシの時間を過ごす。
この時間が、俺は好きだ。新しくできた友達と、こうしてなんでもない話をして、時間を過ごしていく。
「あーんっ、んーこのコッペパンおいしい。
でもウチとしては、もうちょっとお腹が食べ物を所望している気がするんだよねぇ。主に卵系の」
「はいはい、仕方ないからこの卵焼きをくれてやろう」
「わーい、ルアっち愛してる!」
「ルアっちー、俺も俺も!」
「お前はその呼び方すんなよ」
がやがやわいわいと、賑やかな空間。朝も晩も、基本的には一人でメシを食う俺にとって、この賑やかさはとても好きだ。
ちなみに今日は無理だったが、普段ならば俺も弁当のおかずを分けたりしている。
そしてメシを食べ終え、時間があれば校内を歩いたり外に出てみたりなんかして……昼休みの時間が終われば、午後の授業に突入する。
食べたばかりだと眠くなるが、睡魔と戦いつつ真面目に授業を受けていく。
そして……
「じゃ、オレはこのあと部活だから」
「おう、じゃあまた明日な」
「ばいばーいルアっちー」
放課後になると、部活に行く生徒、用事のある生徒、帰宅する生徒……それぞれが、教室を出ていったり残ったりする。
ルアは、テニス部に所属しているため、放課後はお別れだ。何度か部活動の姿を見たことがあるが、とても生き生きしていた。それと、あの顔で性格だ、結構人気があるみたいだうらやましい。
俺は帰宅部なので、用事があるときならばともかく……今日は用事もないしこのまま帰ることにする。
「じゃ、木葉っち一緒に帰ろーよ」
「そうだな」
そして、火車さんも同じく帰宅部だ。俺たちは、基本的にはこの二人で帰ることが多い。
火車さんには女子の友達もいるが、みんな部活なので放課後は一人になってしまうらしい。そこで一緒に帰る相手として白羽の矢が立ったのが、俺というわけだ。
ルアがいれば、三人で帰るところだが……結局、帰宅部同士が帰ることになるので、結果的に女子と二人で帰宅する、というリア充みたいなことになっている。
ちなみに、リア充という言葉は一週間前に知った。やたらクラスの男子が使っているので、なにかと思ってルアに聞いたのだ。
「木葉っちってば、いつもこーんなかわいい女の子と帰れて幸せだよねぇ」
「ははは、そうだなー」
俺たちの間の会話は、まあいつもとかわらない。だいたい火車さんが俺をからかうようなことを話し、俺はそれにさらっと言葉を返す。
実際、女の子と二人で帰るなんて、結構恵まれているんじゃないかと思う。とはいっても、火車さんに対してそういう気持ちはなく、あくまで仲の良い友達だ。
火車さんも俺に対しては、仲の良い男友達程度の認識だろう。他の男子と話しているの見たことがあるが、似たような感じだし。
さて、互いにそんな印象を抱いているであろう相手から……
「ねえ、今から木葉っちの家行ってもいい?」
……なんて、言われた。
「え……は?」
「いやぁ、同じクラスになって結構話すし、お昼も一緒に食べるし放課後は一緒に帰る。
これだけの仲になって、まだ木葉っちの家行ったことないなーって」
「いや……その理屈はおかしくないか?」
家に行きたい、なんて冗談だろうか? 火車さんは、突拍子もない冗談を言うことがあるし。
それに、火車さんは知っているはずだ。俺がアパートの部屋に一人暮らしだと。つまり、一人暮らしの男の部屋に足を踏み入れようと?
きっと、からかわれているだけだ。そうに違いない。
「ルアと二人でなら、今度来たらいいよ」
「えー、だってルアっちがいたら、二人きりになれないじゃん?」
「……」
二人きりになれない、と今火車さんは言った。それはつまり、俺の部屋に行きたいと言ったのは、俺と二人きりになりたいから、ということか?
いやいや、これはあれだ、勘違い。別にそういう深い意味はない……はずだ。
そう、深い意味はないはずなんだ。
「ねえ木葉っちってどーてーでしょ」
「!? な、なに言ってんのいきなり!?」
「いやー、だって……ねぇ。
女の子が、一人暮らしの男の子の部屋に行きたいって理由。察せないなんて男としてどうかと思うよー?」
「そ、それとどう…………は、関係ないだろ!」
いきなりの爆弾発言に、俺は顔が熱くなっていくのを感じる。そりゃ、これまで彼女もいなかったんだし、そういう経験もないけども……
やはり火車さんは、俺をからかっているのか? 今だって、楽しそうに笑っているし……
……でも、表情はからかっているもののはずなのに、目は本気であるように見える。
もしかして、本当に……火車さんは、本気で"そういうつもり"で俺の部屋に来たいと言っているのか?
だとしたら、俺は……
『主様ー!』
「!」
その瞬間、頭の中に思い出す底抜けに明るい声、そして笑顔。
そうだ、忘れちゃいけない……部屋には、久野市さんがいるじゃないか。火車さんが部屋に来ても二人きりになれないし、そもそも久野市さんの存在をどう説明するんだ?
そうだ、落ち着け俺。火車さんの真意もわからないし、久野市さんの問題もある。ここで素直にうなずくことはできない。
「あー、今日はちょっと……し、親戚の子が、来ててさ。その子の相手、しないといけないから。部屋はまた今度……な」
「…………ふーん」
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